週末の過ごし方

壁もドアもない究極リゾート
「ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ」へ。

2025.10.16

壁もドアもない究極リゾート<br>「ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ」へ。

バリ島のウブドから、さらに北へ車で40分ほど。深いジャングルと棚田に抱かれるようにたたずむのは、16室すべてがヴィラタイプのスモールラグジュアリー、「ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ」だ。2022年夏に開業した際には、「No Walls, No Doors」という驚きのコンセプトが話題を集めた。壁もドアもない客室の泊まり心地は、果たしていかに? 自然に溶け込む唯一無二の体験を、トラベルエディターが宿泊リポート。

遮るもののない開放感が五感を包み、自然の循環に溶け込んでいく

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世界中の畏敬の念を抱かせる場所で、心身回復のために五感の聖域を提供するバンヤンツリー・ブランド。ここブアハンのメインプールもそのコンセプトを体現している。

世界で40以上の施設を展開するシンガポール発のラグジュアリーホテルブランド、バンヤンツリー。今回紹介するのは、そのなかでブランドとして初めて「エスケープ」の名を冠した「ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ」だ。ブアハンはバリ島中部の未開のエリア。日常の喧騒から完全に切り離された大自然が広がっており、まさにひと時の“逃避(エスケープ)”を体験できる。

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(写真左)深い森とライステラスが広がるブアハン。ホテル以外の人工物はほとんど見当たらない。
(写真右)高低差のあるリゾート内を快適に移動するためのケーブルカー。移動中の景色も実は絶景だ。

客室数はわずか16のみ。すべてがヴィラタイプで、18歳未満は宿泊不可のアダルトオンリーなリゾートになっている。最大の特徴は、壁やドア(もちろん鍵も!)のない客室。自然回帰をうたうホテルはいくつもあるが、自然と客室の境界線がここまで取り払われたラグジュアリーリゾートは正直経験がない。

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テラスを含めて120㎡以上の広さを誇る客室。計算され尽くしたレイアウトのため、当然滞在中に他のゲストの視線を感じることはない。

遮るものがないからこそ、ゲストは眼前に広がる深い森や渓谷、聞こえてくる鳥のさえずりやアユン川の滝の音、ひんやりと伝わる朝もやの空気などを、常に感じながら滞在する。感覚としては、五感が刺激されると言うより、優しく包み込まれると言ったほうが近い。まるで自然に還る、自然の循環に溶け込んでいくこの感じは、都会では味わえない深い安らぎをもたらしてくれる。バンヤンツリー・エスケープは、自然と人との境界が取り払われた唯一無二の聖域、と言っても過言ではないだろう。

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(写真左)全部屋にプライベートプールとガゼボ、デイベッドが備わっており、プールは夜間にライトアップされる。
(写真右)バスタブもご覧のとおりの開放感。なおシャワーブースは客室の死角に配置されている。

ちなみに、壁も窓もないとなると気になるのが、虫の侵入だ。筆者もどちらかというと虫が苦手なほうなのである程度は覚悟していたのだが、実際は拍子抜けするほど少なかった。実はこれ、「ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ」に限った話でなく、バリ島山中のリゾートでは持続可能かつ環境に優しい方法で、定期的にペスト(害虫)・コントロールを行い、ゲストの健康と快適な滞在を守っているのだ。またバンヤンツリー独自の虫対策として、ラベンダーやレモングラスなど虫除け効果のある植物を植樹したり、手作りのお香をたいたり、超音波を発したりするなど、化学成分を使用しない対策が取られている。ちなみに客室には念のため蚊帳が用意され、夜になると滞在空間をしっかりガードしてくれるので安心だ。

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(写真左)ターンダウンサービスが入り、蚊帳を下ろしてくれるため、害虫の侵入はほとんどゼロ。
(写真右)実際に使うことはなかったが、蒸し暑いときのため、ベッド頭上には簡易的な空調システムもある。

食材の大半を半径1時間以内から調達する地産地消へのこだわり

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ダイニングはオープンキッチンになっており、活気あふれる調理の様子が伝わってくる。

「ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ」のダイニングは1カ所。もちろんこちらも「No Walls, No Doors」をコンセプトとしている。ウブド周辺の平均気温は年間通じて22〜29℃と過ごしやすく、オープンエアのダイニング空間も実に快適だ。テーブルの上に運ばれてくる料理の食材は、できる限り車で半径1時間以内の調達でまかなう地産地消をモットーとし、ゲストに新鮮で安全な食材を届けることはもちろん、地元生産者の継続的なサポートを目標としている。

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ライトアップでぐっと夜の雰囲気に切り替わったメインダイニング。オープンエアが心地よい。
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(写真左)野生の葉物野菜やエディブルフラワーなどのサラダは、ミソとチリソース、ビネガーを混ぜたドレッシングで。
(写真右)朝食は同じレストランにて。メイン料理を選び、パンやシリアルは好きなだけ取るセミ・ビュッフェスタイル。

