旬のおすすめ
フィレンツェの異国人 その2 ケネスフィールド
2017.08.02
2011年にブランドをスタート。1980年代以降のアメリカントラディショナルをベースに、デザイナーの草野健一さんが歴代のさまざまな国や地域の文化に着想を得る。草野さんはバイヤーの経験があり、メーカーとマーケットをつなぐ視点を有する。
ピッティ・ウォモの来場者の国別シェアでは、トップのドイツに続くのがなんと日本。ピッティはビジネスの場としても注目を集め、海外に進出する国産ブランドの試金石にもなっています。こうした動向は昨年、雑誌『アエラスタイルマガジン』でも取り上げましたが、そのときに登場いただいたのがケネスフィールドの草野健一さんです。
注目の新作では、オイルドコットンのフィールドコートをシンプルさこそ実用機能と捉え、ボタンレスのストラップ留めに仕立てました。また同素材のベストはプルオーバーで背にインバーネットプリーツを入れ、着物の懐のような大きなポケットを備えます。まるでヘンリー・D・ソローの「森の生活」を思わせ、トラッド系ファッションとの相性も優れます。
ブランドの真骨頂ともいえるジャケットは、ナローショルダーのボックスシルエットに3つボタンやパッチポケットを備えた、まさにアメリカントラッド。これは1920年代、アメリカの東海岸に渡った英国人がロンドンに戻り、仕立てた古着をモチーフにしています。こんな物語を楽しめるのもケネスフィールドならでは。草野さんは言います。
「数年前までは日本人の感性や編集力が注目を集めていましたが、ネットの浸透でそこに日本のイニシアチブはもうありません。消費されてしまうような情報ではなく、よりマニアックな思い入れや思い切りが求められ、そこで強みを発揮するのが個人の感性。熟練の技術であり、手作りの技法なんです」
プロフィル
柴田 充(しばた・みつる)
フリーライター。コピーライターを経て、出版社で編集経験を積む。現在は広告のほか、男性誌で時計、クルマ、ファッション、デザインなど趣味モノを中心に執筆中。その鋭くユーモラスな視点には、業界でもファンが多い。
Photograph:Mitsuya T-Max Sada
text:Mitsuru Shibata