週末の過ごし方
田植えから始める注連飾りで
年神様を迎えよう
【センスの因数分解】
2026.02.16
“智に働けば角が立つ”と漱石先生は言うけれど、智や知がなければこの世は空虚。いま知っておきたいアレコレをちょっと知的に因数分解。
毎年開催の日本民藝館の「日本民藝館展」は新作工芸の公募展。昨年、いろいろな形をした注連(しめ)飾りが入選し飾られていました。昔ながらの素材とつくりですが、シンプルでモダンな雰囲気です。
丙(ひのえ)という屋号で活動する藤本 羊さんは、パタンナーとして岡山のデニム工房で働いていましたが、結婚し子育てのために離職。ひょんなことから田植えから始める注連縄づくりをすることになります。
「縁あって、い草の籠を作る仕事を数年手伝うなかで、お正月飾りもお願いされたのがきっかけでした。4年前のことです。田んぼの小さなスペースを借りての藁(わら)作りも、その体験が純粋に面白そうと思ったからでした」
その後、メンターとも言える注連飾り職人・上甲 清さんとの出会いもあり、「腹を決めた」のだとか。
「この業界は衰退産業で、続けるのかどうか悩みました。そんな時、愛媛に田植えからやっているおじいちゃんがいると聞いて訪ねていったんです。今はその上甲さんに見せて恥ずかしくないものを作りたいと思っています」
注連飾りづくりでいちばん大切にしているのが、バランスだと言う藤本さん。型にはそれぞれにふさわしいサイズ感があるそうで、藁も、青い若いものと黄色くなってからのものと、型によって使い分けています。繊細な感覚が、モダンで軽快な美の印象につながっているのでしょう。それはファッションの世界から転身した美的感覚が関係するのかもしれません。
「美しくずっと眺めたくなるものを作りつづけたい。藁細工だけで一本立ちするのは難しく、今後仲間を増やしていくためにも、それをどうしたらいいかが課題です」
伝統と未来の交差点にある丙の注連飾りは、素朴で美しい。今年は文化を受け継ぐ道にも通じるこの注連飾りで、年神様を迎えてみてはいかがでしょう?
Photo: Takashi Sakamoto