ディナーはコースのみで、フィンガーフード、アペタイザー、セコンドメニュー、メインメニュ―、デザートの5皿構成。連泊するゲストを飽きさせないよう、内容は毎日更新される。「ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ」は敷地内に2000㎡のオーガニック農法の畑を所有しており、厨房で使う多くの食材がここから調達される。どれも野生味たっぷりで、味わい深く、野菜だけでもこんなにおいしいと感じられるのは驚きだった。目をこらすと各メニューの下にはおすすめのワイン・ペアリングが記載されており、バリ島で醸造したワインメーカー「Two Islands」や、ブドウからメイド・イン・バリ島の「Hatten Wines」なども推奨されている。インドネシアは輸入関税が高く外国産ワインは高価な傾向にあるが、これらのバリ島産のワインはリーズナブルに楽しめるのでおすすめだ。

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(写真左)「ワイルド・トゥ・テーブル」をコンセプトにコンポスト(堆肥)を活用した有機農園。
(写真右)前日、ダイニングで天ぷらとして味わったパパイヤの葉もこちらの畑で採れたもの。

土地や自然と深くつながるウェルネス&アクティビティ

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カップル利用も可能なトリートメントルーム。部屋もスパメニューも、自然とのつながりを大切にしている。

「ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ」は、ウェルネスやアクティビティでも自然との結び付きを強く感じさせてくれる。おすすめは、やはりスパ。スパは個室で行うもの、という概念を覆す開放的なトリートメントルームで、ここでは大自然そのものがトリートメントの一部のように感じられる。もちろん、施術のスキルもピカイチ。厳しいカリキュラムを経たセラピストのみを採用しているため、どこの施設で受けても高い技術によるトリートメントが堪能でき、リゾート好きの間で「バンヤンツリーと言えばスパ」は定説だ。

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(写真左)トリートメントルームからの壮大な眺め。BGMはアユン川のせせらぎの音と、鳥のさえずりだ。
(写真右)セラピストはバンヤンツリー・スパ&ウェルビーイング・アカデミーで厳しい研修を受けたプロフェッショナルばかり。

スパメニューに迷ったら、シグネチャーの「アイランド・マッサージ」をおすすめしたい。こちらはバリ島の伝統的なマッサージ技法に着想を得たオイルマッサージで、長旅でたまった疲れをほぐし、体を活性化させてくれる。ディープな指圧やストロークもリクエストできるのが、強めのマッサージを好む男性にもぴったりだ。オイルはローズ、レモングラス、ジンジャーなどから選ぶことができる。私はエキゾチックで甘い香りのイランイランを選択。そのリラックス&安眠効果もあって、まぶたを閉じた瞬間に夢の世界へといざなわれてしまった。

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体幹の筋力と柔軟性にフォーカスした「エレメント・ピラティス」。爽快な一日の始まりに。
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(写真左)ボタニスト・バーではカクテルやモクテルを実際に作れるメイキングレッスンを無料で開催。
(写真右)アユン川の雄大な滝まで片道1km弱、20分ほどで行けるミニ・トレッキングも人気のアクティビティ。

リゾートが用意してくれる無料プログラムにも積極的に参加したい。ザ・パビリオンと呼ばれる施設では、ヨガやピラティス、サウンドヒーリングなどのプログラムが日替わりで提供されている。またレストランの上階にあるボタニスト・バーでは、カクテルメイキングのクラスをほぼ毎晩開催。農園で採れたハーブをすりつぶして、夕食前のアペリティフを自ら作ることができる。アクティブなものでは、敷地内にあるチャンプアン滝を目指すガイド付きトレッキングも催行。1時間弱で往復できるので、滞在中のちょっとした運動に参加してみるとよい。こうした無料プログラム以外にも、ビンテージカーで村々や寺院を巡ったり、バリ島で古くから受け継がれている「JAMU」というハーブ飲料メイキングにトライしたりなど、ローカル色の強いツアー(有料)が数多く用意されており、ブアハンでの滞在をより思い出深くいものにしてくれる。

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ご覧いただいたように「ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ」はただのリゾートではなく、自然と調和する喜びを与えてくれる場所だ。喧騒からの“逃避”、そして自然の循環に溶け込むことで、都会で休息するより何倍もの早さで心身が再生し、軽やかに生まれ変わることができる。「No Walls, No Doors」がもたらす特別な開放感。それは、ホテルに泊まり慣れた旅人でも新たな発見の連続となるに違いない。

ブアハン、バンヤンツリー・エスケープ
https://escape.banyantree.com/indonesia/buahan

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