旅と暮らし
「ラヴィン・ユー」のリリースから40周年を記念
ジャネット・ケイが5年半ぶりにビルボードライブに登場
2017.11.08
「ラヴィン・ユー」という曲がある。日本では結婚披露宴などで使われることも多かった有名曲で、知らない人はそんなにいないだろう。オリジナルは、5オクターブ半という広い声域をもったシカゴ出身の女性歌手ミニー・リパートンが歌っていたもの。スティーヴィー・ワンダーがほれ込んでプロデュースも手がけたデビュー・アルバム『パーフェクト・エンジェル』からシングルカットされ、1975年~1976年に全米で大ヒットした曲だが、ミニーは1979年に31歳の若さで亡くなってしまった。
その名曲「ラヴィン・ユー」を1977年……つまりミニーが生きていたときにいち早くカヴァーしたのがロンドン生まれのジャネット・ケイで、穏やかなメロディーがレゲエのアレンジにぴったりハマり、そのカヴァーはレゲエ・チャートで1位を獲得。ジャネットはその少し前まで学校で秘書の勉強をしていたのだが、友人に招かれてレゲエ・バンドのアスワドのリハーサル現場に行き、そこで彼女が口ずさんでいるのを聴いたトニー・ガッド(アスワドのメンバー)が甘い声に感動してアルトン・エリス(ロックステディという音楽を確立したジャマイカの偉大なシンガー/ソングライター/プロデューサー)に紹介。アルトンのプロデュースで録音されたのが「ラヴィン・ユー」で、そのいきなりのヒットによってジャネットはシンガーとしての道を歩みだしたのだった。
1979年には「シリー・ゲームス」がヨーロッパ全土で大ヒットし、大半の曲の歌詞を自身で手がけた1stアルバム『カプリコーン・ウーマン』を出した段階でもうジャネットは“クイーン・オブ・ラヴァーズ・ロック”と呼ばれるように。その後も順調な活動を続けたが、80年代半ばごろからはしばらく音楽活動を離れ、女優として舞台に立ったりしていた。が、90年代に入ると、彼女の人生は面白い転がり方をするようになる。91年に新たに録音し直した「ラヴィン・ユー」を追加収録したベスト盤『LOVIN’ YOU: BEST OF J.K.』を日本のソニー・ミュージックが大々的なプロモーション展開によって特大ヒットさせ、日本にちょっとしたラヴァーズ・ロック・ブームが起きたのだ。それによってジャネットは本格的に音楽活動を再開。自分が初めて彼女にインタビューしたのは確か90年代中ごろだったが、「イギリスはもうレゲエが廃れてラジオでもかからないから頑張りようがないけど、日本でCDを出させてもらってライブをしていると、日本の観客たちがいかにレゲエのよさを理解して楽しんでくれているかがよくわかる。日本のみなさんには感謝しかないわ」と暖かな笑顔で言っていたのをよく覚えている。
「ラヴィン・ユー」はそれまでもシャニース、ジュリア・フォーダムなどさまざまな歌手がカヴァーしてスタンダード的な曲となっていたが、91年にジャネット・ケイが日本で再ヒットさせてからは、アン・ルイス、五島良子、滴草 由実、Monday満ちる、MISIA、押尾コータロー、ACO(RUDEBWOY FACE feat.ACO)といった日本人アーティストが次々にカヴァー。ジャネット・ケイ自身はといえば、デビュー25年目の2003年にもオマーのプロデュースで再々レコーディングしたものだった。この曲は、だからミニー・リパートンの代表曲として認識している人に匹敵するくらいジャネット・ケイの代表曲として認識している人が多く、40代以下の世代となると、もともとジャネット・ケイの曲だと思っている人も多かったりするくらいだ。
さて、2018年1月。ジャネット・ケイが5年半ぶりにビルボードライブ(東京と大阪)で公演を行う。彼女が最初に「ラヴィン・ユー」でシーンに登場したのが1977年。そのリリースから40周年を記念したうれしい来日公演であり、甘さと温かさが真ん中にある歌唱表現のますます熟した声によって「ラヴィン・ユー」がどのように響くか、とても楽しみだ。
ところで、この曲。結婚披露宴でよく使われることからもわかるとおり、最愛の男性へのラブソングとして捉えられているが、もともとはミニー・リパートンが自分の子どもの子守歌として作詞したもの。そんなことも踏まえてジャネットの生歌を聴くと、また違った感慨が湧くかもしれない。
プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。ブログ「怒るくらいなら泣いてやる」でライブ日記を更新中。
ジャネット・ケイ
celebrating 40 years of 'LOVING YOU'
【東京公演】
公演日/ 2018 年1月7日(日)
料金/ サービスエリア9,800円 カジュアルエリア8,300円(カジュアルエリアのみワンドリンク付き)
問い合わせ/ 03-3405-1133
所在地/ 〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガーデンテラス4階
【大阪公演】
公演日/ 2018 年1月9日(火)
料金/ サービスエリア10,800円 カジュアルエリア9,800円(カジュアルエリアのみワンドリンク付き)
問い合わせ/ 06-6342-7722
所在地/ 〒530-0001 大阪市北区梅田2-2-22 ハービスPLAZA ENT 地下2階
その他詳細についてはオフィシャルウェブサイトにて
PC/ www.billboard-live.com
Mobile/ www.billboard-live.com/m/