カジュアルウェア
ファッション トレンド スナップ23
日本でも採り入れられるイタリア流のクールビズを伝授!!
2018.05.14
気がつけば、日本でネクタイをしないでスーツを着るスタイルは、誰もが違和感なく受け入れられるようになりました。最初のころは、「出勤着からネクタイをはずしました」という感じの方々が多く、着ているシャツの襟がクリーニングの糊のせいもありパキパキで跳ねていて、首元がしっくりしていない方が多く見受けられました。
いまでは、クールビズ用の襟芯が柔らかく、上着のラペルに収まりのいいワイドカラーやカッタウェイ、ボタンダウンと呼ばれる襟型の物が簡単に購入できるようになり、昔のようなアンバランスなVゾーンは減ってきました。
逆に「ワンパターン化してしまって面白くない!」と思う洋服好きの方(少数派)やOLの方が出てきているのも事実。そこで、今回はイタリアのノータイ スーツ スタイルをいくつか取り上げて検証してみたいと思います。
どれも、日本のファッション誌やセレクトショップで春のトレンドとしてプッシュしているスタイルなので「絶対無理、会社に着て行けない」と言わないで、うまくエッセンスを採り入れてみてはいかでしょうか。
まずは、この御仁から。日本では、あまり見ない色のスーツですが、ネイビースーツよりは涼しく見えませんか? これがイタリア的なクールビズ。春夏の軽快なスーツの着こなし術なのです。
見た目に涼しく見せるという考え方は、もう少し日本のビジネスシーンで採り入れてもいい点ではないでしょうか。ジャケットを脱ぐ、ネクタイをはずす、冷感効果のある機能素材を選ぶといった自分本位の涼しさを求めるのではなく、第三者が見て涼しく印象に残るスタイルがもう少しあってもいいのでは?
特に髪の毛がこの御仁のようにシルバーグレーになると、この手の色のスーツは日本人にもがぜん似合ってくるはずです。
実は、色以外にもこのスーツにはトレンドが潜んでいます。それは腰ポケット! ここがフラップではなく、生地の上から貼り付けた四角いポケット(パッチポケット)になっていることです。この仕様のため、全体が少しカジュアルに見えるのです。
このポケットは、本来はジャケットに見られたものだったのですが、最近はスーツ(特にセットアップスーツ)にも見られるようになりました。これだとパンツをデニムに替えても違和感なく合うので、出張などには最適。一粒で二度おいしい的なスーツなのです!
全身はこのような感じです。ところで、ノータイでスーツを着るときの「イタリアあるある」をこの御仁から探ってみたいと思います。
まず、シャツのボタンは2個はずすのがイタリア式。日本は、ほとんどの方が1個はずしですね。イタリア人に理由を聞いたことはありませんが、このほうが涼しく見た目にも窮屈でなくエレガント(セクシー)だと考えているはずです。
それと、足元がスリップオン(ひも無し短靴)と呼ばれる靴をイタリア人はよく履いています。この御仁のようなローファーやタッセルスリップオン(総飾り付き短靴)はミラノの金融街でもよく目にします。
日本では、ネクタイをする時と同じドレスシューズで通す方も多いですが、ここはイタリア人を見習ってみてはいかがでしょうか? ただし、この御仁の様な素足履きは日本では微妙なところですが……。
次の御仁は、ネイビーのスーツにホワイトシャツという、日本でもよく見かけるスタイルと同じに見えますが、実はここにもトレンドが隠されています。
イタリアを代表する高級ブランド「エルメネジルド ゼニア」のスーツですが、パンツのウェスト部分がベルト留めではなく、リゾートパンツやスポーツパンツなどに使われる紐で結ぶタイプなのです。
この御仁は、そのひもを出して穿いていますが、このパンツは本来ひもを内側で留め隠すことも出来る仕様なのです。こうしたカジュアル仕様は、欧米のジェットセッターと呼ばれる飛行機での移動の多い経営者やIT系やファッション系のビジネスマンに好評のようです。
ちなみに、この手のスーツは今春、日本のセレクトショップのオリジナルなどでかなり出回っています。
この御仁が履いているのが、タッセルスリップオンです。この御仁も素足履きでしたね……。
今回も気がつけばかなりハードルの高いビジネススタイルでしたね……。
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi