特別インタビュー

“ぼっち”だから見えたもの。
中山ひなのが語る、青春の痛みと優しさ。

2025.04.17

“ぼっち”だから見えたもの。<br>中山ひなのが語る、青春の痛みと優しさ。

高校生活一度きりの修学旅行。
それは最高の思い出になるはずだった――班決めで余り者にならなければ。

“青春できていない青春”を描いた映画『6人ぼっち』が、52日より全国公開される。主演・野村康太をはじめとする若手注目キャストが集結。気の弱い女子生徒・山田ちえを演じた中山ひなのは、今回の役を通じて何を感じ、どんな変化を経験したのか。撮影の舞台裏と共に話を聞いた。

キラキラしていない、青春のリアル

映画『6人ぼっち』が描くのは、どこにでもいる「余り者」「ひとりぼっち」たちの青春。修学旅行の班決めで誰とも組めなかった6人の高校生たちが、即席の班として広島旅行を共にすることになる。

主演の野村康太が演じるのは、クラスに友達がいない“ぼっち”の加山 糸。彼が班長を任され、メンバーをなんとかまとめようと奮闘する。共演には、実力派の吉田晴登、フォロワー210万人超のインフルエンサー・三原羽衣、若手注目株の松尾 潤、情報番組でも活躍する鈴木美羽といった面々がそろう。

そのなかで、おとなしく自分の意思を出せない山田ちえを演じたのが、中山ひなの。配信ドラマ『龍が如く ~Beyond the Game~』でも注目された新進気鋭の俳優だ。

「学生ものの作品って、キラキラした青春を描くものが多い印象だったんです。だから、“ぼっち”という視点で物語が進むというストーリーが新鮮で。『6人ぼっち』は、面白い切り口だなと感じました。6人それぞれの個性が際立っていたのも魅力です」

役柄にどう命を吹き込んだか

中山ひなの02

「ちえちゃんは、一歩引いて周りを見てしまうような子。私自身も、遠慮しがちなところがあるので、そこは共感した部分です」と、にこにこと話す中山さんの印象は、明るく人懐こい。

そのため役作りでは、“おとなしい子が声を出す”とはどういうことかという感覚から探りはじめたという。

「語尾の落とし方や声のトーンなど、細かい部分を丁寧に積み重ねていきました。リアリティのある人物にしたくて。感情の出し方には特にこだわりました」

学生時代には、心温まる小説をよく読み、休み時間には友達とお菓子交換を楽しんでいたという中山さん。ちえとは対照的な、にぎやかな青春も経験してきた。

走る姿は青春そのもの

6人ぼっち』では、同じ班となった“ぼっち”たちが、修学旅行先の広島で自由行動を共にする。自称TikToker、ガリ勉、空気が読めない自慢屋、気弱な女子、そして不登校の生徒――まさにバラバラな6人による、ぎこちない旅が始まる。最初こそ「友達でもないし、別行動にしよう」という声が上がるほどの関係だったが、少しずつ仲間意識が芽生えていく。

同年代のキャストが集まった撮影現場は、まるで本物の学生生活のようだったと言う。

「恋バナもしてました(笑)。年齢が近くて話も合うので、すぐに打ち解けました」

なかでも中山さんが印象的だと語るのが、6人の関係が大きく変化する終盤のシーン。

「ある場面で、みんなが一歩踏み出す瞬間があるんです。そのあと6人で走るシーンは、最初はバラバラだったのに、今は同じ方向を向いていて。“これが青春だな”って思わせてくれるんです」

自分の居場所はきっと見つけられる。そんな希望が本作には込められている。

ひとり、でも楽しい。演技に夢中になれた理由

中山ひなの03

中山さんは、歌やダンスが得意な生徒が多い芸能コースに在籍しながら、「演技一本」で進んできた。

「演技をしている仲間が少なくて、周りと比べて不安になることもありました。でも、ただ楽しかったんです。それが続けてこられた理由です」

今回のような“暗い役”は初挑戦。上京後に本格的に映像の仕事が増え、これまでにないアプローチを求められた。

「似たキャラクターを観察したり、脚本を読んで感じたことを組み合わせたり。いろんな方法を試しました。自分の引き出しが広がったと思います」

現場は笑顔で。ポジティブな空気は伝染するから

中山ひなの04
ワンピース¥49.500/muller of yoshiokubo(03-5784-1238)、靴 スタイリスト私物

明るい現場づくりも、彼女のモチベーションのひとつだ。

「現場ではなるべく明るくいるようにしています。不機嫌な人がいると、それってすごく伝染するんですよね。だから、ちゃんとあいさつして、笑顔でいる。小さなことだけど大切にしています」

失敗して落ち込むこともあるが、反省したら切り替える。それが次の仕事に向かう中山さんのルールだ。そして、最近のリフレッシュ法は「編み物」。帽子やシュシュ、毛糸の花束まで作ってしまう。

「無心になれるのがいいんです。空き時間に共演者に教えたり、プレゼントしたり。手を動かしてる時間がすごく好きです」

6人ぼっち』にちなんで、ひとり旅で行きたい場所は?と尋ねると、「オーストラリア」と即答。中学生のときにホームステイしたホストマザーに「また会いたい」と目を細めた。

最後に、AERA STYLE MAGAZINEの読者であるビジネスパーソンに向けてメッセージをお願いすると、こんな言葉が返ってきた。

6人それぞれが個性豊かで、きっと誰か共感できるキャラクターがいると思います。現役の学生さんだけじゃなく、大人の方にも届くものがあるはず。見終わったあと、“なんか良かったな”って思ってもらえたらうれしいです」

中山ひなのの繊細な表現と、6人が紡ぐ不器用な青春を、ぜひ劇場で。

『6人ぼっち』
5月2日(金)新宿ピカデリーほか全国順次公開
監督/ 宗綱 弟
企画・脚本 政池洋佑
出演 野村康太、吉田晴登、三原羽衣、松尾 潤、鈴木美羽、中山ひなの
小西詠⽃、賀屋壮也(かが屋)
公式サイトhttps://6ninbocchi.com/
配給ギグリーボックス
©2025『6人ぼっち』製作委員会

プロフィール
中山ひなの
2004
1029日生まれ、佐賀県出身。
2018
年、舞台『迷子のふたり』で主演を務め女優デビュー。佐賀・福岡を拠点に活動後、高校卒業を機に上京。2024年にはAmazon Original『龍が如く ~Beyond the Game~』や、TBS『さっちゃん、僕は。』でヒロインを演じるなど注目作が続く、期待の若手女優。

Photograph: Satoru Tada(Rooster)
Styling: Maki Iwabuchi
Hair & Make-up: Eriko Yamaguchi
Text: Tomoko Komiyama

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