腕時計
バーゼルワールド2018 レポート
レイモンド・ウェイル
2018.05.25
年明け1月のSIHH(ジュネーブサロン)に続いて、バーゼルワールドがスイスで3月22日〜27日に開催された。1917年から始まった商品見本市をルーツとして、昨年に100周年を迎えた国際的な時計と宝飾の展示会。多彩な新作が数多く披露された。今年のトレンドは最後にまとめるとして、日本でも人気の高い有力ブランドから注目のモデルをピックアップしていく。
ブランド初の自社製ムーブメントをスケルトン化
レイモンド・ウェイルは、高品質にもかかわらず手の届きやすい価格帯を特徴とするスイスブランドだが、昨年から日本に本格上陸。有名ミュージシャンやバンドなどとコラボした特別限定モデルも入手しやすくなった。
スイスのムーブメント専業メーカー、セリタ社と共同でブランド初の自社製ムーブメント「キャリバーRW1212」も開発。昨年はこれを搭載した「フリーランサー」を発表したが、今年はスケルトンとしてバージョンアップ。ムーブメントの深みや個性を強調するため、構造や要素に手を加えて再設計を行ったという。
スケルトンとなった新作「フリーランサー」は、ダイヤル側から主ゼンマイを収納した香箱や輪列、時計の心臓部まで余すところなく見られるだけでなく、ブリッジなどに精緻(せいち)なペラルージュ装飾が施されている。このスケルトン・ムーブメントを遮ることのないよう、インデックスと針は控えめにデザイン。6時位置で活発に往復振動(毎秒8振動)するテンプが、生命の躍動のように感じるに違いない。
デヴィッド・ボウイやザ・ビートルズなどとの特別限定コラボモデルでも知られるブランドだが、今年は1970年代に爆発的な人気を博した伝説のロックバンド“AC/DC”とタイアップした「フリーランサー AC/DC リミテッドエディション」が登場した。ブラックダイヤルのベースには高電圧をイメージした稲妻模様が走り、12時位置にはAC/DCのロゴ。さらに、アワーマーカーにはロックのスピリットを象徴するスタッズ(金属製のびょう)をアレンジしている。6時位置の小窓から見えるテンプの往復振動にも、エネルギッシュなリズムが宿っていると言えそうだ。
時代を超えたタイムレスな魅力をもつクラシックを追求した「マエストロ」では、ムーンフェイズの新作が追加された。波のようなギヨシェ装飾をもつダイヤルの6時位置で、夜空と星々を背後に備えた月が顔を出し、29.5日の周期で満ち欠けを繰り返していく。深みのあるネイビーのカラーリングがスタイリッシュ(シルバーもあり)。
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プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。