特別インタビュー
俳優・本田響矢。26歳の“今”を刻んだ写真集『ECHOS』
2025.12.08
俳優として確かな存在感を放ちつづける本田響矢。2025年はドラマ『波うららかに、めおと日和』で演じた江端瀧昌役が大きな話題を呼び、一躍“最注目の若手俳優”として名を広げた。端正な顔立ちと柔らかな物腰。その奥に潜む芯の強さを、彼のたたずまいは静かに物語る。
そんな本田が、来年1月に2冊目となる写真集『ECHOS』を発売する。タイトルには、自身の名前の「響」から着想した“エコー=響き”という意味が重ねられている。ここでいう響きとは、声そのものではなく、彼の存在やたたずまいが“描写としてどのように響き渡るのか”というイメージだ。
「今回の写真集では、自分がどういう立ち位置にいて、いま何を考えているのか。いったん立ち止まって、それをしっかり見つめ直したかったんです。写し出された自分を通して、もう一度“今”を確かめたいという気持ちがありました」
ロサンゼルスという憧れの地へ
撮影の舞台はロサンゼルス。本人の強い希望で決まった。
「昔からロサンゼルス、特にベニスビーチに憧れがりました。古着が好きで、アメリカのカルチャーに興味があったので、実際の土地で感じたいという思いもあって。もし写真集を作るなら、ロサンゼルスで、自分と向き合う時間を持ちたい。それがずっと心にありました」
写真集のロケはすべてLAで行われた。街の空気、光、会話、人のリズム。それらが本田の緊張を少しずつほぐしていった。なかでも、ベニスビーチでのサンセットは忘れられないと話す。
「夕日が沈んでいく瞬間が、本当にきれいで。水平線が広くて、目の前のオレンジの光と空間を見ていたら、ふっと立ち止まれました。これまでの人生、その前の人生、そして今ここにいる自分を再確認できたような感覚があって。特別な時間でした」
そのサンセットのカットが、写真集の表紙に選ばれている。
カメラが捉えた「不意の表情」
今回、撮影を担当したのは写真家・尾身沙紀氏。ファッション誌や広告でも注目される気鋭のフォトグラファーだ。
「尾身さんが切り取ってくれた瞬間が、とても新鮮だったんです。意識していない瞬間の表情がたくさんあって、『自分ってこんな顔をするんだ』と驚きました。不意に写っている姿が、とてもリアルで。普段の撮影では出ない表情もあったと思います」
写真集のページをめくると、彼の柔らかな雰囲気、静かなたたずまい、ふとしたときに見せる幼さ、そしてキリッとしたまなざし――そのすべてが、まるで一本の映画のようにつながっていく。
「静止画だけど、動画のように流れがあると思います。一冊の中に、ロサンゼルスで過ごした時間の“動き”がある。旅を一緒にしているような感覚で楽しんでもらえると思います」
ファッションが語る素の自分
本田が“ファッション好き”で知られていることは、彼を追ってきた人なら誰もが知っている事実だ。今回の写真集でもスタイリングは細部までこだわり抜かれた。
「衣装合わせにはすごく時間をかけました。自分の私服に近いものを中心に、なるべく素の自分がにじむようにしたかったんです。普段よく履く私物の革靴も使っています。僕にとってファッションは、その日の自分の空気やムードを自然に引き出してくれる存在。だからこそ、自分らしさの延長線でカメラの前に立ちたいと思っていました」
LAでは古着屋にも足を運んだという。ただ、彼らしいのは“古着だけ”にとどまらなかったことだ。
「写真集にも登場する美術館でバスキアのブランケットを買ったり、家具店で絵を買ったり。土地の空気を感じるものを選びたくて。もちろん服も買いましたけど、その土地でしか出合えないものをたくさん持ち帰りました」
ファッションは、彼の“普段”を知る最も自然な入り口だろう。多くの女性ファンを魅了してきた彼だが、この一冊は男性にとっても興味深いはずだ。服の選び方、たたずまいの作り方、日常と非日常の切り替え方。そのどれもが写真ににじみ出ている。
一冊の写真集がくれた“現在地”
「26歳の今の自分が、何を思い、何を大事にしているのか。数年後に思い返せるように、ちゃんと形に残したいと思いました」
いま見ている景色、抱えている感情、そのすべてが時間と共に薄れていく。そのはかなさを知っているからこそ、彼は「記録として残したい」と強く願った。
「今回の写真集は、自分にとって“立ち止まるための一冊”でもありました。ここからまた、新しいスタートを切れる気がします」
本田のお気に入りは、撮影が終わった直後に撮られた一枚だという。
「『撮影終わりました』って言われた後にピースしたときに撮られた写真がすごく好きなんです。表情から、しっかり自分を見つめ直すことができたと伝わるかなと。自分の現在地が刻まれた、この写真集を撮った意味が詰め込まれているカットだと思っています」
「役者として、まだまだこれから」
2025年は『王様のブランチ』のレギュラー出演、ドラマ、舞台、そして今回の写真集の撮影——大きな挑戦が続いた一年だった。
「たくさんの人に知っていただく機会が増えて、自分が役者として生きる意味を改めて考える一年でした。これから挑戦したい役もたくさんありますし、12月には『FNS歌謡祭』で歌にも挑戦します。まだまだ未熟だと思っているので、経験を積んで、役者として新しい引き出しを増やしていきたいです」
写真集『ECHOS』は、静かに、深く、本田響矢という俳優の“今の響き”を刻んだ一冊だ。ページをめくるごとに立ち上がる空気や温度は、見る人それぞれの感性にそっと触れてくるはず。ここから彼がどんな“響き”を届けていくのか、その続きも見たくなるだろう。
本田響矢 写真集『ECHOES』
仕様 A4判並/160頁予定/撮り下ろし
価格(通常版)3500円+税
発売日 2026年1月31日予定
本田響矢(ほんだ・きょうや)
俳優。1999年6月20日生まれ、福井県出身。映画・ドラマ・舞台・モデルと多彩なフィールドで活躍する。近年では、ドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系/2025年)の江端瀧昌役で大きな話題に。ほかにも『すぱいす。』(BS-TBS 木曜ドラマ/2025年)『私は整形美人』(フジテレビ系/2025年)など話題作への出演が続き、存在感と確かな演技力で幅広い層から支持を集める。いま最も注目される若手俳優のひとり。
Photograph:Hiromi Ikeda
Text:Mayu Yamamoto