紳士の雑学
四季折々、素材をたしなむ。
2017.10.25
近年の日本では、春と秋という最も過ごしやすい気候の時期が短くなり、その代わり寒い冬と酷暑の夏の期間が長くなってしまった。それでも季節に似合った素材の洋服を身につけるのは楽しいことのひとつだと僕は思う。
スーツやジャケットに用いられる、毛織物にもいろいろあって、さらりとした感触が夏に向くキッドモヘア地もあれば、極細の繊維の光沢ややわらかな感触が心地よい、タスマニア産などのメリノ系のウールも秋から春までの長い季節に対応できるだろう。
秋にはやはり少し厚手のツイードの、彩り豊富な格子柄を楽しみたい。そして遠目にはツイードに見えながら、実はカシミアなどという少し上級の生地の楽しみ方もある。
布地を楽しむ技を身につければ、着ることがさらに楽しいものとなるだろう。僕はやがて訪れる次の季節の服装計画を練りながら、ネクタイやシャツ、ニットウエアなどの組み合わせを考えて、楽しんでいるのだ。
プロフィル
松山 猛(まつやま・たけし)
作詞家、作家、編集者。映画『パッチギ』の原案となった『少年Mのイムジン河』ほか、著書多数。メンズファッション業界の御意見番でもある。
出典:永久保存版「スーツ」着こなし事典(朝日新聞出版)