特別インタビュー

株式会社dr365 代表取締役社長
三上大進 インタビュー[前編]
[ニッポンの社長、イマを斬る。]

2025.01.06

スキンケア研究家、三上大進が自己資金で立ち上げた化粧品ブランド『dr365』が破竹の勢いだ。2024年上半期だけでもベストコスメ25冠を達成、グローバル展開を得意とする企業とのM&Aと来て何やら身辺が騒がしくなってきた。その発端と今後の戦略を尋ねてみた。

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願望があればかなったも同然

「『やってみなはれ』って言葉が大好きなんです。迷うならやってみればいい、仮にダメだったとしても大至急戻ればいいだけだって思うんですよね」

 三上大進の名をどの入り口で知ったか。LGBTQの当事者であること、生まれつき左手指が2本であること(『東京2020パラリンピック』のリポーターも務めていた)、15万人近いフォロワーを持つ美容インフルエンサーであること。けれど、オリジナル化粧品を人気ブランドに育てたのは属性よりも「やってみなはれ」という意思の賜物だったはずだ。

三上がプロデュースする『dr365(ドクター サンロクゴ)』は毛穴悩みと向き合うスキンケアブランドとして2021年にスタートした。ネット通販のみ、広告費は一切かけない。その一方アルコールや合成着色料などを使用しない「8つのフリー処方」を徹底した。目下、美容雑誌のベストコスメ賞の常連で美容大国タイでも完売が続く。最新ニュースはビューティー事業で伸び盛りのCi FLAVORS(シーフレーバーズ)の傘下に入ったこと。冒頭の「やってみなはれ」発言の後には続きがあった。

「決意がすべてだと思っているんです。願望って持っている時点でほぼかなっちゃってるんですね。というのも、やりたいことが明確な人って応援してもらえる。アドバイスしてくれる人や手伝ってくれる人が必ず現れるんです」

まさに『dr365』の物語だ。

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願望があればかなったも同然

美容に目覚めたのは中学生のころ。左手に強烈なコンプレックスがあった。学年一カッコいい男の子に恋をしたが、美人のライバルは引きも切らず。おまけにニキビで肌はクレーターだらけ。お小遣いを握りしめ化粧水を買ったのが事はじめだった。 

「鏡を見られないってことは自分自身と対峙できないということ。自分に向き合えない人は誰かと向き合うことも難しい。そんな頃、手をかけることによって左手の手術痕もニキビも目立たなくなっていった。自分らしさを、自分らしいままに高めていけるものが美容なんだとこのとき感じました」

大学卒業後は日本ロレアル、ロクシタンジャポンで製品のマーケティングを担当した2018年、パラリンピックのボランティアに応募したところ、結果としてNHKの専属リポーターに大抜擢。インスタグラムでのライブ配信を始めたのもこの前後で、話のキレのいい「大ちゃん」はすぐに人気インフルエンサーに。これがブランド誕生の起爆剤となった。「エンドユーザーのお声が目の前にあるんです。『こういうの、どうかな?』と言うとすぐに反応が返ってくる。化粧品会社で培った経験とスキンケアの知識は自分にとっての糧ですがオフィスからお客さままでの距離は遠かった。当時はコロナ禍でマスクかぶれが深刻な時期。ライブで肌悩みの相談にのっていた頃、『大ちゃんが作るなら絶対買う!』と後押しする声が上がって」

 会社設立は2020年、1Kの自宅でスタートした。社名もブランド名もdr365とした。外部からの資金調達は目処がなく、副業としてマーケティングのコンサル業も始めた。会社経営とリポーターとコンサル、そしてインスタ運営。睡眠時間は極限まで削られた。お肌の状態は死守したが0から1を作る起業は想像以上の大変さだった。「泥臭いなんてものじゃないんです。化粧品のローンチで時間がかかるのは『容器』と『処方の開発』なんですがガラス容器ひとつとっても何百種類、外箱の紙なら何千種類とあります。世界中から取り寄せて家の中はサンプルだらけ。ブランドのテーマに沿って環境に配慮した資材を選んだもののイメージしていた色が出ず、印刷所まで走るなんてことも。さらに言えば、ラベルがズレたり(笑)。何千枚と手作業で貼っていたんですけど、私も工場のラインに立つこともありました」

 処方のほうはもっと大変だった。試作品を作ってもらおうにも50社にメールしてもほとんどがスルー、電話をかければ1時間保留にされたことも。個人の壁を痛感した。こだわりの処方もハードルを上げていた。敏感肌でも使えるようアルコールフリー、合成着色料フリー、界面活性剤フリー、動物由来成分フリーなど8つのフリーは譲れなかったのだ。「コラーゲンを成分に入れるにしてもほとんどが動物由来なんですね。8つのフリーは担保したい。でも、この成分は入れたい。商品開発の際は今も苦労するところですね」

 へこむ日はインスタライブで力をもらい、あきらめず細い糸を手繰り寄せその1年後、シリーズ第1弾の美容液が完成した。

インタビュー[後編]につづく>>

プロフィル
三上大進(みかみ・だいしん)
1990年、東京都出身。立教大学卒業。日本ロレアル、ロクシタンジャポンで化粧品のマーケティングに従事した後、NHKに入局し「東京2020パラリンピックレポーター」に。美容リポーター、インフルエンサーとしての活動も始める。2021年、オリジナルブランド「dr365」を立ち上げた。生まれつき左手の指が2本という左上肢機能障害がある。LGBTQの当事者でもある。著書に『ひだりポケットの三日月』(講談社)。フィンランド留学の経験があり英会話が堪能。

「アエラスタイルマガジンVOL.57 AUTUMN / WINTER 2024」より転載

Photograph: Kentaro Kase
Text: Mariko Terashima

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