腕時計
バーゼルワールド2018 レポート
フレデリック・コンスタント
2018.05.22
年明け1月のSIHH(ジュネーブサロン)に続いて、バーゼルワールドがスイスで3月22日〜27日に開催された。1917年から始まった商品見本市をルーツとして、昨年に100周年を迎えた国際的な時計と宝飾の展示会。多彩な新作が数多く披露された。今年のトレンドは最後にまとめるとして、日本でも人気の高い有力ブランドから注目のモデルをピックアップしていく。
機械式ムーブメントにスマホと連動する電子デバイスを搭載!
フレデリック・コンスタントは、高品質なスイスメイドの機械式時計を「手が届くラグジュアリー」として適正価格で提供することを基本理念としてきた。その一方で、最先端の電子技術を搭載したスマートウォッチも黎明期(れいめいき)からいち早く手がけている。今年のバーゼルワールドでは、この2つの分野で画期的な新作が登場した。
2015年のバーゼルワールドで、フレデリック・コンスタントはデジタル表示でなく、針によるアナログ表示のスマートウォッチを発表。外観はクラシカルなスイス時計だが、スマートフォンと通信して健康関連のデータなどをサブダイヤルで針表示する斬新なクオーツモデルだった。
この発想を内部のムーブメントにも導入。クオーツではなく、自社開発の自動巻きムーブメントに電子デバイスを埋め込んだ「ハイブリッド マニュファクチュール」が登場した。時計としての駆動部分は日付も含めて通常の機械式と同じだが、ケース左にあるボタンを押すとスマートウォッチ機能が起動。公式アプリをダウンロードしておけば、毎日の歩数や消費カロリー、睡眠時間などの健康管理データをスマートフォンとやり取りして表示できる。それだけでなく、機械式時計では世界初の「キャリバー アナリティクス機能」が際立った特徴だ。
これは時計の進みや遅れなどを一日1回自動で測定。そのデータをスマートフォンに送信してチャート化することで、時計の“健康状態”を表示する仕組み。問題や異常がある場合は、やはりスマートフォンのアプリ画面で通知される。機械式ムーブメントの精度をスマートウォッチ機能が定期的に自己診断してくれるわけだ。電子デバイスは通常のスマートフォンと同じく充電が必要だが、USBケーブルでフル充電すれば7日間持続する。見かけも中身もスイス伝統の機械式時計にもかかわらず、最新の電子デバイスを搭載した革新的なハイブリッド・スマートウォッチなのである。
パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)、ミニッツリピーター、トゥールビヨンは懐中時計のころからの伝統的な3大複雑機構とされる。このうち2つを搭載した新作が「クラシック パーペチュアルカレンダー トゥールビヨン マニュファクチュール」だ。一般に複数の複雑機構を搭載したモデルをグランドコンプリケーションと呼ぶが、その価格を知れば時計通ほど仰天するに違いない。
その前に複雑機構を簡単に紹介しておくと、パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)は、月末はもちろん、4年に1度しかない閏年の2月末も自動判別して日付を送ってくれる。時計を止めない限りは、閏年の例外年となる2100年までカレンダー調整は基本的に不要。もうひとつのトゥールビヨンは、重力が精度に及ぼす影響を偏らせることなく均等にするため、時計の心臓部分をキャリッジ(カゴ)にまとめて1分間に1回転させる仕組み。
どちらも高度な技術力が要求される複雑機構だが、これを2つも搭載していながら、価格はなんと300万円以下。同社の基本理念である「手の届くラグジュアリー」の究極と言っても過言ではないだろう。ちなみにケースはローズゴールドプレートもあるが、素材はステンレススチールのみ。3タイプあり、それぞれ世界限定88本。
同じく複雑時計では、時差の異なる世界24都市の現在時間を表示する「クラシック ワールドタイマー マニュファクチュール」を2012年に発売。こちらも価格は50万円以下に抑えられていたが、今年はダイヤルをグリーンにした新作を追加した。近年はブルーやネイビーはもはや定番、ブラウンも常識的になりつつあるが、グリーンも昨年あたりから目立っており、いよいよ時計もカラフルになってきたと感じさせる。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
問/フレデリック・コンスタント相談室 0570-03-1988
プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。