週末の過ごし方
『ブリジャートン家 』シーズン3
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #75
2024.06.27
19世紀初頭のロンドンを舞台に、名門貴族ブリジャートン家の8人の兄弟姉妹が、それぞれの愛と幸せを追い求めてゆく姿を描いた『ブリジャートン家』。2024年現在、世界Netflix総合視聴者ランキングでは4位と、英語圏のみならず、世界中にファンを持つ超人気ドラマ。2年の時を経て、待望のシーズン3の前半パートが5月16日に、後半パートが6月13日に配信された。
シーズン1では、シャーロット王妃から“ダイヤモンド”と称されるほど洗練された美しさを持つ長女ダフネの恋物語。シーズン2では、父を早くに亡くしたため、ブリジャートン子爵を継ぎ、一家の大黒柱として懸命に家族を支えてきた長男アンソニーの恋物語。シーズン3では、純粋でまじめな印象だったが、ヨーロッパ中を旅して回り、すっかり雰囲気が変わって戻ってきた三男コリンの恋の物語を描く。
夏も終わり、新たな社交シーズンがやってきた。語り手は変わらず、スキャンダラスな社交界のゴシップをつづった『ホイッスル・タウン』誌の執筆者レディ・ホイッスルダウン。
ブリジャートン家からは、こよなく音楽を愛する三女のフランチェスカが社交界デビュー。家族は有望なお相手が見つかることを願うが、肝心のフランチェスカは上の空、それほど興味はなさそうだ。
フランチェスカのデビュタントに合わせて帰国した三男コリンは、夏の間ヨーロッパを旅して、いったい何を見てきたのか、マジメなイメージから一変、やたらと女性たちを褒めたたえ、粋なジョークを言えるほどあか抜けていた。
かつてコリンに対して恋心を抱いていたペネロペは、すっかり変わってしまったコリンに感化され、諦めていた結婚相手を今期こそ見つけようと決意する。
ペネロペとコリンは固い友情で結ばれていたが、あることがきっかけで、その絆は壊れてしまった。友情を取り戻すべくコリンは、ヨーロッパで学んできた自分の魅力をアピールする方法をレクチャーし、ペネロペの夫探しに協力すると言いだした。3年も結婚市場にいる自分を変えたいと強く願うペネロペは、その申し出を受け入れ、魅力的な人になるべくレッスンに挑む。
長年議論が絶えない“友情が恋に変わることはあるのか?”問題。ペネロペは密かに、コリンに恋心を抱いていた。しかし、「自分から行動したら、この友情が壊れてしまうかもしれない」「私なんかが好きになってもらえるわけがない」と、ペネロペはずっと自分を恥じ、気持ちを抑えていたのだ。
貴族の世界では、社交界デビューしたその期に結婚相手を見つけることが一般的で、3期目となるペネロペを世間ではオールドミス扱い(なんて厳しい世界だ)。このままではダメだ!とコリン以外の人を探してみるものの、なかなか心は動かない。いつも陰で皆を支えてきた優しいペネロペを知っているからこそ、長年恋心を抱いていたコリンと結ばれてほしい……。視聴者はそう願ってはいるが、果たしてこの恋の行方はいかに!?
ブリジャートン家シリーズは、実際のイギリスの摂政時代にはありえなかった有色人種を起用し、華やかなドレスやヘアセットを現代風にアレンジしたりと、唯一無二な世界観が人気の理由。今シーズンでは、ビリー・アイリッシュの『Happier Than Ever』など、現代のポップソングをクラシックアレンジし、舞踏会で使用したりと演出部分も見どころ満載。特に社交界でのコンテンポラリーバレエが披露されるシーンは、衣装も、ダンスも、息をのむほど美しいので必見だ。
控えめだったペネロペが、愛を見つけるため、自分の殻を破り、前向きに輝こうとする姿は、観ているこちら側にも勇気をくれる。新生活が始まった人や、環境が変わった人、心機一転したい、そんな人たちの背中を押してくれる、まさに春にピッタリなドラマ『ブリジャートン家』をぜひ。
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo