美しい時計

小さい、薄い。これが、いま欲しい時計の条件。[男の服飾モノ語り]

2017.07.10

写真・図版 山本晃弘

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スマホがあれば腕時計は不要。そう考えているとしたら、すぐにその考えを改めたほうがいい。ビジネスマンにとっての腕時計には、時間を確認すること以上の意味があるからだ。20~50代のビジネスマン200人を対象にしたアンケート(アエラスタイルマガジンがマクロミル社に委託し、2017年5月に実施)からも、そのことが読み取れる。「腕時計は必需品だと思うか?」という直球の質問に対して、87%ものビジネスマンが「思う」と答えている。理由は明快だ。「会議中にスマホで時間を確認するよりも腕時計を見るほうがスマートだと思うか?」という問いに、81%が「思う」と回答。打ち合わせの最中にスマホをチェックする行為がマナー違反であることは、どうやらビジネスマンの共通認識であるようだ。

「腕時計は男性が身に着ける唯一のアクセサリーである」とよくいわれるが、これも今回のアンケートで実証された。「仕事中に身に着けているアクセサリーは?」という質問に対して、腕時計は90%で断トツ。ほかのアクセサリーはもちろん、結婚指輪34%をも、はるかに上回る数字である。

多くの腕時計の新モデルは、毎年1月に開催される「ジュネーブサロン(SIHH)」と、3月開催の「バーゼルワールド」というスイスの時計宝飾展示会で発表。そして夏のボーナスが出るいまの時期は、日本に多くの新作が入荷するタイミングである。今年の特徴は、ケース径のサイズダウン。少し前までは、直径45mmを超えるデカ厚時計の人気が高かったが、ここにきて潮目はすっかり変化。直径40mmを下回る、小ぶりな新モデルが目立つ。

例えば、ロンジンの「フラッグシップ ヘリテージ 60周年記念モデル 1957‐2017」のケース径は38.5mm。1950~60年代の復刻モデルだが、小ぶりでシンプルな文字盤が、いまエレガントに感じられる。

バーゼルワールドの盟主といってもいい、オメガ。控えめなサイズの「スピードマスター 38mm」は、メンズとレディースのユニセックスで共有できることをうたっている。

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市場のニーズが先か、ブランドの提案が先か。実は先のアンケートでも、控えめをよしとする傾向がうかがえる。「腕時計をスーツに合わせるときに最も重視するポイントは?」という問いに、33%のビジネスマンが「派手すぎない控えめなデザイン」と答えているのだ。かつてファッション誌が「イバリが効く」とはやし立てた大型の腕時計が、ビジネスシーンでは下品に見えることを消費者は気づきはじめている。

そういった意味では、日本の雄シチズンが提示する「薄さ」という新しい価値観は、機能的かつエレガントなものを求めるこの時代に、ひとつの回答を示しているように思える。「エコ・ドライブ ワン」の薄さ1mmのムーブメントと、ケース厚2.98mm(設計値)は衝撃的ですらある。

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キズに強いハイテクセラミックスで人気の高いラドーの「トゥルー シンライン カラーズ」は、ケース厚4.95mmに収まる極薄クオーツを搭載。素材づかいと相まって、近未来的な印象を残す。

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時計のトレンドから、その時代その時代の理想の男性像を探ることができる。こう考えると、今年の新作からは、実力があっても控えめな男性がいま理想とされていることがわかる。

以前、ハリウッドでも活躍する日本人男優をインタビューしたときのこと。「映画がクランクアップするたびに腕時計を購入する」というエピソードを教えてもらった。彼に学ぶならば、ビジネスマンには、大きな仕事を終えたときに、自分へのご褒美に腕時計を購入することを提案したい。就職したから買う。部長になったから買う。もちろん、そういったことでもいいだろう。腕時計を見るたびに、その瞬間の時刻はもちろんのこと、自分自身の人生時間に思いを馳(は)せることができると思うからだ。

「ロンジン フラッグシップ ヘリテージ 60周年モデル 1957‐2017」。自動巻き、ケース径38.5mm、今秋発売予定、世界限定1957本、¥242,000(ロンジン/スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7351)

「オメガ スピードマスター 38mm」。自動巻き、ケース径38mm、¥520,000(オメガお客様センター 03-5952-4400)

「シチズン エコ・ドライブ ワン」。光発電エコ・ドライブ、クオーツ、ケース径39mm、ケース厚2.98mm(設計値)、今秋発売予定、¥400,000(シチズンお客様時計相談室 0120-78-4807)

「ラドー トゥルー シンライン カラーズ」。クオーツ、ケース径39mm、ケース厚4.95mm、¥210,000(ラドー/スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7330)

掲載した商品はすべて税抜き価格になります。

プロフィル
山本晃弘(やまもと・てるひろ)
AERA STYLE MAGAZINE編集長
「MEN’S CLUB」「GQ JAPAN」などを経て、2008年4月に朝日新聞出版の設立に参加。同年11月に、編集長として「アエラスタイルマガジン」をスタートさせる。雑誌の編集の傍ら、朝日新聞や朝日新聞デジタルに掲載する、ファッション&ライフスタイル系の広告コンテンツや動画の制作も手掛ける。現在はトークイベントを通じて、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南するアドバイザーとしても活動中。

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