スーツ
節度がありつつ色気も感じさせる。
入学式でお手本を見せるならスリーピース
2026.03.18
年齢を重ねた男性にふさわしいスーツはダブルだけではない。スリーピースも要チェックアイテムだ。入学式でスーツデビューしたばかりの息子に手本を見せる着こなしとは?
ダブルと同様に、ビギナーが手を出しにくいのがスリーピーススーツ。ただし、服飾史からすれば、こちらのほうが正当だ。もともと宮廷での男性服は羽飾りやレースなど装飾が施された華美なものが主流だったが、1666年に英国王室のチャールズ2世が「紳士服はもっと簡素であるべき」と現在のスーツスタイルの原型となるジャケットとパンツ(当時はブリーチズと呼ばれる半ズボン)のルールを提唱。その際に追加されたのが共地のベストだった。
イギリス英語でウエストコートと呼ばれる通り、肌にぴったりフィットする上着というニュアンスがある。いわば装飾の簡略化だが、ただ伊達を気取ったわけではない。もともとシャツは下着という位置づけであり、その露出を避けるべきという節度があった。同時にブレーシーズ(サスペンダー)やベルトなどの小物を隠すほか、懐中時計のようなかさばるものを収納する役割も兼ねていた。嗜みと機能性という紳士服の要素を兼ね備えたアイテムといえる。
こうした正当性ゆえに、あまりスーツに着慣れていない人にはトゥーマッチ。リクルートスーツや新人が着るのは背伸び感が出てしまうのでやめておいたほうがいい。やはりある程度は年を重ねたほうがサマになる。また体型面でのフォローも大。ベストで狭くなったVゾーンは胸元を立体的に、またウエストをスーツの暗色で締めることでお腹周りをすっきり見せられるのがありがたい。
今回はオーセンティックなダークグレーのスリーピースをセレクト。シャツは白を選んだが、光沢がつやっぽいネクタイを合わせることで清潔感と共にミドル世代ならではの色気を表現してみた。入学式というオフィシャルなシーンを意識し、ベーシックな白のチーフをTVホールドで差し色に。
着こなし方についても少しアドバイスを。通常のスーツであればジャケットのボタンをとめるのはセオリーだが、スリーピースの場合、ベストにボタンがあるので開けても問題はない。また、ベストの一番下のボタンは飾りなので外しておこう。
スリーピーススーツは三つ揃えという和名もあるようにジャケット、パンツ、ベストが同じ生地なのが基本。ただし、あえてベストだけまったく別のアイテムを合わせる場合もある。これはオッドベストと呼ばれ、柄入りやスーツ上下と色の濃淡を変えることでコーディネートのポイントに。節度に裏打ちされた遊び心は上級者なら許される“外し”だ。ただし、大きすぎる柄や派手な色の悪目立ちは子どもの入学式でなくてもNGなので気を付けよう。
息子のスーツデビューに合わせ、父親もスリーピーススーツで紳士服の原点回帰――そんなちょっとだけ背伸びするも悪くなさそうだ。
Photograph: Ryohei Oizumi
Styling: Hidetoshi Nakato(TABLE ROCK.STUDIO)
Text: Mitsuhide Sako(KATANA)