調べ・見立て(見立て)
編集長の「見立て」。夏でも「忍ばせタイ」でクールドレスアップ!
2017.08.25
暑い季節は、まだまだ続きます。環境省は5月1日から9月30日までをクールビズ期間として推奨していますが、企業によっては、10月いっぱいまでをクールビズとしているところもあるようです。
暑さ真っ盛りの8月14日から、このサイトで「クールビズの季節、ネクタイを着用しますか?」という「しらべ」を実施しました。1週間経った21日現在の回答は「はい33%、いいえ67%」となっています。さて、この結果をどう「見立て」たらいいのでしょうか。
そもそもクールビズがスタートしたのは、2005年のこと。当時の環境大臣であった小池百合子氏の「室温設定は28度」という掛け声で始まりました。CO2削減ということが大命題であったわけですが、加えて、夏場の消費喚起の一助にというファッション業界や百貨店業界の思惑もあったと言われています。それ以前にカジュアルフライデーの取り組みが注目されていたこともあり、クールビズが始まった当初は、ファッション業界もにぎわいました。例えば、接触冷感の機能をうたうクールマックス素材のジャケットがヒットして話題になったのも、このころのこと。
昨今では、クールビズがビジネスウェアのカジュアル化に拍車を掛けて、結果的にファッション業界にとってマイナスだったのではないかという考え方が主流になっています。もっとも大きなダメージを受けたのは、なんといってもネクタイのメーカー。いつの間にか、ノーネクタイであることがクールビズの証明であるかのようにとらえられてしまったのです。東京ネクタイ協同組合の和田匡生(わだ・ただお)理事長に聞いてみると「夏のネクタイの売り上げはクールビズ以前と比較すると半減」と、その深刻さがうかがえます。一方で「ここ数年は、行きすぎたカジュアル化への反動もあって、落ち込みがストップしているショップもあります」とも。
こうした最近の傾向をかんがみると、今回の「しらべ」で「クールビズの季節でもネクタイを着用する」と答えたビジネスマンが3割以上いた結果にも、説明がつきます。そもそもクールビズのCOOLには「涼しい」と同時に「かっこいい」という意味がありました。ネクタイには、男性をかっこよく見せる機能があります。約3割のビジネスマンは、ネクタイをすることのそういった機能に気がついているようです。
厳しいことを言えば、クールビズで「涼しさ」を感じるべきは、自分自身ではなく、相対するビジネスの相手であるはずです。自分自身が多少がまんしてでも、相手に涼しい気持ちになってもらうのが仕事の心構えというもの。ノーネクタイのシャツから汗のにじんだ素肌を見せるよりも、ブルーやグレーの寒色系のネクタイをしているビジネスマンのほうが、相手も涼感が得られて、好感をもつことでしょう。
ビジネスマンのなかには、クールビズならではの着こなしを楽しむ人も増えています。前出の和田理事長によると「以前は一部のおしゃれな方だけが購入していたニットタイが、カジュアル感が受けて、夏の売り上げを支える存在になりつつある」とのこと。あるいは「ノータイで物足りなくなったビジネスマンが、ポケットチーフを購入する例もある」というから、心強い限りです。
以前掲載した「見立て」第1弾の記事で、クライアントとの突然のミーティングに備えて「置きジャケット」をもつべしと書きました。今回は、もっときちんとしたミーティングなどに臨むときのための「置きネクタイ」ならぬ「忍ばせタイ」を推奨したいと考えます。ビジネスバッグに忍ばせておくネクタイは、カジュアル感のあるニットタイや、見た目も手触りも涼しげなシャリ感のあるフレスコ素材で。色は、ネイビーやブルーの寒色系のソリッド(無地)タイがおすすめ。
結論。夏でも、いざというときには「忍ばせタイ」でクールドレスアップを。これが、見立て人・山本からの提案です。
プロフィル
山本晃弘(やまもと・てるひろ)
AERA STYLE MAGAZINE編集長
「MEN’S CLUB」「GQ JAPAN」などを経て、2008年4月に朝日新聞出版の設立に参加。同年11月に、編集長として「アエラスタイルマガジン」をスタートさせる。雑誌の編集の傍ら、朝日新聞や朝日新聞デジタルに掲載する、ファッション&ライフスタイル系の広告コンテンツや動画の制作も手がける。現在はトークイベントを通じて、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南するアドバイザーとしても活動中。
Illustration:Akira Sorimachi