スーツ
浮かない、飽きない、ありきたりじゃない。
卒業式は技あり、“さりげなくブラウン”のスーツ
2026.03.09
もうすぐ卒業式、学生の身もあと少しだ。リクルートスーツでの就職活動で、オンの着こなしはなんとなくOK。でも、せっかくなら卒業式で着用するスーツも、もう少しバリエーションを覚えてきたい。そんな方に働きはじめてからも使える、ちょっと華やかなスーツを紹介。
スーツはドレスダウンアイテムだった。
こう聞くと「え?」と思われる人が大半だろう。ただ男性の服飾史からすれば、本来はモーニングコートや燕尾服に見られるような裾が長く伸びたジャケットが礼服だった。ちなみにスラックスは側章付き。色は黒、グレーやネイビーでも黒に近い暗色が基本となる。まあ、最近ではノーベル賞授賞式や皇居での式典など、晴れやかで厳かなシーンでしか見ることはなくなってきた。結婚式で着る新郎新婦の父親も減っているはずだ。
現状のものはもともとラウンジスーツと呼ばれ、その名のとおりラウンジルームで過ごすためのくつろぎ着だった。腰下までの長さも、座ることを想定してしわがつかないように配慮された結果。このように堅苦しく思えるスーツも、需要とシチュエーションに応じて変化するフレキシビリティがある。
ただしフレキシブルであったとしても、なんでもいいわけではない。押さえるべき基本を押さえ、どこを外すのかが腕の見せどころ。
それを踏まえて、卒業式のおすすめコーディネートを考えてみよう。
4月からのリクルートスーツをそのまま流用するのは構わない。ただこれはやはりオンビジネス。卒業式後の謝恩会に出席することを考えると、もう少し華やかさ、しゃれっ気があるものを選ぶのも手。
そこで品格を感じさせる絶妙な変化球を、写真のコーディネートを例にして解説してみよう。スーツ自体はオーセンティックなスリーピース。ここのところ多いリラックスフィットではなく、無駄のないジャストサイズだ。ポイントはブラウン系のカラーリングにある。ネイビーやグレーに慣れていると戸惑うかもしれないが、濃いめならさほど違和感はない。スーツとネクタイの光沢も、ブラウンなら黒のような夜遊び感が目立たず、程よい上品さを醸し出す。Vゾーンを同系色でまとめれば、ネクタイに少々大きめの柄を持ってきても悪目立ちはしない。
逆に明るすぎるブラウンやモード系スーツに多いオーバーサイズだと、どうしても“やりすぎ感”は否めない。またインナーも、ラフなノータイやカットソーではセレモニーの場で浮いてしまうので論外。タイドアップ、チーフというルールを押さえながら、色で遊ぶのが上級者だ。繰り返すが、スーツ本来のフォーマル感はぜひキープしておきたい。
節度をわきまえた着こなしの遊びは、意外に飽きがこない。このコーディネートも卒業式一日だけではもったいない。働きはじめるとパーティーの出席も多くなる。結婚式への招待も年々増えてくるだろう。華やかな場に上品なブラウンスーツ、覚えておいて損はない選択肢だ。
Photograph: Ryohei Oizumi
Styling: Hidetoshi Nakato(TABLE ROCK.STUDIO)
Text: Mitsuhide Sako(KATANA)