カジュアルウェア

SHOWCASE
リズムに乗れるオーダーメイドシャツ。

2024.04.03

各界のプロの審美眼にかなった、いま旬アイテムや知られざる名品をお届け。

SHOWCASE2_オーダーメイドシャツ 400_1
ドレスシャツからデニムに合うシャツまで、自分だけの一着が作れる。オーダーシャツ¥16,500〜、クレイジーパターン ストライプオックスフォードシャツ、クレイジーパターン ストライプオーバーシャツ各¥33,000、無地オックスフォードシャツ各¥22,000/すべて大坪シャツ(日本橋三越本店 03-3241-3311)、アスコットタイ大坪氏私物

30代になったころニューヨークでの仕事が始まった。五番街にある百貨店「バーグドルフ・グッドマン」でようやく買い物ができる経済状況となった私は、1階のパーソナルオーダーサロンへ向かった。そこにずらりと並んでいたのは、ターンアップというダブルカフスのように折り返せるカフス。昔、夢中で観ていたジェームズ・ボンドが着ていたシャツを自分でも作れる!と胸が躍ったものだ。

時は流れ、日本橋三越本店にて私がキュレーターを務める「大坪シャツ」が始まった。シャツ生地を数千種類のなかからお選びいただき、カフスや襟、ポケットにバックスタイルなど、着用するシーンや好みに合わせた一着をお作りしている。逆さ富士のように中央を屹立させた襟の後ろのシルエットと、ラウンドした胸ポケットが大坪シャツのアイデンティティーだ。かつて私の祖父や師匠たちは、日本橋三越本店で服をあつらえることが自慢だったのだけれど、いま、30代のお客さまが大坪シャツをあつらえている姿がそこにあり、なんとも感慨深い。

オーダーのシャツとはいえ、オーバーサイズを選んだっていい。前ボタンを6つにしてアスコットタイやTシャツが見えるようにしたり、イタリアのシャツのように一番下のボタンホールを横向きにしたりして、おなかいっぱい食べられるようにしてもいいではないか。自分の好みはだんだんとわかっていくものだから、リズムに乗ったらあとは自由自在に楽しむだけだ。美しい音楽や絵画、おいしいワインも一生かけても味わい尽くせないもの。新たな出合いがたくさんあるから人生は楽しいのだ。

語り手・大坪洋介
Yosuke Otsubo
エヴァンジェリスト。40年以上、アメリカと日本を含むアジア、ヨーロッパにおいて、アパレル領域で幅広く活躍。新しいライフスタイルを紹介する役割を担うための懸け橋になりたいとの思いから活動する。

「アエラスタイルマガジンVOL.56 SPRING/SUMMER 2024」より転載

Photograph: Yuki Saito
Styling: Hidetoshi Nakato (TABLE ROCK.STUDIO)
Text: Tomoko Komiyama

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