週末の過ごし方
隠すことのできない品性
着崩した姿に正統の神髄が表れる。
【粋な男はスーツを着る。】
2025.12.11
スーツ=仕事服ではない。それは、スーツの一面にすぎない。
古今東西、男を最も輝かせてくれるスタイル。
ようやく秋が訪れ、スーツ本番のシーズンがやって来た。
うっすらとグレンチェックの柄が浮かぶ、ネイビースーツ。そのファブリックの美しい光沢は、ソファに横たわり、着崩れていてもなんら変わらぬオーラを放つ。世界中のエグゼクティブたちが指名する理由だろう。サックスブルーのシャツにネイビータイ、正統派Vゾーンは時代を超越する。スーツ¥1,204,500〜(オーダー価格)、シャツ¥209,000、ネクタイ参考商品、チーフ参考商品/すべてブリオーニ(ブリオーニ クライアントサービス 0120-200-185)
スーツはエレガントである。そう教えてくれた偉大な男が、この世を去った。91歳で亡くなったジョルジオ・アルマーニ。保守的になりがちなスーツに、美しさの革命をもたらした。生地も色も、なによりもシルエットが美しい。いまどきミュージシャンが着るゆるやかなスーツを見ると、流行だと思ったものが、普遍的であったことがわかる。
もう一人、エレガントな男が去った。89歳で逝去したロバート・レッドフォード。1974年の映画『華麗なるギャツビー』は彼の代表作の一つである。原題の『THE GREAT GATSBY』を「華麗なる~」と訳したのは、彼の着こなしが、あまりにもエレガントだったからだろう。窓際に立つギャツビーが着た白いスリーピース姿が、印象に残る。
二人には、インディペンデントであったという共通点がある。多くのデザイナーが資本力のある大きなグループの傘下に入るなかで、アルマーニは生涯にわたって独立メゾンであり続けた。レッドフォードは、ハリウッドのメインストリームに迎合せず、サンダンス映画祭を主宰してインディーズ映画を応援し続けた。
さて、スーツの話をしよう。アエラスタイルマガジンは、スーツを賢く着る方法を伝授してきた。「仕事相手にどう見えるか」「用件に沿ったドレスコードを守っているか」。組織に属して、クライアントと相対するビジネスウエアとしてのスーツには、そういったルールが有効であるのはいまも変わらない。
ただ、スーツを着る意味は、それだけにとどまらない。エレガントに着こなせば、自らを鼓舞してくれる力があるのだ。ビジネスでも、親しい仲間が集うプライベートなパーティーでも、あるいは、一人で夜の街を歩くときであっても。スーツをエレガントに着れば、どんなときでも「ハレの日」となるはずだ。
一つだけ、大切なことがある。何ものにもとらわれない、インディペンデントな心を失わないこと。エレガントにスーツを着たときには、こちらを刺すような視線を持っていてほしい。
山本晃弘 アエラスタイルマガジン エグゼクティブエディター 兼 WEB編集長
Photograph: Kazuki Nagayama(S14)
Styling: Masayuki Sakurai
Hair & Make-up: Tazuru Takei(&’s management)
Edit & Text: Kenji Washio