腕時計
意志を持って、時計を着替える。【第4回】
町田啓太とチューダー
2025.10.02
30歳に差し掛かる頃から、時計熱が高まってきた。「仕事を通じて時計に触れる機会も増えましたし、もっと深く時計の世界を知りたい」という町田啓太が、5つの時計に出合った。
タフウォッチの現在地。
腕時計は、人が身に着けて使用する以上、人がおかれた環境の変化に合わせて、進化や変化をしていく必要がある。この数十年で大きく変わったのが、デジタルツールだ。パソコンは小型化し、スマートフォンやタブレットも進化。さらに周辺機器も増えた。こういったツールの強力な電力は強い磁場をつくり、またツールの内部に強力なマグネットを使っているため、その磁力が機械式時計にとっては大問題になる。機械式時計のムーブメントのパーツのほとんどが鉄素材で作られているので、強い磁力に触れると磁気を帯びてしまい精度が劣化してしまうのだ。
かつては修理に持ち込まれる時計の大半は、リューズからの水の侵入だった。しかし現在は、故障理由のほとんどが磁気帯びだという。それだけ現代人は磁力に囲まれて生活しているのだ。
そこで時計ブランドは、耐磁性を高めるための研究開発を進めた。しかしそもそも機械式時計の歴史において、耐磁性という考え方は新しいものではない。20世紀初頭に飛行機用のレーダーが開発されたことをきっかけに、パイロットウォッチの耐磁化が進んだ。また医療関係者やエンジニアも、仕事の際に磁気を異発する機械を使用することが多く、耐磁時計が愛用された。20世紀半ばの耐磁時計は、ムーブメントの周囲を耐磁性能の高い軟鉄で覆うことで磁気帯びを防いだ。しかしこの構造だと、どうしても時計が厚く大きくなってしまう。そこで現代は、精度に関係するヒゲゼンマイというパーツなどを非磁性素材で製造するようになった。
人気モデル「ブラックベイ58」に搭載されるCal.MT5400-Uは、チューダーが2016年に設立したムーブメント会社ケニッシが製作。耐磁性能に優れるシリコン製のヒゲゼンマイを採用することで、1万5000ガウスの磁気(医療機器MRIが発する磁力と同レベル)であっても影響を受けない。さらにCOSC認定クロノメーターレベルの高精度も実現。Cal.MT5400-Uは、METAS(スイス連邦計量・認定局)が認めたマスター クロノメーターを取得している。またケースは頑強な200m防水を備え、まさしくオールマイティタフな高性能ウォッチとなった。
しかもダイヤルとベゼルには、深みのあるバーガンディを使用しているのも特徴。タフウォッチでありながらファッション性も大切にしているのも、ニーズに合わせた時計の進化と言えるだろう。
精度、耐磁、防水に加えてファッション感度の高いカラーリングを備えた「ブラックベイ 58」。実用的なタフウォッチもまた、現代的に進化しているのだ。
Keita’s Voice
「タフウォッチはステンレススティール製のがっちりとしたケースが似合いますよね。それだけでも安心感があります。僕は体を動かすのが好きなので、自分にはスポーツウォッチが似合うと思います。ただし色はシックなものが多いので、このバーガンディは新鮮ですね。価格帯もこなれていますし、ファッション的な楽しみ方の幅も広がるので、チャレンジしたくなります」
自動巻き、SSケース、ケース径39㎜。¥674,300
問/日本ロレックス / チューダー https://www.tudorwatch.com/ja
Photograph: Toru Kumazawa
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY(HAKU)
Text: Tetsuo Shinoda