旅と暮らし
アジア発の「マンダリン オリエンタル ホテル グループ」が
世界で躍進している理由
2018.07.10
ラグジュアリーホテルの競争が激化するなかで、こまやかかつ洗練されたホスピタリティーで、他とは一線を画する、マンダリン オリエンタル ホテル グループ。1963年、香港のセントラルに「ザ マンダリン香港」を開業。1974年にバンコクの「ザ オリエンタル バンコク」を傘下に収めたのを機に「マンダリン オリエンタル ホテル グループ」と社名を変更し、現在は世界21カ国に31軒のホテルを展開する一大ホテルグループとして君臨している。アジア発のラグジュアリーホテルチェーンとしては最大級の規模を誇り、いずれの都市でもトップクラスの評価を得ているが、その魅力とはなんだろうか。
アジアのホスピタリティーこそが躍進の鍵
先ごろ、マカオのマンダリン オリエンタル ホテルにステイしたが、そこは、マカオにあって唯一カジノがない、コンパクトでハイセンスな、心安らぐホテルだった。周囲には、宮殿かと見まがうばかりの、きらびやかなカジノ付き大型ホテルが林立するなかでのあえての選択こそが、グループが目指すホスピタリティーではないかと感じた。メインダイニグのモダンチャイニーズも、アンチエンジングにもフォーカスしたスパのクオリティーもDelight=歓喜に値する。
土地の文化を重んじた「センス・オブ・プレイス」
マンダリン オリエンタル ホテルグループの基本理念は「センス・オブ・プレイス」。つまり、立地する土地柄と文化に敬意を表するホテルづくりだという。その土地その土地の文化を採り入れたラグジュアリーモダンなインテリアに加え、揺るぎない機能性、そしてハイエンドなサービスが三位一体となり、どこのマンダリン オリエンタル ホテルに宿泊しても、感動が担保されるのである。グループにとって、サービスとは、単にDeliver(届ける)することではなく、Delight(喜ばせる)こと。つまり、ニーズを満たすだけでなく、一歩進んだステップを踏むことと考えられている。
もてなしの柱、その土地ならではの美味
基本理念である「センス・オブ・プレイス」を体現するために、食文化をリスペクトしてレストランの充実に力を入れていることもグループの大きな特徴である。テナントに頼ることなく、独自のレストランブランドを開発し、いずれもハイクオリティーを実現している。実に、世界中のマンダリン オリエンタル ホテル グループで15軒のレストランが22のミシュランの星を取得。チャイニーズレストランはもとより、パリのマンダリン オリエンタル ホテルでは、ティエリー・マルクスを誘致し、開業以来ミシュラン二つ星を堅持。バルセロナでは、地域が誇る三つ星「サンパウ」の姉妹店を有して成功するなど、センス・オブ・プレイスとグルメプライオリティーを見事に融合させている。
至福のスパこそ、体験型のホスピタリティー
また、東京のマンダリン オリエンタルでは世界的なシェフを期間限定で招くポップアップレストランに力を入れている。2014年の「noma」の招聘(しょうへい)は社会現象にまでなり、その成功が、その後のnomaの方向性を決めたとも言える、エポックメーキングなイベントであった。今年も、「世界のベストレストラン50」 2018で13位に入ったメキシコの「プジョル」とのポップアップレッストランが成功をおさめたばかりだ。
同様に、他ホテルグループに比して、クオリティーの高さと充実が際立つのが、スパ部門である。香港、マカオなどアジア各国のマンダリン オリエンタル ホテル グループのスパのクオリティーの高さは、ラグジュアリー、コンフォート、テクニック、独自のプログラムなど、どれひとつとってもとびきりである。実際、世界で14カ所のスパ施設がフォーブスの5つ星の評価を受けている。
東洋の伝統を重んじたマンダリン オリエンタル ホテル グループの
今後の展望
今春、マンダリン オリエンタル ホテル グループでは、「Fans of M.O.」という会員プログラムを始めた。それは、マイレージのようなポイントプログラムではなく、ゲストの宿泊をオーダーメイドするサービス。ホテル予約時に、朝食、アーリーチェックイン、レイトチェックアウト、部屋のアップグレードなどの特典を選ぶことができるという。これも、ゲストのニーズを先に読み取ることによって、期待値を上回るサービスを提供しようという「オリエンタル ヘリテージ(東洋の伝統)」が息づいているからこそだ。扇を広げた形のロゴマークも、オリエンタル ヘリテージの象徴である。
2018年は北京やドバイなどでの開業が予定されており、さらに、この1年で10軒ほどのホテルを開業。現在は17軒のホテルが開発中だといい、まさに目覚ましい躍進を続けている。規模を拡大しながらも、サービスのクオリティーをどこまで高められるのか、オリエンタル ヘリテージの可能性を見届けたいと思わずにはいられない。