カジュアルウェア
ファッション トレンド スナップ9
タックパンツ、いまが買い?
2017.09.15
最近のトレンドのなかで、欠かせないのがタックパンツ。
今年の春夏から日本のショップでもかなり見かけるようになりましたが、本格的な流行は今年の秋冬になりそうです。
長らくパンツは、ノータックでスリムなシルエットが主流でしたが、ここにきてその潮目が変わったという感じです。
とは言ってもノータックパンツが時代遅れになったのかというと、そうではありません。パンツの種類のバリエーションが増えたと考えてください。
この御仁は、イタリアのパンツ専業ブランドPT01のディレクターのドメニコ・ジャンフラーテさん。
パンツのトレンドをいつも作り出してきたこのブランド。そのディレクターがはいているパンツが、タックパンツなのですから、最旬であることは間違いありません。
ポイントは、シルエット。
10年以上前にあったタックパンツとは、明らかに腰まわりや裾幅が違います。当時は、タックパンツといえば腰まわりがぶかぶかで、裾幅も24cm~21cmはありました。
最新タックパンツは、ドメニコさんがはいているように腰まわりから太ももにかけてはややゆったりで、膝下は細く(とはいっても19cmくらい)なっています。
見た目はどちらかといえば、今までのノータックパンツに近い感じです。
ドメニコ・ジャンフラーテさんは、南イタリアのプーリア州の出身で元サッカー選手という経歴の持ち主。その後は、ファッションの仕事を地元で始め、ピッティのスナップでは常連の人物。
話がそれますが、プーリア州と聞くと一般的には世界遺産のアルベロベッロが有名ですが、ファッション関係者からは、ジャケットやスーツのブランドのタリアトーレやパンツのブランドのベルウィッチなど新進気鋭のブランドの本社があることで注目されています。
こちらのパンツは、今年の秋冬の新作のPT01のウールパンツ。¥37,000 (問/PT JAPAN 03-5485-0058)
トレンドがてんこ盛りされた一本です!
タックは1タックで、従来よりも股上が深め。股下もくるぶしが見えるくらいではくようにはじめから裾上げされています。
裾の折り返しは、5cm幅。
タックパンツをスナップのようにはきこなすには、くるぶし丈&極太折り返しは欠かせないポイントです。
もちろん、普通の丈ではいても問題ありませんが、トレンド感は半減します……。
そして、ベルトを通さないベルトレスと呼ばれる仕様になっているのも見逃せません。
実はパンツの歴史をひもとくとこのベルトを使わない仕様のほうが古くからある仕様なので、温故知新的なディテール。
昔は、ベルトなしの場合はゆったりぎみのウエストでサスペンダーでパンツを吊ってはくのが一般的だったようです。
しかし、このPT01のパンツは、ウエストはジャストかサスペンダーなしでもずれ落ちないくらいのややキツめにはくのが正解。
上の写真でドメニコさんはサスペンダーを付けていますが、よくよく見るとウエストはかなりタイト。
彼は、サスペンダーはパンツを吊るための道具ではなく、着こなしのアクセント的に使っているのでしょう。
PT01のパンツは、裏側のつくりも凝っています。腰裏の生地がレジメンのトラッドな高級生地を使っていますし、縫製もとても丁寧。
見えない部分にも細かな工夫がなされていますが、こうしたところにドメニコさんのモノづくりへの情熱が伝わってきます。
見かけは、かなり派手(シャツのボタンが溝内くらいまで開いて、腕にはタトゥー)でナンパな感じですが、モノづくりに関しては超硬派なのです!
こちらのお二人は、ビジネスでもはけるタックパンツの例。
どちらもベルトをしていませんね。そして、シルエットも細め。
股下の丈は、やや長めですがジャケットと合わせることを考えるとこのくらいがベストです。
日本でもこのくらいならタックパンツにトライできるのではないでしょうか。
個人的にはビジネスシーンでタック入りパンツは、これから増えていくと思っています。それは、トレンドだからという理由だけではなく、明らかにタック入りパンツのほうがはいていて楽だし、スーツスタイルがエレガントに見えるからです。
秋冬のスーツを新調したいと思っている方は、選ぶときにパンツに浅いタックが入っているものを選ぶことをおすすめします。
間違っても、昔のタックパンツの付いた安いスーツをネットで買わないように。
まだまだネット上では古いスーツが出回っているので、タックパンツ購入のときは、必ずショップで試着をしてシルエットとタックの深さをチェックしてください!
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもマネできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウォッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi