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ピッティの真価とは? 第2回
─5人のキーマンが語る世界のファッション事情─

2018.04.03

世界最大級のメンズファッションのトレードフェア、第93回ピッティ・ウォモ(以下ピッティ)がイタリアのフィレンツェで開催された。出展ブランド数は1244、開催4日間での総来場者は3万6000人、うちバイヤー総数は約2万5000人に上り、いずれも前回を上回る成果を残した。

さらに詳細を見ると、興味は増す。出展ブランド中イタリア国外の海外ブランドが45 ・8%、海外からのバイヤー数も36 ・2%を占める。こうした数値が示すのは、もはやピッティがイタリア国内だけではなく、世界に向けたトレードフェアであるということだ。

いまメンズのファッションウイークの動員が思うように伸びないなか、主旨は異なるにしてもピッティの隆盛は注目だ。ではなぜ世界のブランドやバイヤーはピッティを目指すのか。その魅力とはどこにあるのか。そんな視点からピッティの真価を探った。

イタリア、イギリス、日本。ブランドそれぞれの思惑

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ラルディーニ クリエイティブディレクター ルイジ・ラルディーニ氏

ジャケットのラペルを飾るブートニエールで知られるラルディーニは、クラシックにコンテンポラリーな解釈を加え、現代のイタリアンファッションをリードする。クリエイティブディレクターのルイジ・ラルディーニ氏は「ピッティは世界のファッショングル(先導者)が集まる場」と称する。

「以前は私たちもピッティで商談をしていましたが、現在はミラノのショールームで行っています。代わってピッティは作品を発表する劇場の舞台のように捉えています。世界観や今後の方向性を示すプレゼンテーションの場ですね」

ブランドの成長とともにピッティの位置づけは変わり、ピッティ自体もスケールが大きくなった。「まるで一緒に育ってきたようで感慨深いですね」と語る。

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ドレイクスクリエイティブディレクター マイケル・ヒル氏

それとは対称的に、ピッティ出展は商談が目的と位置づけるのが、イギリスのドレイクスだ。伝統的な英国流スカーフやネクタイから始まり、いまではシャツやアウターなどトータルに展開する。

「かつてはパリの展示会にも出展していましたが、いまはピッティに絞っています。世界から多くのバイヤーが訪れ、それだけピッティも自らの価値を上げています。私たちにとっては新作の発表以上に、オーダーをいただく大切な場所であり、直接バイヤーに会うことで新規開拓や新たなビジネスを生む機会なのです」とクリエイティブディレクターのマイケル・ヒル氏。さらに他ブランドのブースや新作に刺激を受け、人々のスタイリングからも多くを学ぶ。

「そこで得たインスピレーションをイギリス流に昇華します。日本ではイタリアのファッションが成功を遂げました。これも日本に向けたアレンジを加えたから。私たちもイギリスのスタイルをただ押し付けるのではなく、それぞれの市場やトレンドを見据え、柔軟に取り込んでいきたいと思います」

ピッティはそんなグローバルな発想ももたらしている。

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リングヂャケット クリエイティブマネージャー 奥野剛史氏

こうしたヨーロッパのブランドだけでなく、近年ではアジアからピッティへの出展も増している。その先駆けとなったのは日本。世界的なクラシックブームを追い風に、伝統的なテーラリング技術や生地へのこだわりで注目を集めるリングヂャケットに聞いた。

「出展は今回3回目ですが、まず変わったのは自分たちのブランド価値を実感できたことですね」とクリエイティブDIV.マネージャーの奥野剛史氏は言う。

「服の本場に対して当初不安もあったのですが、決してそんなことはなかった。クラシックにはイタリアの名門ブランドもありますが、よりフラットにメイドインジャパンの品質や新しい潮流が求められていることを感じます」

そうしたなかでビジネスチャンスも確実に広がっている。

「いまはメールやネットで海外とのビジネスもできますが、やはりブースで実物を見ながら話をすると商談も早い。特に海外のバイヤーは意見をはっきり言うし、それを生かすことで次のビジネスにもつながるのです」

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Photograph: Mitsuya T-Max Sada
Text: Mitsuru Shibata
Coordinate: Shiho Sakai

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