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クラシックを再定義する。
「ダンヒル」新クリエイティブ・ディレクター
マーク・ウェストンの見据える未来

2017.08.30

写真・図版 佐久間裕美子

写真・図版

ダンヒルの新クリエイティブ・ディレクターに就任したマーク・ウェストンを、いち早くインタビュー。バーバリーのディレクターであるクリストファー・ベイリーの右腕として敏腕を振るってきたウェストン氏は、ダンヒルの未来をどのように見据えているのか。

クラッシク、ヘリテージ──、どれもラグジュアリーメゾンの間では使い古されつつある単語である。けれどこの5月に<ダンヒル>のクリエイティブ・ディレクターに就任したマーク・ウェストンにとって、こういう言葉はまったく別の概念を意味する。
「僕にとってクラシックは、オールド・ファッションという意味はもたない。僕にとってのクラシックは、タイムレスであるということ、そして未来を見据えながら服をつくるということ。つまり、将来、クラシックなものとして残る服をつくりたいんだ」

時代に流されないということは、ウェストンにとっては、未来志向であること。英国紳士に愛されてきた<ダンヒル>の歴史を尊重しながら、最新の技術を採り入れて、現代の紳士たちのライフスタイルをサポートする服をつくること。
「ファッション・ブランドをデザインしているという意識はない。機能を提供しているという意識でやっている。ファッションを表現するのではなく、いわば『静かなデザイン』を目指しているんだ」

ウェストンが意図するのは、それは、現代紳士のワードローブを、ベーシックでありながら、色やプロポーションで表現したアイテムを用いて現代性を構築すること。1シーズン着たら古くなるものではなく、耐久性があり、何年にもわたり愛されつづける服を作ること。

<バーバリー>から<ダンヒル>に移籍するにあたり、まずはブランドのアイデンティティーについて考えた。「クラシックで、クオリティーを提供し、職人のクラフトを大切にするブランドだと思っていた。そこにイノベーションを採り込みたかった」

クリエイティブ・ディレクターに就任したとき、ウェストンの起点になった問いは、「<ダンヒル>がいまの市場で『レリヴァント(影響をもつ)ブランド』であるためには、どう発展するべきか?」だった。そしてその問いに対するウェストンの回答は、「英国のブランドとしてのアイデンティティーを有し、明確な視点があって、一貫性があり、機能性を提供するラグジュアリー・ブランドを目指すこと」だった。

英国のアイデンティティーは、ヘリンボーンのコート、キルトのジャケットといった英国らしいアイテムや、肩のコンストラクション、細めのシルエットやラペルといったテーラリングの伝統を維持することで表現する。ラグジュアリーは、手縫いのボタンホールやカシミアといった素材の採用の仕方で表現する。そして動きやすさを重視したコンストラクション、リバーシブルのジャケットや取りはずしできるライナーなどで、機能性と多様性を追求する。こうやって多方向から「現代のラグジュアリー」を再考するアプローチは、価格に対して、より多くのバリューを求める消費者の考え方のシフトを厳しく考えた結果でもあった。
「ラグジュアリーは、いつしかアクセシブルでなくなってしまった。いまの世の中、顧客たちにはたくさんの選択肢が与えられる。低い価格帯の商品からハイエンドのブランドまで、選択肢は無限にある。そんななかでのブランドとしての責任は、顧客が支払う価格に対して、最大のバリューを提供すること。つまりは顧客をリスペクトするということだと思っている」

最後に、ウェストンがイメージするダンヒルらしい男性像を尋ねた。
「静かだけれど、揺るぎない自信があって、誠実で善良な男性」という返事が返ってきた。デザインの現場で、「男性像」を尋ねて、男性の精神性を表現する言葉が返ってきたことは、これまでなかった気がする。ウェストンは、スタイルを提案することを通じて、現代男性のあるべき姿を提案しようとしているのだ、と感じさせる回答だった。

プロフィル
マーク・ウェストン
バーバリーにおいてメンズウエアのシニア・バイス・プレジデントとして成功するビジネスの基盤と完璧な作品の哲学を確立。2017年5月、ダンヒル クリエイティブ・ディレクターに就任。

Photograph:Naoko Maeda

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