特別インタビュー
AIを駆使して、ゲーム感覚でピアノをマスター!
「AI ミュージック コーチ」が日本上陸。
2026.03.16
大人になってからピアノを弾けるようになりたいと思っても、いざ練習となると独学では要領をつかみにくい。ピアノ教室に通っても、自主的な練習時間を思うようにとれず、最終的には挫折してしまうことも多い。
そんな悩ましい状況を打開し、多忙な大人でも隙間時間を利用してゲーム感覚で楽しく継続的に、さらには本格的にピアノを学べる製品サービスが登場した。それが2009年にロンドンで創業した音楽テクノロジー企業ロリが提供する「AI ミュージック コーチ」だ。
昨年11月にロリは欧米で「ロリ ピアノ システム」のサービスをスタート。利用者は瞬く間に数万人を数え、驚くほど早くピアノが上達したという報告が続々届いているという。「AI ミュージック コーチ」は、「ロリ ピアノ システム」を構成する演奏学習アプリ「ロリ ラーン」の機能のひとつだ。いったいどんな仕組みなのだろうか?
最大の特徴は、専用のキーボード「ロリ ピアノ」と独自のハンドトラッキングデバイスを搭載した「エアウェーブ」、さらには上記の「ロリ ラーン」を組み合わせることで、演奏者の指の動きや手の形をリアルタイムで解析できること。
具体的には「エアウェーブ」に搭載されたセンサーによって、演奏中の両手27関節の動きを毎秒90フレームでトラッキング、つまりは追跡、記録することで、正確に鍵を押せているのかだけではなく、指の形、脱力、姿勢、運指などもチェック。どう弾いているのかまでも解析しながら、対話型AIとの日本語での自然な会話を通じて、まるで先生に教えてもらっているかのようにピアノを習うことができる。
ピアニストでもあるローランドさんが、自らデモンストレーション。
もちろん、日本語も対応可能。
AIとの会話は実にスムーズで「この部分をうまく弾くコツは?」とか「もう少しゆっくり教えてほしい」などと伝えれば、適切なアドバイスをしてくれたり、練習内容を調整してくれたりする。
初めて練習をした時の対話を例に出すと、学習者の名前を呼びながら「◯◯さんはピアノを始めたばかりですか? それとも少し経験がありますか?」と問いかけがあり、「まったくの初心者です」と返答すると「なるほど。じゃあ、これから少しずつ慣れていきましょう」と驚くほどナチュラルに会話が進んでいった。
練習に使用する楽曲は現在1,000曲ほど用意されていて、AIに相談しながら決めることができる。
この画期的な練習システムを開発したのは、ロリのファウンダーであり、CEOのローランド・ラムさんだ。
ローランドさんは楽器を習う際は指の動きを確認する必要があるため、これまでは先生に見てもらいながらの練習が常識だったと話す。それをセンサーとAIをつなげることで、ひとりで練習する際も先生と同様のサポートを実現したサービスが“AIミュージック コーチ”なのだ。
実は独学の場合だけではなく、ピアノ教室に通っている人でも効果を発揮できるのが、このサービスの強みでもある。
「例えば、週一回のペースでピアノ教室に通う場合、レッスン以外の時間は、自分で練習を行うわけです。学びの過程で重要なことは9割以上が練習であるにもかかわらず、それが分かりにくく、つまらなくて、しかも多くの場合、ひとりで行わなくてはならないという寂しさがあると感じます。そういった課題を“AIミュージック コーチ”が解決してくれるのです」とローランドさん。
練習には5つのモードがあり、例えば、音ゲーのような感覚で、正しい指を使い、正しいタイミングで正しい鍵を叩くモードから、譜面上を流れる音符に合わせて鍵を叩くうちに楽譜通りに弾けるようになるモード、さらには譜面を見ながら設定スピードに合わせて普通に弾いていくモードまで、習熟レベルに合わせて段階的に練習ができるようになっている。
練習に飽きたら、ピアノの上達につながる2つのゲームも用意されている。これはキーボードのブラインドタッチを学ぶためのゲームのように、例えば、敵を倒すために鍵盤を叩くうちに最初はぎこちなかった指の動きが少しずつ思い通りに動くようになっていくものだ。
「楽器を学ぶ上で一番重要なことは、練習を習慣づけることだと思います。そのため、毎日無理なく続けられるように10分から15分くらいのセッションをたくさん用意しています。短時間で楽しく練習ができたら、次の日もまたやりたくなるはずで、この繰り返しこそ最も効果的に楽器が上手になる方法だと思います」
実際に完全に初心者の自分がAIミュージック コーチを試してみたところ、指が思い通り動かないことからくるストレスはまったく感じなかった。なぜなら初心者なりの指の動きに合わせて練習を行うことができるからで、夢中でやっていくうちに、ふとメロディを奏でている自分に気づいた時の達成感は、まさに歓喜の瞬間といっても言い過ぎではなかった。短時間ではあったが、ピアノの練習なのにゲームのようにズブズブとハマっていきながら、無理なく上達していけると実感した。
ちなみにローランドさんは、独学でピアノを学び、10代の頃にジャズミュージシャンに。一時期は日本で暮らし、那覇でジャズバンドの一員としてピアノを弾いていたこともあるほどの親日家でもある。
そんなピアノ上級者のローランドさんは、今、AIミュージック コーチを使って、クラシックの楽曲に挑戦中だ。エリック・サティの楽曲が弾けるようになりたいと話し、日々練習を行っている。AIミュージック コーチは必ずしも初心者向けではなく、プロのピアニストが新しい表現方法を模索する時などにも活用することができるのだ。
デザインも洗練されていて、自宅のインテリアにもスタイリッシュに馴染んでくれるだろう。
日本での展開にあたり、Jポップや伝統的な曲など日本独自のコンテンツも加えていくと話すローランドさん。またヤマハミュージックジャパンと連携することで、今後新たな音楽体験を続々と展開していく予定だ。
ピアノが弾けるようになりたいという長年の夢を夢で終わらせず、現実に手繰り寄せてくれる最強の助っ人が、AIミュージック コーチなのである。
Text: Hiroya Ishikawa
Photograph&Videograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)