腕時計
バーゼルワールド2018 レポート
ショパール
2018.05.18
年明け1月のSIHH(ジュネーブサロン)に続いて、バーゼルワールドがスイスで3月22日〜27日に開催された。1917年から始まった商品見本市をルーツとして、昨年に100周年を迎えた国際的な時計と宝飾の展示会。多彩な新作が数多く披露された。今年のトレンドは最後にまとめるとして、日本でも人気の高い有力ブランドから注目のモデルをピックアップしていく。
「ミッレ ミリア」30周年記念と9日間巻きモデル
ショパールは、映画祭などで有名女優を華麗に飾るハイジュエラーで知られているが、その一方で機械式ムーブメントを自社製造する本格派マニュファクチュールという2つの顔をもつ希有なブランドだ。今年はレディスの「ハッピースポーツ」が誕生25周年を迎えたほか、メンズでもクラシックカーレース「ミッレ ミリア」のパートナーとなって30周年ということから、各種の記念モデルが登場した。
「ミッレ ミリア」は1927年に始まった伝説的な公道レースをルーツとして、イタリア北部のブレシアからローマを往復する1000マイル(約1600㎞)を走破するラリー。ただし、第1回から1957年までに参加した往時の車種だけに出場資格が与えられるため、優美で個性的なスタイルのクラシックカーが現役として数多く参戦。「世界で最も美しいレース」と言われる。
ショパールは1988年から「ミッレ ミリア」のパートナーとなり、公式タイムキーパーも務めてきた。記念のクロノグラフを毎年限定で製作しており、これを収集するコレクターもいるほどだが、30周年のアニバーサリーとして2タイプの特別限定モデルが発表された。「ミッレ ミリア 2018 レース エディション」は、ブショネ仕上げと呼ばれる円形の研磨塗装を施したダイヤルに、シンプルな目盛りのサブダイヤルを配置。ヴィンテージカーのダッシュボードにインスパイアされたという。クロノグラフのプッシュボタンはエンジンのピストン、リュウズもオイルタンクの栓を模している。赤い「1000 MIGLIA(ミッレ ミリア)」のロゴが印象的なアクセント。
また、「ミッレ ミリア レーシング カラーズ」として、出走するクルマの国別カラーコードをダイヤルにアレンジしたモデルもラインナップ。ロッソコルサ(赤)、スピードシルバー、ブリティッシュレーシンググリーン、ヴィンテージブルー、スピードイエローの5色で各300本の限定。
ショパールは1996年にマイクロローターを採用した薄型自動巻きムーブメントを自社開発。創業者ルイ-ユリス・ショパールのイニシャルから「L.U.C」と命名されたが、主ゼンマイを収めた香箱を2つ搭載。当時は数少なかった約65時間のロングパワーリザーブを実現していた。これを発展させたのが「クアトロ」(イタリア語で4の意味)と呼ばれる2組の積載式二重香箱(ツインテクノロジー)だ。2×2の合計4つの香箱によって最長約216時間、9日間というスーパーロングパワーだが、ムーブメント厚は3.7㎜という薄さに抑えられている。
このムーブメントを搭載した「L.U.C クアトロ」をブラッシュアップした新作が登場した。サテン仕上げを全面に施したメタリックなシルバーカラーのダイヤルに、ブルーの時・分・秒針とインデックスが美しく映える。12時位置に半円形のパワーリザーブ表示。
近年はメンズでもダイヤモンドをセットしたモデルに抵抗感がなくなってきたといわれる。ショパールでも、新作の「L.U.C ヘリテージ グラン クリュ」はトノー(樽型)ケースのベゼルに40石のバゲットダイヤモンドをあしらった。膨らみのある個性的なシェイプにブラックダイヤルをコンビネーションしたスタイリッシュなモデルなので、ベゼルを取り巻くダイヤモンドも違和感なく上品にフィットしている。ムーブメントはCOSC(スイス公式クロノメーター検定協会)が精度認定したクロノメーターで、パワーリザーブは約65時間。仕上げの美しさなども含めて総合的に審査するジュネーブシールも取得している。ダイヤモンドがきらめくフレームの中に、ハイグレードなムーブメントが隠されているのだ。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
問/ショパール ジャパン プレス 03-5524-8922
プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。