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『レジデント 型破りな天才研修医』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #71
2024.05.02
不動の人気ジャンル「医療ドラマ」。世界中で大ブームとなった『ER緊急救命室』や、医療ドラマでは最長のシーズン19まで続いている『グレイズ・アナトミー』、自閉症サヴァン症候群の外科研修医が主人公の『グッド・ドクター』、さまざまな問題を抱える米国初の公立病院で斬新な発想と方法で改革してゆく『ニュー・アムステルダム』など、人気がありロングラン作品も多い。
『レジデント』は、最先端医療を扱うチャステイン・パーク記念病院でシニアレジデントを務めるコンラッドを中心に、患者よりも利益を優先する上層部との対立や、仲間と共に真摯(しんし)に命と向き合ってゆく姿が描かれる。
コンラッドは、父親が裕福でありながらも援助を拒否し、アフガニスタンで従軍し自力で医大を卒業した正義感あふれる努力家だ。多少傲慢なところはあれど、患者の声に耳を傾け、ひとつひとつの病状を把握し、どこが原因かを誰よりも早く見つけることができる。
対する病院のCEOでもある外科医のランドルフは、自ら広告塔となり、メディアにも露出し、カリスマ医師として知名度を上げていた。しかし、実のところ自身の身体に起こる異常を察していながらも手術をし、医療ミスを繰り返しては隠ぺい。そのほかにもチャステインでは、高額な延命治療を行ったり、必要のない手術を行ったりなど、最先端医療を誇るセレブ病院は、不正にまみれていた。
本作では、アメリカの腐敗した医療現場をリアルに描いていることで評価されている。決してドラマだけの話ではなく、過去には年間25万人以上の人が医療ミスにより命を奪われているという調査結果が出ているほどだ。
製薬会社から賄賂を受け取り、必要のない患者にまで投薬したり、薬の過剰投与により死に至る事故が起きたり、医療従事者に対する教育不足、人手不足による看護師の過酷な労働条件など、アメリカの医療現場は深刻な問題を抱えすぎている。それらの社会問題をドラマに取り入れ、コンラッドが真正面から向き合い、受け入れたすべての人たちに対して正義を貫いてゆく。
物語は、コンラッドらレジデントの私生活や、恋愛事情にも展開してゆく。医療ドラマでは、医療の知識と共に、患者や医者達のヒューマンドラマも見どころとして重要だ。チャステインでは、ほぼ全員が職場恋愛をしている。なんら不思議ではない、多忙な医療現場ではきっと起こりうることなのだ。
これは全体に通して言えることだが、腐敗した医療現場がゆえに、涙するような悲しいエピソードもあるが、キャストのキャラクターが正義を貫く者たちが多いため、前向きな気持ちになれるエピソードが多い。よくあるドロドロした恋愛ものではなく、過酷な医療現場のなかで、お互いを尊重し合い、支え合っていく姿に、あたたかい気持ちになれる。
病院がサイバー攻撃を受け危険にさらされる事件や、高齢者を狙った詐欺事件、最先端医療のわななど、決して他人事ではないものばかり。ひと筋縄ではいかないさまざまな問題に、チャステインの医師たちは真っ向から立ち向かってゆく。理想と現実に悩まされながらも、成長してゆく研修医たちの姿に、きっと強さをもらえるはず。
『レジデント 型破りな天才研修医』はディズニープラスにて、シーズン6(完結)まで配信中!
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo