小物
水上恒司と眼鏡。
―変幻自在な男の表情管理術―
【変幻自在な男を、多彩に仕立てる眼鏡たち。】
2026.06.09
眼鏡はファッションツール以上の意味を持つ。若手俳優が目元のセルフプロデュースにトライ。
スーパーマンとクラーク・ケントを分けるのは青いスーツとマント、そして眼鏡だ。太めのセルフレームが真面目な新聞記者というペルソナをつくる。確かに目元を隠すことでそれ以外の顔立ちを際立たせてしまうサングラスに比べ、眼鏡による見た目の変化はそれ以上に大きい。デザイン、フォルム、素材、色がもたらす演出効果はあなどれない。
俳優・水上恒司。映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(2023年)で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、近年活躍が著しいが、これまで役柄で眼鏡をかけることはあまりなかった。端正な顔立ちや鍛えられたタフな肢体を生かしたいという演出側の意図もあるだろう。だが本人はより幅広いキャラクターへの挑戦にも意欲的。たとえば現在放映中の三菱UFJフィナンシャル・グループのCMでは木村拓哉、石原さとみの弟という設定で、ふたりに振り回されがちな末っ子を演じている。コミカルな役づくりの一助になっているのが、まさにセルフレームの眼鏡。
実際、水上は野球少年だった小学生の頃から近眼で、プレー中も眼鏡をかけていた。現在も演技の際はコンタクトレンズだが、オフの時間は眼鏡で過ごす。7本くらい持っているが、そのほとんどがCMのような黒縁だとか。そのせいか、今回の撮影は初めてかけるタイプばかりで新鮮だったようだ。
「どれも自分で選ばない種類」と語る理由は、26歳という自身の若さにある。
「フレームがレンズの上だけの眼鏡もありましたが(「驚きの表情」)、まだ自分には早い気がします。もう少し年を重ねたほうが似合うでしょうね」
顔立ちを変えるだけではない。手元が見えづらくなり、眼鏡を外して目を近づける初老の男性など、役の年齢や性格を表現する小道具としても使いたいという。
水上は演じるにあたって「演じる役の叫びにどれだけ近づけるか」に重きを置く。内面の追求はもちろんのこと、持つもの、身に着けるものがキャラクターと一体化するツールになる。着実に地位を築きつつある俳優にとって、眼鏡は演技の視野も広げつつあるようだ。
水上恒司(みずかみ・こうし)
1999年生まれ、俳優。ドラマ『ブギウギ』(NHK連続テレビ小説)、『青天を衝け』(NHK大河ドラマ)、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『死刑にいたる病』など、話題作に多数出演。昨年は「2025年エランドール賞」新人賞を受賞し、今年もさらなる飛躍が期待される。
Photograph: Fumito Shibasaki(DONNA)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY(HAKU)
Text: Mitsuhide Sako(KATANA)