調べ・見立て(見立て)
編集長の「見立て」。
クールビズの半袖シャツと、下着について考えてみた。
2018.05.29
![C-_Users_8623690_Desktop_キャプチャ4](http://p.potaufeu.asahi.com/b401-p/picture/12682744/e0b8bbcf945624d13ebe5d2396f0b355.jpg)
クールビズがスタートしたのは2005年。現在は東京都知事を務める小池百合子さんが環境大臣だったときのことです。そして今年、スポーツ庁長官である鈴木大地さんの掛け声で、スニーカー通勤を推奨する「FUN+WARK PROJECT(ファン+ウォーク プロジェクト)」という取り組みが始まっています。どれくらい定着するのか、まだまだ未知数ではありますが、2018年の夏が、ビジネスウエアの新たな分岐点になるかもしれません。
そこでアエラスタイルマガジンWEBでは、改めて夏の着こなしを考えるために、いくつかの質問で「クールビズ世論調査」を行いました。その結果を見ていくと、夏のビジネスウエアのリアルな現状が浮かび上がってきます。
一部の企業でクールビズがスタートした5月1日に掲載したアンケートは、「クールビズで半袖ビジネスシャツの着用はあり? なし?」という質問です。約3週間を経た5月22日現在の回答を見ると、71%が「半袖シャツあり」と回答。着こなしのルールに厳しいファッション関係者の多くは、「半袖シャツはビジネスシャツにあらず。着ているのは日本人だけだ」と言います。アエラスタイルマガジンの編集長である私自身も、これまでは「半袖はなし。どうしても暑いのであれば、長袖シャツを袖まくりすればよい」と言ってきました。
今回のアンケート結果を見ると、どうやら半袖シャツに関する着こなしのルールを改訂するタイミングにきているようです。3月に刊行した拙書『ビジネスマンの着こなしルールブック~仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。』のなかでも、「ルールは不変ではありません。かつて書かれたものをなぞるだけというのは、私の流儀からははずれています。働く男たちに応える着こなしを提案し、(中略)スーツのいまを考えるのです」と書いているのですから。2018年の夏、半袖シャツの解禁をここに宣言します。
そういった潮流に符合するかのように、いくつかのセレクトショップで「半袖、オープンカラー(開襟)」のシャツを提案しているのを見かけるようになりました。ここ数年は、ネクタイをしないときに襟のおさまりがいいという理由で、夏はボタンダウンの襟型に人気が集中。ここで新たに注目したオープンカラーは、文字どおりノーネクタイを前提にした襟型です。ぜひ、ビジネスの着こなしでもトライしてみてください。
![C-_Users_8623690_Desktop_キャプチャ3](http://p.potaufeu.asahi.com/042a-p/picture/12682743/c4138bcbc0abdbf20f3922e11c6dd76b.jpg)
5月14日に掲載した、「シャツの下に下着を着用しますか?」という質問に対する回答も見てみましょう。5月22日現在の結果では、「着用する」という回答が91%に上りました。じつは、「ルール原理主義者」のファッション関係者は、「スーツの歴史をさかのぼると、シャツは下着であった。ゆえに下着の下に下着を着用するべからず」と唱えます。こちらも、ビジネスマンの現状と真っ向から食い違っているのです。
アエラスタイルマガジンでは、クールビズがスタートして2年経った2007年に、読者から「シャツの下に下着を着るべきでしょうか?」という質問が読者から寄せられた経験があります。そのときに「下着の下に下着を着るべきではない」という原則で回答した私は、そのビジネスマン読者から反論を受けたのです。「クライアントに到着して、汗染みでびしょびしょのシャツを着た営業マンは紳士的と言えるでしょうか」と。そこで、再考し、リサーチを重ね、その年の夏号のクールビズ企画で回答を掲載しました。「シャツの下には下着を着るべし。ただしシャツのボタンを開けたときに見えない深めのUネックかVネックのもので。色は透けないベージュで、着用していることがわからないようにシームレス(縫い目のない)のものが望ましい」。2007年に改定した下着に関するこのルールを、ここであらためて皆さんにお伝えしたいと思います。
当時ベージュの下着は女性向けと考えられていて、メンズものはほとんど売られていませんでした。いまでは、多くのブランドがこういう男性用の下着を発売して、夏のヒットアイテムとなっています。2007年には新ルールであったものが、いまや常識になったことが、「シャツの下に下着を着用する人91%」となっている今回のアンケート結果からもわかります。
ビジネスマンのリアルな声に応えて、ビジネスウエアのルールは変化していきます。時代のニーズを見極めて、ファッション業界の展示会で洋服の進化を学ぶ。そのうえでルールを書き直し、書き加えていきたいと思うのです。
プロフィル
山本晃弘(やまもと・てるひろ)
AERA STYLE MAGAZINE編集長
「MEN’S CLUB」「GQ JAPAN」などを経て、2008年に朝日新聞出版の設立に参加。同年、編集長として「アエラスタイルマガジン」をスタートさせる。新聞やWEBなどでファッションとライフスタイルに関するコラムを執筆する傍ら、幅広いブランドのカタログや動画コンテンツの制作を行う。トークイベントで、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南するアドバイザーとしても活動中。初の執筆書籍『仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。』を、3月16日に刊行。
Illustration:Akira Sorimachi
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