Presented by
スーツスクエア
新しい仕事着
イタリア現地取材Vol.2
本格始動した「スーツスクエア」が
「フラテッリ・タリア・ディ・デルフィノ」を推す理由
2025.10.09
スーツスクエアはその名のとおり、4つのブランドで構成される。そのうち、中核をなすのがユニバーサルランゲージだ。年初めに同ブランドの商談に同行、向かったのはイタリア有数の生地メーカーとして知られる、フラテッリ・タリア・ディ・デルフィノ。そこにはスーツ本来の美意識との出合いが待っていた。
世界3大ミルの一つ
スーツスクエアは国内外の選りすぐりの生地メーカーと手を組み、単に生地を買い付けるだけではなく、“別注”により、オリジナルの生地づくりに注力してきた。この秋の本格始動に向けて白羽の矢を立てたのは、フラテッリ・タリア・ディ・デルフィノだ。
1903年、イタリアのビエラ地方ストローナにて創業。エルメネジルド・ゼニアやロロ ピアーナに並び、世界3大ミル(毛織物工場)と称される。豊富な水資源により古くから繊維・織物産業が根付いてきた環境において、常に最高級の原料を使用し、最新設備と技術に基づいた一貫体制の下で生産が行われる。梳毛織物においてはスーパー120's~210’s(17.5~13.0マイクロン)クラスの最高級原毛を使用したものづくりを最も得意としており、織物の繊細さの表現においては他を圧倒する。
スーツスクエアは、なぜフラテッリ・タリア・ディ・デルフィノとタッグを組むことにしたのか。その理由について、商品企画を担当する八田智弘氏に聞いた。
「昨今、スーツに対してカジュアルさや機能性を求める傾向が強まっていますが、一方で、自分らしい表現をかなえる、スーツ本来の魅力を深掘りする提案も行いたいと考えました。朝、鏡の前で袖をとおす瞬間に気持ちが引き締まる。会食や商談の場で、ふとした瞬間に今の自分、ちょっといいかも、と気分が上がる。そんな小さな高揚感の積み重ねが、その人の内面、たたずまい、表情を変えてくれるのでは。それをかなえるのが『自分をアップデートするスーツ』であり、それに必要なのがフラテッリ・タリア・ディ・デルフィノの生地なのです」
太陽光を取り入れるための三角屋根が印象的。
フラテッリ・タリア・ディ・デルフィノの工場は、ミラノの北西、ピエモンテ州ストローナにある。スイスに近く、良質な水源を持ち、イタリア一の生地の名産地として発展してきた。
「エクセレンス・イタリア」を標榜
「ようこそ、フラテッリ・タリア・ディ・デルフィノへ」と言って出迎えてくれたのは、セールス&マーケティングディレクターのウンベルト・パコット氏。その歴史、生地づくりへの思いを聞いた。
「遠く昔に遡り、1903年、このストローナの地で私たちのストーリーは始まりました。デルフィノ・タリアによって紳士服地メーカーとして生まれ、イタリアンテーラードの文化と深い関係を築きながら、創業以来、そのDNAを絶やすことなく最高級の生地を織り続けてきました。今日まで、エクセレンス・イタリアの言葉が意味するもの、つまりイタリアの伝統に基づく、職人技と感性を融合した生地を100年以上もの間、つくり続けてきたことが、偉大な財産であり、私たちが何者なのかを示すものになっています。創業の地であるストローナに深く根付き発展してきた私たちは、いまでもストローナでの生産を100%維持しています。その情熱が、妥協のない品質へのこだわりや環境に関する研究、積極的な設備投資や海外取引の拡大などをもたらし、私たちの継続的な成長に繋がっていきました」
「フラテッリ・タリア・ディ・デルフィノの発展は、常に地元ストローナの職人たちとともにありました。父から子へとその技術は継承され、織工だけではなく、他の部署でも私たちのストローナの工場で受け継がれてきたのです。ジェネレーション・トゥ・ジェネレーション、それは私たちの大きな強みになっていると思います」
「カルシウムをほとんど含まない、ストローナ渓流の純粋な水もまた、私たちが守るべきかけがえのない財産です。生地づくり一本で歩んできた私たちは、これからもその水質保全に全力を捧げます。ビエラ地区で先駆けとなったエネルギー効率を最大化させる全平面工場もシンボルの一つで、工場全面に配備した太陽光発電などに繋がっています。自然との共生、それは100年以上も昔から私たちが紡いできた哲学です」
「エクセレンス・イタリアに終わりはありません。時代とともに変化し、進化していくものです。私たちが情熱を込めて生地とともに歩んできた年月と同じように、その先も私たちの姿勢は変わらないでしょう。今後、ますます希少になっていく産業なのかもしれませんが、天然繊維産業というすばらしい伝統とともに、また進化させながら、この先も"最高の生地"を皆様に届け続けます」
フラテッリ・タリア・ディ・デルフィノを支える、セールス&マーケティングディレクターのウンベルト・パコット氏。
終わりなきエレガンスの追求
「私たちの生地デザインは社内に属するクリエイティブチームが担当し、歴史に裏打ちされたテーラーテイストな感性と時代のマーケットトレンドを引率していくという意識を、絶妙なバランス感覚で融合させたコレクションを生み出しています。こうして生まれたアイディアを、伝統的な職人技と近代的な最新技術を国内最高水準で併せ持つ工場で、形として表現します。最高級梳毛原料はオーストラリア、カシミヤは内モンゴル、モヘヤは南アフリカから輸入。高級感あふれるしなやかな風合いと発色のよさ、そして華やかな色使いや上品な柄が特徴です」
そう話すのは生地のデザイン担うクリエイティブチームのチーフ、ステファノ・ボレッロ氏。
「スーツスクエアが私たちに求めているのは、スーツの原点回帰だと思いました。スーツの美意識を新たに提案するために必要だったのが、私たちのエレガントな生地だったのです」
フラテッリ・タリア・ディ・デルフィノのチーフデザイナー、ステファノ・ボレッロ氏。
ステファノ・ボレッロ氏のデスク。コンピューターグラフィックスを用いて、生地の緻密なデザインを行う。
歴史あるフラテッリ・タリア・ディ・デルフィノのアーカイブを保管する部屋。近々、改装を行う予定。
過去の生地見本を手に取りながら、お互いの意見を擦り合わせて、次の別注企画を進行する。
美意識をまとう、新たなスーツの選択肢
今回の別注生地はユニバーサルランゲージが創業した2004年のアーカイブをベースとして、現代的にアレンジを加えた。3柄7色で展開され、フラテッリ・タリア・ディ・デルフィノらしい豊かな感性が表現されている。通常のビジネスシーンはもちろん、パーティーのようなシーンでのドレスアップにもふさわしい仕上がりだ。まさに、気分を上げてくれる「自分をアップデートするスーツ」と言えるだろう。
こちらのスーツは原毛1本1本の繊維が細いスーパー120'sウールを使用し、通常よりもライトウェイトに織り上げることで、オールシーズン対応をかなえている。生地の光沢となめらかさを高める独自の仕上げにより、見た目、肌触りともに際立つラグジュアリー感を表現した。スーツ各65,890円、ネクタイ各6,589円、その他参考商品
別注生地の証しとして、ジャケットの内側にはダブルネームのタグがつく。さりげない特別感が魅力的だ。
Direction/Teruhiro Yamamoto(YAMAMOTO COMPANY)
Edit/Kenji Washio
Photograph/Mitsuya T-Max Sada, Masanori Akao(whiteSTOUT)
Styling/Kohei Kubo
Hair/Kazuya Matsumoto(W)