旅と暮らし

百人一首が日本語の教科書!?
外国人翻訳者が語る「コトバ」の世界

2018.03.27

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北斎ならぬ「西斎」という雅号をもち、日本文化と海外の懸け橋になる活動を続けるマクミランさん。日本文化の奥深さを文学、しかも百人一首から吸収したという……。

日本独特の美学といってまず挙げられるのが、「和をもって尊しとなす」でしょう。それは、言葉の使い方からもよく伝わってきます。たとえばメールを書く際、日本ではまず季節やまわりの状況、相手の様子を問う内容から始めることが多いですよね。ここには、日本人が相手を慮る気持ちが表れていると思います。和よりも正義を重んじる欧米にはないことです。

また、無常観というのも実に日本らしいと思います。西洋の美学では、美しいものを永遠にとどめておきたいとする志向があります。しかしすぐに散ってしまう桜に代表されるように、日本では儚いこともまた美しさであり、そこに価値を見いだしています。散ってしまう儚さがあるからこそ、桜は美しいという。こういう奥深いものの見方には、感銘を覚えます。

春というのは、新しい出会いの季節でもありますが、出会いを“縁”ととらえるのも日本独特のもの。実は縁という言葉は英語にはありません。ですから訳すことができないんです。出会うことを「縁を結ぶ」と言ったりしますが、出会いを縁に昇華させることで、日本人はその出会いを大切に思い感謝の念を持ちますよね。そういう価値観を大切にしてほしいと思います。

写真・図版
マクミランさんが制作している、英語版「百人一首」の札。著作同様、自身がすべての翻訳・監修を手がけている。横組みというのも、とても新鮮だ。

『百人一首』は、一人ひとりがそれぞれ一首詠んだ和歌が収められている秀歌撰です。江戸時代はベストセラーとなり、現在に至るまで多くの人に愛されています。七五調のリズム感や自然との一体感、同音異義語での言葉遊びなど、そこにはゆとりや豊かな感性を見いだすことができます。また外国人から見ると神秘的で言葉を超えたパワーまで感じるほどです。そしてこの百人一首こそ、先ほど挙げた日本人の価値観や美意識といった精神性が凝縮されています。私は日本の文化を伝えるのに、この百人一首ほどふさわしいものはないと思っているんです。

<次回の記事では、マクミランさんが百人一首を詳しく紹介します>

プロフィル
ピーター・ジェイ・マクミラン  アイルランド生まれ。東京大学非常勤講師。教壇のみならず翻訳家、詩人としても活躍。英訳『百人一首』は日米で翻訳賞を受賞。著書に『英語で読む百人一首』など。http://peter-macmillan.com

hotograph:Kentaro Kase
Text:Toshie Tanaka
Location:Hotel Chinzanso Tokyo

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