週末の過ごし方
もしもシカゴ出張が入ったら? 最新シカゴ街歩き。【後編】
2025.09.04
海外出張、それはビジネスパーソンの醍醐味(だいごみ)。空港独特の匂いに始まり、車窓からの異国の街並み、ミーティング前の緊張感……どれもが非日常的で、そして仕事終わりに待ち受ける一杯は最高にエキサイティングだ。こちらの「もしも○○出張が入ったら?」では、元・地球の歩き方のトラベルエディターが海外出張の隙間時間に役立つ遊び方を紹介。vol.4の舞台はアメリカのシカゴだ。
シカゴの夜はジャズバーで生演奏に酔いしれて。
前編では屋外での楽しみ方を紹介してきたが、後編では季節を問わず楽しめる屋内のおすすめスポットを紹介していこう。
シカゴではぜひジャズバーを訪れてほしいが、その前に簡単にシカゴとジャズの歴史について触れておこう。そもそもジャズ発祥の地はシカゴではなく、ニューオーリンズ(ルイジアナ州)だが、1910年頃から起きた「グレート・マイグレーション(アフリカ系アメリカ人の大移動)」で、多くの黒人が人種差別を逃れるため南部から北部へと移り住んだ。そのなかにニューオーリンズ出身のジャズミュージシャンも多く含まれており、南部発祥であるジャズが北部に根付いたと言われている。
またグレード・マイグレーションのさなか、1920年に禁酒法が制定されたことがジャズの発展にも大きく影響した。シカゴでも酒場は非合法化し、それでも酒を求める人々のために、多くのスピークイージーバーがギャングの支配下のもとで誕生した。そんなバーでお酒と一緒に提供されたのが、ジャズの生演奏。南部からやって来たミュージシャンは、ギャングをパトロンにしてシカゴで演奏の機会を得た。20世紀前半はシカゴが産業都市として急成長を遂げたタイミングでもあり、多くの若者が仕事終わりに踊れるジャズを求めていたという時代背景もあった。こうしてジャズは、北部のシカゴで成長・進化し、文化として根付いていった。
さて、そんなシカゴで観光客が行きやすい有名ジャズバーといえば、リバーノース地区にあるAndy's Jazz ClubやWinter's Jazz Club、アップタウン地区のGreen Mill、そしてサウスループ地区にあるJazz Showcaseなどが有名だ。どこに足を運んでも雰囲気は楽しめるので、滞在しているエリアから行きやすいところや、その日のスケジュールで興味深いアーティストが出演しているところを選ぶとよいだろう。
なお、シカゴでは世界最大級のジャズフェスティバル「シカゴ・ジャズ・フェスティバル」が毎年労働者の日(8月下旬)の前の週末に開催される。メイン会場はミレニアム・パークのジェイ・プリツカー・パビリオンで、ほかにもサブステージがいくつかあるが入場はすべて無料。運がよくタイミングが合えば(むしろ出張のタイミングを合わせて?)参加したいフェスティバルだ。
アメリカ最大級、シカゴ美術館&シェッド水族館も見逃せない!
メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ボストン美術館(ボストン)と並んで、アメリカ三大美術館に数えられるシカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)も、時間が許すのであれば必ず訪れたいスポットだ。
ミレニアム・パークに隣接して立つシカゴ美術館は、1893年のシカゴ万博の際に造られた建物を本館とし、古代から現代までの幅広いアート作品を展示・収蔵する。特筆すべきは、印象派からポスト印象派作品の充実ぶり。フィンセント・ファン・ゴッホの『THE BEDROOM(アルルの寝室)』やクロード・モネの『STACKS OF WHEAT(積みわら)』、ポール・セザンヌの『THE BASKET OF APPLES(リンゴのバスケット)』など、そのコレクションはフランス以外では最大級と言われている。
マルク・シャガールのステンドグラス作品『AMERICA WINDOWS(アメリカの窓)』も必見。
アメリカでは『モナリザ』の次に有名と言われる『アメリカン・ゴシック』。
近代から現代にかけてのアート作品も見どころ十分。例えばパブロ・ピカソは、青の時代からキュビズムの時代、新古典主義の時代と、それぞれ作品を見比べて鑑賞できるのも魅力だ。またアメリカの絵画史においても不可欠な名作、グラント・ウッドの『AMERICAN GOTHIC(アメリカン・ゴシック)』やエドワード・ホッパーの『NIGHTHAWKS(ナイトホークス)』もぜひ見ておきたい。
これだけ幅広い年代とジャンルの傑作アートを網羅する美術館は、世界でもそう多くはない。開館時間が11時〜17時(火曜休館)とあまり長くないのが出張者からすると難点だが、木曜だけは夜の20時まで開いているので、仕事後になんとか滑り込んで訪れたい。
ミシガン湖の湖畔に位置するシェッド水族館(Shedd Aquarium)に関しては、アメリカのみならず、世界でも最大級の屋内型水族館と言われている。美しいボザール様式の建物で、入るとすぐにロタンダと呼ばれる優美なスペースが来場者を迎える。ここに展示されているのは2024年に新設されたWonder of Waterという2つの水槽。海水にはサンゴ礁と熱帯魚、淡水に水草と淡水魚、2つの対照的な生態系を並べ、「水」という環境の本質と重要さを感じることができる。
また館内には約3万匹の水棲生物を飼育しており、アマゾン川と熱帯雨林を再現した「Amazon Rising」や、フィリピンのアポ島のサンゴ礁を模した「Wild Reef」など、自然環境を大掛かりに再現した展示が魅力だ。ローワーレベルとアンダーウォーターレベルの巨大水槽に足を運べば、シロイルカやカマイルカ、ラッコ、アシカ、ペンギンなどの海洋哺乳類たちが、のびのびと泳ぐ様子を水面、水中どちらからも鑑賞することができる。
シロイルカ(別名ベルーガ)はシェッド水族館の人気者。時間帯によっては餌やりも行われる。
Amazon Risingでは世界一大きい淡水魚アラパイマのほか、ピラニアや電気ウナギも見られる。
ちなみにここで紹介したシカゴ美術館やシェッド水族館は、シカゴ・シティパスを活用することでお得に入場することができる。どれだけ回れるかにもよるが、ほかにも行けそうな施設があるかホームページでチェックし、購入を検討してもよいだろう。
アトラクション「フライオーバー」でシカゴがもっと好きになる!
おすすめスポットとしては最後の紹介になるが、シカゴの街への愛情が一気に増すこと間違いなしなのが、ネイビー・ピアにある没入型アトラクション、フライオーバーだ。
ギャラリー、プレショー、フライオーバーの3部構成となっており、メインのフライオーバーは東京ディズニーシーにある「ソアリン:ファンタスティック・フライト」のように、ドーム型スクリーンを目前にしたアトラクションに乗り込み、実際にシカゴの空を飛んでいるかのような没入感が味わえる。
フライオーバーは朝焼けに染まるシカゴの摩天楼上空から始まり、前編でも登場したシカゴ・トリビューン・タワーから物語が動きだす。ビルの上からの急降下や、シカゴ川沿いの低空飛行など、飛んでいる映像だけでも十分スリリングなのだが、フライオーバーの面白いのは10分弱の映像にシカゴの建築やカルチャー、公共交通機関、イベント、スポーツ、自然など、さまざまな魅力が凝縮されている点にある。
ミレニアム・パークのビーンやシカゴループ、シカゴ劇場などの見どころのほか、夏のミシガン湖や花火が夜空を照らすネイビーピアなどに集まるシカゴ市民の日常が垣間見られるのも面白い。またこの手のアトラクションでは珍しくストーリー性があり、ギャラリーやプレショーからの伏線がしっかりと回収されているのも見逃せない。
見終わった後は「シカゴはなんてクールな街なんだ!」という爽快感が止まらない。実際、シカゴは出張だけで訪れるにはもったいないほどエキサイティングな街だということが、前編後編を通じて伝わればうれしく思う。
クラス最大級の空間を実現、ANAのTHE Roomで長距離フライトも快適!
日本からシカゴまでは直行便、乗継便ともに多くの選択肢がある。そんななか、ビジネスパーソンにおすすめしたいのがANAのビジネスクラスシート、THE Roomだ。大型機のボーイング777-300ERのビジネスクラスに導入されているANAの最新型シートで、最大の特徴はその名が示すとおりスライド式のドアを閉めることでプライベートな個室を実現する点にある。
最大ベッド長が約196.5cm、最大ベッド幅が約95.7cm。これは世界中の航空会社のビジネスクラスと比較しても最大級の広さを誇る。従来は前向き一方向のみで構成するシートを、THE Roomでは前向きと後ろ向きをパズルのように組み合わせることでフロア面積を最大限活用し、スペースを創出。特に横幅の広さはこれまでのANAのビジネスクラスの約1.5倍もあり、実際に利用してみると寝返りが打てたり、枕元に本やメガネを置いたりでき、実にゆとりが感じられた。
THE Roomのメリットはシートの広さだけではない。テレビモニターは24インチ型4Kモニターを採用しており、こちらも従来のビジネスクラスの17インチから大幅にサイズアップしている。高精細の4Kモニターを飛行機に搭載したのはANAのTHE Roomが世界で初めてとのことで、備え付けのSONY製ノイズキャンセリング機能付きヘッドホンとセットで使用することで、最高の環境下で機内エンターテインメントを満喫することができる。
またTHE Roomを搭載したボーイング777-300ERでは無料でWi-Fiも利用可能(ファーストクラス、ビジネスクラスのみ)。スマホでのWEB閲覧はもちろん、大型サイドテーブルを引き出し、読書灯を点けることでPC作業も非常にはかどる。そうこうしているうちに、本来は長時間フライトで退屈してしまうシカゴ線の時間があっという間に過ぎていく。
アメニティポーチは1934年創業、英国王室御用達レザーブランドの「ETTINGER」。中にはAVEDAのスキンケア用品や環境に配慮した歯ブラシなど。
機内食は事前予約サービスあり。確実に食べたいものがあるときはANA SKY WEBよりメニューを選択しておくとよい。
ANAのビジネスクラスは機内食でもしっかりと楽しませてくれる。国内外の著名シェフやお酒のプロフェッショナルらで編成する「THE CONNOISSEURS(ザ・コノシュアーズ)」が、日本発の国際線で食事と飲み物(一部)をプロデュース。私が搭乗したフライトでは『銀座レカン』総料理長、栗田シェフとのコラボレーションした洋食メニュー(前菜、メインディッシュ、デザート)を選ぶことができた。ワインに関しては客室乗務員からのペアリングも提案され、高度約1万mで至高のグルメ体験を堪能。ちなみにこちらの栗田シェフのメニューは2025年6月~8月の期間限定で、以降はまた新しいシェフとの共演が予定されているという。次回以降のフライトもまたANAで、と願うのは自然なことだろう。
「世界最高レベルのくつろぎ空間」と標榜するだけあって、まるでファーストクラスに搭乗しているかのように感じられたTHE Roomでのフライト。一切の疲れをひきずることなく、あっという間にシカゴ・オヘア空港へ着陸した。その快適さは「できることならば、このままあと数時間乗っていたい」と思わせるほどだった。現地に到着したらすぐに仕事も遊びも全力で、と考えるビジネスパーソンにはぜひともおすすめしたい選択肢である。
※THE Roomはシカゴやニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン線などに導入されていますが、機材の関係で非搭載のフライトもあるため、THE Room搭載機かどうかはANAの公式サイトで予約時にご確認ください
取材協力:シカゴ観光局、ANA