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この人から買いたい。[第2回]
ランデヴーオーグローブ
前淵俊介さん
2017.11.06
再開発ですっかりつまらない街になってしまった工事中の渋谷の駅を背にして、明治通り沿いを南に下って歩くこと数十分。並木橋の交差点を越えてさらに交番のある交差点を左手に少し上がったところにその店はある。「rdv o globe」と書いて「ランデヴーオーグローブ」と読む。「グローブで逢いましょう」という名のセレクトショップだ。
わざわざここまで歩いてこなければ逢えないこの距離感が、往年の渋谷の道玄坂や青山にあったショップを探し歩いて回っていた世代には逆になんとも心地いい。
それもそのはずで、オーナーの前淵俊介さんはそうした時代からバイヤーとして世界中を飛び回って数々の有名無名ブランドを買い付けてきた人物。70年代後半に渋谷の道玄坂にあったシップスの前身「ミウラ&サンズ」からスタートして、銀座の「シップス」、代官山にあった「マルセル・ラサンス」、青山にあった「ル・グローブ」。前淵さんのバイヤーとしての経歴は、そのまま日本のインポートファッションの歴史と重なるのだ。ちなみに店名はかつての職場であったシップスから青山のル・グローブの名を譲り受けて、前淵さんと親交の深いパリのマルセル・ラサンスの奥さまが名付けてくれたのだそうだ。
「長年この業界でやっていますが、これは世界的に言えることですけど、最近のセレクトショップにはコアさがなくなりました。どこも似たようなセレクトで、昔みたいにバイヤーが面白いブランドを見つけて買い付けてきて、お店でお客さんにそのブランドの面白さを伝える。そんなことがどんどんできなくなってきている気がします。だったらもう気楽に、ここでお客さんとコーヒーでも飲みながら自分が面白いと思って買い付けたブランドや好きなスタイルを提案する。そんなコアなショップをやりたいと思いまして」
まるでパリの蚤(のみ)の市、クリニャンクールのアンティークショップのような広い店内は、もとはコンビニエンスストアだったという。前淵さんがフランス、イタリア、アメリカ、アジア各国から買い付けてきた有名無名ブランドの服や靴、オリジナルレーベルの服、ユースドウエアや雑貨、書籍まで、すべてが何の違和感もなくおしゃれにミックスされてディプレーしてあり、なんと夜はワインも飲めるカフェスペースまである。
アメカジから、フレンチアイビー、モードまで。日本のインポートファッションの流れを知り尽くした前淵さんがたどり着いたスタイルは、カジュアルとモードのミックスだ。なかでもビクトリアンスタイルにワークとミリタリーをミックスしたオリジナルレーベル「ランデヴーオーグローブ」の服は、国内はもとより海外のセレクトショップでも人気があり、いまや“マエブチスタイル”と呼んでもいい独特のスタイルは、おしゃれを知り尽くした大人の男たちにファンが多い。「気軽にコーヒーでも飲みに来てください」と前淵さん。大人のカジュアルを教えてもらいにランデヴーオーグローブへ逢いに出かけてみよう。
おすすめ01/ランデヴーオーグローブのダブルジャケット
70年代にはやったダブルのジャケット風な、「クレオールジャケット」と名付けられたオリジナルレーベルのダブルジャケット。¥65,000
おすすめ02/ランデヴーオーグローブのパンツ
クレオールジャケットとセットアップではけるオリジナルレーベルの「スタックパンツ」。
70年代のワークパンツをモチーフにしたシルエットが新鮮。¥33,000
おすすめ03/ローンのシャツジャケット
2016年にパリでデビューした双子の新進デザイナーが手がけるブランド「ローン」のシャツジャケット。ミリタリー風なローデングリーンに独特のビッグシルエットが特徴。¥50,000
おすすめ04/ローンのベスト
パリの新進ブランド「ローン」のフィッシングベストをモチーフにしたビッグベスト。オーバーサイズでコートやジャケットの上から合わせて着たい。¥62,000
おすすめ05/ランデヴーオーグローブのジャケット
オリジナルレーベルの今季の新作ジャケット。シルエットはヨーロッパのワークジャケット風、ポケットの縫い目から出た白いハギレがちょいモード感を出している。¥68,000
おすすめ06/ランデヴーオーグローブのパンツ
オリジナルレーベルの新作ジャケットとセットアップではけるパンツ。ヒップに余裕をもたせたモードなシルエットだが、はいてみると意外と誰にでも似合う。¥36,000
おすすめ07/ランデヴーオークローブのショートパーカー
ナイロン100%のオリジナルパーカー。色は黒のみ。アームホールもきつめで、着こなしはアウターではなくジャケットのインナーとして重ね着する。¥48,000
おすすめ08/ランデヴーオーグローブのアーミーパンツ
同レーベルでは定番のサルエルパンツ。モードなシルエットだが実は「ターキッシュパンツ」と言ってメンズ服飾史的には昔からあるデザイン。はくと意外と誰にもでも似合う。¥36,000
おすすめ09/フォームデエクスプレッションのコート
アルマーニ、ダナキャランで経験を積みペルージャを拠点に活躍する韓国系イタリア人デザイナーによる新進ブランド「フォームデエクスプレッション」から、同ブランドの特徴でもあるドレープを生かしたチェスターコート。¥140,000
おすすめ10/フォームデエクスプレッションのシャツ
今季の新作シャツ。ぜいたくに生地を二枚重ねしたミニマムなデザインで、独特のカッティングとパターンでストレスフリーな着心地。¥58,000
おすすめ11/フォームデエクスプレッションのパンツ
今季の新作パンツ。クラシックな見た目ながら、膝下の立体的なカッティングやバッグポケットの角度、独自に織られた生地によってモードな着こなしが楽しめる。¥86,000
おすすめ12/マルセルの短靴とブーツ
ミラノ発の「マルセル」は熟練職人の技とモードなデザインを融合させてファッショナブルかつクォリティーの高いシューズを作る稀有なブランド。継ぎ目を極力なくしたミニマムなデザインのプレーントウとブーツ。短靴¥105,000、ブーツ¥115,000\
おすすめ13/ランデヴーオーグローブのセーター
セイラーのディテールを採り入れたオリジナルレーベルのミドルゲージニット。ワイドボディーでアームを大きく取り腕まわりはタイトフィットにした独特のシルエット。¥45,000
おすすめ14/レナードプランクのハット
イタリア発のハットブランド「レナードプランク」。ハンドメイドと無縫製による芸術的な美しさは一生もので使うほどに頭になじむ。ちなみにオーナーの前淵氏のトレードマークでもある。(上)¥30,000、(下)¥32,000
おすすめ15/アカ族のバングル
シルバーアクセサリー好きな前淵氏が自らタイに旅して交渉してきた、少数民族が暮らすゴールデントライアングル周辺のアカ族が手作りするシルバーバングル。ちなみに某メゾンブランドでは同等のものが数倍の値段がする希少な一点物。(上)¥25,000、(下)¥24,000
おすすめ16/アンティークのピンバッジ
オーナーの前淵さんがパリのアンティークショップで買い集めてきたビンデージのピンバッジ。どれも一点物だ。各¥500
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
プロフィル
いであつし(いで・あつし)
数々の雑誌や広告で活躍するコラムニスト。綿谷画伯とのコンビによる共著『“ナウ”のトリセツ いであつし&綿谷画伯の勝手な流行事典 長い?短い?“イマどき”の賞味期限』(世界文化社)は、業界関係者にファンが多い。
Photograph:Akio Sekine
Text:Atsushi Ide