特別インタビュー
一枚のシャツが掻き立てた、「服づくり」へと熱き思い。
2024.08.26
渋谷の喧騒をすこし離れた静かな場所にマーガレット・ハウエルの日本旗艦店〈マーガレット・ハウエル神南〉がある。併設するオープンカフェのテラス席にはマーガレット・ハウエルさんがティカップ片手に手元のノートを見つめる姿があった。毎年、春夏と秋冬の新作コレクションの最終アプルーバルに合わせて来日するという彼女は、リサーチも兼ねて神南店と代官山店に立ち寄ることにしている。そして居心地のいいこのカフェで一息つくのがお気に入りなのだという。
トラディショナルな英国スタイルをコンテンポラリーな視点で構築するマーガレット・ハウエルの服づくりは1970年の創業時から今も変わらない。2002年以降は食器や家具などライフスタイル全般のプロダクトにもコレクションの幅を広げている。学生の頃から衣服はもちろんアクセサリーをつくることに夢中だったというハウエルさん。創作の原点は何だったのだろう?
「英国のゴールドスミス・カレッジというアートスクールでデザインを学んだ後、ある日、ジャンブルセールで仕立ての良いストライプシャツに出合いました。ひと目見て、そのシルエットの美しさと細部の縫製技術に感銘し、『私もこういう服をつくりたい』と強く思うようになったのです」
一枚のシャツが若い学生だった彼女の創作意欲を掻き立て、マーガレット・ハウエルというブランドを立ち上げる原動力となった。ハウエルさんは続ける。
「例えば英国を代表するジョン スメドレーやフォックスブラザーズのような、ひとつのクオリティに特化し、ものづくりと真摯に向き合うファクトリーブランドに私は尊敬の念を抱きます。私たちはそういうブランドと仕事をすることで、これまでも魅力的なコレクションを生み出してきました。近年、コラボレートしているミズノもスポーツという分野において日本を代表するブランドです。彼らが長年培ってきた高い技術力とクオリティをマーガレット・ハウエルのデザインに落とし込むことで、今シーズンもすばらしいラインナップが実現しています」
2017年秋冬コレクションからスタートしたミズノとのものづくりは、往年のリピーターだけでなく、新たに若年層からも反響が多いという。今春からラインアップを広げ、テクニカルウエアコレクションとして発売がはじまったそうだ。8月からは秋のコレクションがローンチ、10月には冬のコレクションが登場予定で、こちらも今後の展開が楽しみだ。
ところで日本滞在中のハウエルさんは、たびたび東京の郊外にある小さな町を訪れるという。去年は青梅の町で偶然入った古い金物屋さんに昔のストックを見せてもらったり、先日は池上の畳屋さんにその作業風景を見せてもらったりと楽しい思い出になったとか。
「日本にしかないリアルな生活道具からインスパイアされることがあります。そうした小さな発見や喜びも私の中に少しずつたまると、新たなインスピレーションやクリエーションとなってわいてくるのです」
つねにノートとペンを持ち歩き、ひらめいたデザインをドローイングしては書き留めているという。学生の頃に感じた服づくりへの熱き思いは、彼女の中で今も変わらず息づいている。
マーガレット・ハウエル神南
東京都渋谷区神南1-13−8
03-5459-3723
営業時間:11:00~20:00 不定休
マーガレット・ハウエル神南カフェ
03-5459-3721
営業時間:11:00~19:00 (LO. 18:00) 不定休
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text:Satoshi Miyashita