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渋野日向子、新垣比菜、大里桃子が復活
女子ゴルフ“黄金世代”が輝きつづける理由とは。

2024.06.14

渋野日向子、新垣比菜、大里桃子が復活<br>女子ゴルフ“黄金世代”が輝きつづける理由とは。
2024 ヨネックスレディスゴルフトーナメントで優勝を決めた新垣比菜。仲間たちの出迎えに笑顔を見せ、目元をぬぐう。(写真:日刊スポーツ/アフロ)

国内女子ゴルフツアー今季15戦・宮里藍サントリーレディスは大里桃子(伊藤園)の優勝で幕を閉じた。首位に1打差の2位でスタートし、6バーディー、1ボギーの67で回って通算12アンダー。後半の勝負どころでスコアを伸ばす強さで3年ぶり通算3勝目を飾った。昨季はスランプに陥っていたが、前週に6年ぶり2勝目を飾った新垣比菜と同様の復活勝利となった。そして、2人は同じ1998年度生まれ。この代は「黄金世代」と呼ばれているが、今季は昨季の4人を上回る5人が勝利を手にしている。海の向こうでは渋野日向子もカムバック。下の世代も台頭するなか、黄金世代が輝きつづける理由を考察した。

最終18番パー4。大里は残り131ヤードの第2打を9番アイアンで放った。ボールはピン下1.5メートルにつき、有終のバーディー。パーで終えても優勝だったが、本人は迷わずにグリーン左端に切られたピンを狙った。左サイドには池が広がっていたが、大里の持ち球は左から右に曲がるフェード。池に入らないようにコントロールできる“確信”があったからこそのピン狙いだった。そして、記者会見では、「通算3勝」の意味合いを語った。

「最初の優勝は勢いだけという感じで、2 勝目はパターの悩みを克服できた喜びがありました。今回は 昨年 1 年間悩んで、『ゴルフを辞めようか』と思うくらいのなか、どうにか気持ちを保って(球筋を)ドローからフェードに変えたことが大きかったです。オフに自分の体の調子とも向き合ってスイングをもう一度見直したことも実を結びました。苦しんだけれど、諦めなくて良 かったと思います」

言葉どおり、大里は2018年7月の最終プロテストに合格し、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)入会23日目にCATレディースで初優勝を飾った(1988年ツアー制度施行後の最短記録)。そして、3年後の21年、ほけんの窓口レディースで2勝目。今大会で3勝目だが、昨季はメルセデス・ランキング82位で初のシード落ちを経験していた。

「どんどん若い子が来るので、去年はそれに追い出された感じでした。ただ、自分に負けてしまったところがありました、今は『自分も一緒に頑張ろう』という感じですが、先週の(新垣)比菜ちゃんの優勝を見て、『こういうのっていいな』と感じた矢先だったので、自分もそういう立場になれてすごくうれしいです。タイミング良く渋野も全米で2位に なって、そういう姿を見て刺激もらっているなといつも思 います」

前週には同期の新垣がヨネックスレディスで6年ぶりの通算2勝目を飾った。やはり、ショットの不調を乗り越えての勝利だった。最終日の18番グリーン脇には、同期の復活優勝を見届けるべく、大里と吉本ひかるの姿があった。雨が降りしきるなか、新垣がウイニングパットを決めると、2人が駆け寄ってハグで祝福。新垣は2人への感謝を込め、同期の存在について語った。

「大里桃子ちゃんは同じ九州で、小学生や中学生のときから知っていますし、吉本ひかるちゃんは高校生のときから仲良くなって、今でもご飯に行ったりとかしています。同期にはたくさん強い子がいて、たくさん優勝もしているので、『自分も頑張ろう』という気持にさせてもらっています」

そして、宮里藍サントリーレディスでは大里が優勝し、吉本が3位。そろって、全英女子オープン出場権を獲得し、初の海外メジャー挑戦の機会を得た。

2人を奮起させた新垣は、今季の戦いでツアー初優勝を果たした同期の臼井麗香、天本ハルカから大いに刺激を受けていた。臼井は主催者推薦での出場機会を生かして勝利。プロテスト5回目受験で合格の天本も悲願を達成すると、翌週のワールドレディスサロンパス杯の最中、新垣は「諦めないで頑張っていれば報われる。そんな思いで(臼井と天本の優勝を)見ていました。なので、『私も』という思いです」と話していた。

とにかく層の厚い黄金世代。彼女たちの大半は国内外で活躍していた宮里 藍に憧れ、プロを目指した。そして、最強の勝 みなみが高1で出場した14年の国内ツアー・KKT杯バンテリンレディスで優勝。15歳293日で当時のツアー史上最年少優勝の記録を樹立した。2年後の16年には、同期で高3の畑岡奈紗が日本女子オープンを制した。17歳263日で国内メジャー大会最年少優勝の記録となり、「この世代には勝 みなみ以外にもすごい選手がいた」と注目された。

負けじ魂に火がついた同期たちは、高校を卒業した17年から徐々にプロ転向。すぐに試合で上位を席巻するようになり、17年2勝、18年4勝、19年12勝、20-21年(コロナ対策の試合減で同一シーズン)13勝、22年6勝、23年4勝と勝利を重ね、今季は既に5人で5勝している。通算では計15人で48勝(勝、畑岡のアマ時代各1勝も含む)。優勝者の数は既に歴代最多で、「黄金世代」の名にふさわしい結果を残している。

19年、全英女子オープンを制した渋野もこの世代のひとりだ。日本勢では樋口久子の全米女子プロ以来42年ぶり2人目の海外メジャー優勝を果たし、帰国会見で黄金世代の強さを問われ、こう返している。

「(同期は)みんな怖いもの知らずで、負けず嫌い。同い年が活躍するのは刺激になりますし、『頑張らないと』と思います」

あれから5年。米女子ツアーに主戦場を移している渋野は昨季からスランプに陥りながら、シャフト調整で活路を見いだし、全米女子オープン2位、翌週のショップライトLPGAクラシック21位とカムバックを果たした。また、今季のパナソニックオープンレディースで黄金世代15人目の優勝者となった天本は「同級生は今でも仲がいいのですが、私はこれからどんどん追いついて、追い越せるような選手になりたいなと思っています」と実感を込めた。

昨今、「女子プロのピークは20代前半」との見方が強まっていたが、25歳、26歳になった黄金世代には、勝ち続ける小祝さくらがいて、新垣、大里、河本 結が蘇り、遅咲きの天本もいる。2代上のプロは「彼女たちはジュニア時代から別格で、私たちは『予選通過のスコアが上がるから困るね』と言っていました。その感覚は今も変わらないです」と話し、ツアー競技を引退したベテランプロは「トレーニングも含めて意識の高さを感じる世代。息は長くなると思います」との見方を示した。積み上げてきた“黄金の輝き”。彼女たちは、この先も国内外で明るさを増すことだろう。

>>笹生優花が優勝、渋野日向子2位……、全米女子OPで示された日本勢レベル向上の理由。

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