調べ・見立て(見立て)

スーツのクリーニングやメンテナンスで、「サステナブル」を考える。
編集長の「見立て」。#35

2020.09.17

山本  晃弘 山本 晃弘

メンテナンス01

かつては、衣替えは10月1日と決まっていたものです。地球温暖化やビジネスウエアの変化によって、一斉に衣替えをする習慣はなくなったように見えます。それでも、そろそろ夏物の素材を使ったスーツを着用するのは恥ずかしい時季になりました。

私自身は、このシーズンに春夏物のスーツをクリーニングに出して、そのまま衣類を保管してもらうサービスを活用しています。スーツを着用して歩き回って汗ダクになって……という場合でもない限り、夏のシーズン中にクリーニングに出すことはありません。意外に思われる読者もいるかもしれませんが、これは、メンズ雑誌の編集者になったばかりのころにスーツ業界の達人から伝授された教えです。「スーツの生地であるウールは天然素材。温度や湿度で膨らんだり収縮したりする生きた素材なのだから、有機溶剤で洗うクリーニングはできるだけ避けたい」。素材の風合いを大切にする、上級者ならではの教えです。

アエラスタイルマガジンWEBの「調べ」アンケートで、「どのくらいの頻度でスーツをクリーニングに出しますか?」と尋ねてみました。すると、61%の読者が「1シーズンに1回程度」と回答しています。「クリーニングには出さない」と回答した8%も加えると、約7割のビジネスマンがスーツの素材感を大切にしたいという意識を持っているようです。

メンテナンス02

最近では、機能性の高い化学繊維を使ったスーツも増えました。自宅での洗濯が可能な「ウォッシャブル」をうたうスーツもあります。私自身は、「型崩れするのではないか」という心配が先に立ってしまって、自宅の洗濯機に入れたことがありません。「調べ」アンケートでも、「いつも自宅で洗う」34%、「自宅では洗わない」34%と意見が分かれました。ただ、最近の洗濯機には「おしゃれ着洗い」「デリケートコース」といった機能がついています。摩擦などの力を極力かけず、型崩れしないように洗い上げてくれるのです。「ジャケットとパンツを一緒に洗う」「洗濯ネットを使う」「衣類が絡み合うと傷んでしまうのでほかのものと一緒に洗わない」「肩に厚みのあるスーツ用のハンガーを使って干す」といった注意を守りながら、ウォッシャブルスーツの自宅洗いにトライしてみてもいいでしょう。

メンテナンス03

スーツのクリーニングや自宅洗いについて述べてきましたが、じつは毎日のメンテナンスが最も大切です。「スーツのメンテナンスでやっていることは?」の質問には、「スーツを脱いだらポケットを空にする」40%、「型崩れしないようハンガーにかける」24%、「同じスーツを毎日着ないようにする」17%が多い回答となりました。スーツを大切にしようとする、アエラスタイルマガジン読者のレベルの高さが証明されているように感じます。「着用後にブラッシングをする」「陰干ししてからタンスにしまう」も含めて、すべての回答選択肢が大切なメンテナンスなのです。

「サステナブル」という言葉がしきりに使われていますが、スーツに限らず、お気に入りの服を長く着ていく心掛けは、すぐにできる「サステナブル」な行動だと思います。さまざまな価値観が大きく変化していくこの時代に、心掛けてみてはいかがでしょうか。

プロフィル
山本晃弘(やまもと・てるひろ)
AERA STYLE MAGAZINE
WEB編集長 兼 エグゼクティブエディター

「MEN’S CLUB」「GQ JAPAN」などを経て、2008年に編集長として「アエラスタイルマガジン」を創刊。ファッションやライフスタイルに関するコラムを執筆する傍ら、幅広いブランドのカタログや動画コンテンツを制作している。トークイベントで、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南するアドバイザーとしても活動中。2019年4月にヤマモトカンパニーを設立し、現職に就任。執筆書籍に、「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。」がある。

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