カジュアルウェア
ファッション トレンド スナップ14
スーツ誕生の地ロンドンで、品格&存在感のあるスーツを発見!!
2017.11.10
日本では、80年代のバブルのころに大流行したダブルスーツ。
肩幅が広く、身幅がゆったりとしたイタリアテイストのダブルスーツを芸能人からビジネスマンまで着ていましたが、その後は着ている人を見かけなくなりました。
そんな、ダブルスーツが今年の秋冬は、昔とは違うシャープなデザインになりセレクトショップなどのウィンドウを飾るようになっています。
この流れは、メンズのトレンドの「ブリティシュ スタイル」と深く関連しています。
英国軍の士官などのユニホームはダブルがほとんどですし、チャールズ皇太子がダブルスーツを着ているスナップもSNSでよく見かけます。
そこで、本場ロンドンではどのようにダブルスーツを着こなしているかをチェックしてみました。
スナップしたのは、スーツの聖地サヴィル・ロー通りの周辺。
このジェントルマンは、ライトグレーのダブルスーツで前身のボタンは6個のクラシックなデザイン。
ダブルスーツの場合は、着丈とフィッティングの加減でクラシックにもモダンにも着分けることができます。
着丈はこの方のように、腕を下ろしたときに親指の関節あたりにするとモダンでスマート。
身幅のフィット感は、昔(クラシック)はおなかに少しゆとりがあるくらいがよいとされていましたが、ことダブルスーツに関してはボタンを留めたときに、引きジワが出るか出ないかくらい(写真だとややきつめ?)がいまのトレンドです。
ポケットチーフは、角を無造作に出すスタイル。色は最もベーシックな白。
この方のチーフの素材は麻だと思いますが、ここをシルクにしないほうがまとまります。
日本では、麻は夏のポケットチーフと思い込んでいる方がいるかもしれませんが、そんなことはありません。
個人的には季節に関係なく使っていいと思います。もちろん、冬は白麻は寒々しいのでウールのポケットチーフがベターですが……。
上着をよく見ると、前見のウェストに入っているダーツ(絞り線)が腰ポケットを越えてすそまで達しています。
日本では、この仕様はナポリ仕立ての特有のものとよく言われていますが、実は昔からロンドンのテーラーにあったパターンなのです。
一説によるとロンドンのパターンがナポリに伝わり伝承され、それがいまでも使われていて有名になり、逆にロンドンではこのパターンが時代遅れと感じられるようになり、一部のテーラーにしか残っていないのだとか……。
靴は茶スエードのチャッカーブーツ。
グレーのスーツは靴が黒でも茶でも似合うのがいいですね。
こちらのジェントルマンはダブルスーツ(ダークネイビーかブラック)でボタンは4個。ボウタイというところがロンドンならでは。
よ~く見ると、上着のボタンはスーツ生地を使った包みボタン。
襟に黒のシルク生地が付けられていないので、タキシードとは違いますが、かなりドレッシーなスーツです。
このコーディネートにGUCCIのホースビットローファーを合わせるというのは、かなりのハズシ技。
通常のルールならここは黒のストレートチップかプレーントウ、またはオペラパンプス。
きっとこのジェントルマンはフォーマルなスーツにトレンドとカジュアル感をプラスしたかったのでしょう。
こうした、フォーマルの着崩し(カジュアル化)は、実は昔から続く英国気質でもあると言えます。
なぜなら、いまでこそ正装のスーツですが、19世紀にモーニング(当時の外出着)のすそを切り落とした上着として誕生したもので、部屋の中で着る超カジュアルな服。それを、昼間の服として着てしまうイギリス人は、かなりのハズシの達人だったといえるからです(ちょっと強引!?)。
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもマネできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウォッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi