特別インタビュー
マセラティのレース部門、初の女性トップが語る。
「美女」と「野獣」がマセラティ高性能車の魅力
2025.06.04

その日、彼女は、勝利の歓喜に沸くマセラティ陣営の中にいた。マリア・コンティさん。マセラティのモータースポーツ部門「マセラティ コルセ」初の女性責任者だ。
電気自動車による世界最高峰のレース「フォーミュラE」、第8戦「東京E-Prix」決勝。マセラティは見事、トップでチェッカーを受けた。昨年に続き、東京での2連覇を達成した瞬間だ。
リスペクトと感謝の念を大切にする
マセラティ コルセを率いるコンティさん。モータースポーツ部門のトップという肩書から想像するイメージと異なり、チームの快挙について語った彼女のコメントは、ファンやスタッフ、そしてドライバーへのリスペクトに満ちた感謝の言葉が続いた。
「東京の中心で、温かいファンの皆さまに囲まれて、忘れられない感動を体験しました」
「チームの努力、完璧な戦略、そしてドライバーの決意が、この勝利をもたらしてくれました」
市販モデルは、まるで美女と野獣の融合

マセラティの市販モデルは、「グラントゥーリズモ」「グランカブリオ」、そして「グレカーレ」などと、高性能車がそろう。コンティさんは魅力を、美女と野獣と表現した。
「ラグジュアリーブランドはほかにもありますが、エレガンスとパフォーマンスが巧みに融合されるのは、マセラティだけです。その美学がマセラティの魅力なのです」
110年という歴史を誇り、ラグジュアリーブランドとして、マセラティは多くの人に喜びを提供してきた。イタリアの美意識が貫かれた甘美なまでのデザイン、そして、優れた走りのパフォーマンス。クルマに求めたい要望を1台でかなえてくれる。エレガンスとスピードの融合。確かに“美女”と“野獣”だ。

マセラティでは、助手席をはじめパッセンジャーに対するホスピタリティや快適性も大切にする。
「心地よさは重要な項目です。グラントゥーリズモは、車名に“旅”という意味合いが込められていますが、車内から見る景色をとても大切に設計されています。窓がワイドなので、外を流れるイタリアの美しい景色を楽しめ、日本では四季の素敵な光景を堪能できることでしょう」
ディテールにも宿るブランドのデザイン哲学
マセラティの各モデルの室内に身を投じると、熟練のクラフトマンによるレザーの仕立てのよさや、インテリアのクオリティの高さに目を奪われる。
「レザーのクオリティを分析する工房では、ファッションのアトリエのようにさまざまなレザーがそろえられ、多様な環境でのテストを行っています。ステッチひとつとってみても、どのように設置したらレザーの滑らかさや柔らかさを引き出せるかを追求しているのです」

「例えば、グラントゥーリズモのシートに施されたステッチの模様は、座り心地を追求しているのはもちろんのこと、デザインも大切にしていて、ローマのカンピドリオ広場の幾何学模様がモチーフになっています」
カンピドリオ広場は、主要な街道が集まるローマの中心地。「旅」に最適な高性能車を多く生み出してきたマセラティが、この場所にデザインモチーフを求めるのは、とても説得力があり、ブランドの奥深さを感じる部分だ。
マセラティでは、一緒に働くスタッフ、そしてユーザーに対して、「家族の一員」や「ファミリー」といった言葉を用いることが多い。コンティさんは、「マセラティは、お客さまに対して時間や努力をとても費やしています。パーソナライゼーションのレベルの高さにも注目してください」と話してくれた。顧客をまるで家族のように、同じ目線で接するのは、マセラティのすばらしい文化と言える。
マセラティの一員であることが誇り
マセラティは、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みも行う。リサイクル素材を市販EVモデルに使用。電動マシンで競うフォーミュラEでは、東京で連覇し、クルマの未来の可能性や楽しさを私たちに示してくれた。コンティさんはこうイメージしている。
「温暖化などさまざまな環境問題がありますが、これからもマセラティはサステナビリティを視野に入れながら、優れたパフォーマンスカーを生み出していくでしょう。上質なインテリアもキープし、ラグジュアリーブランドとして、高いクオリティと品格でそれらを進めていくに違いありません」
インタビューの最後に、「こういったブランドで仕事ができることを誇りに思っています」と柔らかな笑顔を浮かべたコンティさん。彼女の言葉から、このブランドに息づく価値をもっと知りたいと思う取材となった。
Maria Conti(マリア・コンティ)
マセラティのモータースポーツ部門を率いる初の女性責任者。国際的な舞台における自動車およびライフスタイル部門のコミュニケーション部門において20年以上の経験を持ち、2024年10月、マセラティ コルセの責任者に就任。
問/マセラティ ジャパン 0120-965-120(9:00~18:30/年末年始を除き無休)
https://www.maserati.com/jp/
Text: Haruhiko Ito(Office Cars)
Photograph: Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)