お酒

グレンモーレンジィとアードベッグ、
それぞれのブランディングと真価。

2025.06.19

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ザ・グレンモーレンジィ・カンパニー CEOのキャスパー・マクレー氏

世界的なウイスキーブームの中、本格的に嗜むマニアばかりでなく、幅広い層で愛好家が増えている。とくに味へのこだわりから人気が高まるのがシングルモルトのスコッチウイスキーだ。その代表格であるグレンモーレンジィとアードベッグの2つのブランドを率いるザ・グレンモーレンジィ・カンパニー CEOのキャスパー・マクレー氏は、同じシングルモルトのスコッチウイスキーでも両者には大きな違いがあると話す。

「グレンモーレンジィは、ハイランド産でももっとも上質でエレガントな甘みがあり、滑らかさは誰もが好きになるでしょう。アードベッグはその対極で、アイラ島産の強いスモーキーな味わいは万人向けではありませんが、一度虜になるとこれしかないというほど。でも両者ともにそれぞれの生産地のシングルモルトでもっとも多くの賞を受賞している点で共通しています」

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グレンモーレンジィ 10年

飲み方も、前者が仲間とリラックスして楽しむのに対し、後者は同じ嗜好のコミュニティで味わうといった傾向の違いがあるという。こうしたブランドによって多彩な楽しみ方ができるのもウイスキーの魅力なのだろう。

「とくにシングルモルトのスコッチウイスキーはもっともフレーバーが多く、多種多様なので探索するほど新しい発見があり、色々な楽しみ方ができるのです」とマクレー氏。

それぞれの愛好家に向けたアピールも異なり、グレンモーレンジィでは俳優ハリソン・フォードをブランドアイコンに起用し、アードベッグでは体験型イベントを開催する。いずれもラグジュアリーマーケティングのプロモーション手法だが、そこでは話題性や集客以上に、ブランドの世界観や文化を伝えることを重視する。

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2025年5月に東京で行われたアードベッグ・デーの一幕。

「たとえばハリソン・フォードを起用した理由は、グレンモーレンジィの故郷ハイランドの雰囲気とともに、そこで培われるクラフトマンシップや芳醇な味わいを訴えることができるからです。その上で、本人はこれまであまりコマーシャルに出ることはなく、仕事に対する信念があること。会った時、飲む時は何を選ぶか訊ねたら、シングルモルトと答えたことも信頼が置けると感じました。そしてもうひとつ気に入ったのは、彼にはユーモアのセンスがあることです。私たちは真剣にウイスキーを作っていますが、それをただ真面目に伝えるのではなく、ちょっと茶化すこともできる。人物として最適だと判断しました」

こうしたマクレー氏のスコッチウイスキーへの情熱は、父の時代から続くグレンモーレンジィのオーナー家との家族ぐるみのつきあいから始まる。現職に就いたのも天職といえるだろう。そんな自身のシングルモルトの楽しみ方について訊ねた。

「仕事から疲れて帰宅し、ようやくひと心地つき、子供たちはもうベッドに入って、私は大好きな妻と大切な時間を過ごす。そんな貴重でリラックスした時間を楽しむのはグレンモーレンジィ18年です。それに対してアードベックは、冬に犬を連れて散歩し、雨風や吹雪ですごく寒い中、家に帰ってきて暖炉の火で温まりながら、スモーキーで芳醇なリッチなアードベッグを味わうという感じです」

なんともうらやましい、というと「それがスコットランドの日常ですから」と微笑む。

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アードベッグ 10年

現在日本は、グレンモーレンジィのシェアは世界5位に入り、アードベッグは2024年度の売上において日本がナンバー1を誇るという。マクレー氏は、深い造詣を持つ愛好家と、優れたバーテンダーや流通のスペシャリストが支え、さらに職人の技への敬意や美食の文化を持つ日本で支持されることはとても光栄であり、喜びとともに感謝したいと語る。そして言葉を続ける。

「人生の中で1番貴重なものは、時間と家族や友人ではないでしょうか。ウイスキーを楽しみ、大切な時間をともに分かち合い、お互いに共有して過ごすことで、時間はより特別なものになります。量は少なくとも、より良いものを楽しむ。私たちのウイスキーはそうした最大限の価値を見出せると思います」

問/MHD モエ ヘネシー ディアジオ https://www.mhdkk.com

Text:Mitsuru Shibata

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