カジュアルウェア
ファッション トレンド スナップ26
クールビズから休日のお出かけにまで使える
イタリア流白Tシャツの着こなし術
2018.07.19
いまでこそTシャツを着ていて「不謹慎な格好で出歩くのはやめなさい!!」とか「その格好では入店お断りします……」といったことを言う人は日本でほとんどいなくなりましたが、昭和のころはよく耳にしたフレーズ。
そもそもは肌着かスポーツ専用のもので、街中で堂々と着られるようなファッションにしたのはアメリカ。なかでも第二次世界大戦後ハリウッド映画がそのスタイルを世界に広めました。日本でも戦後に石原裕次郎や加山雄三といったスターが映画のなかで着たりすることで市民権を得てきましたが、いまのようなニュートラルで普段着的なイメージではなく、不良が着るものとかロック系のミュージシャンのユニホーム的な存在で、反体制的なメッセージやアウトローのスタイルを微かに匂わせていました。
イタリアは、最新ファッション&デザインの震源地でありながら、頑固に昔ながらのスタイルを変えない部分も持ち合わせる国。
その代表がTシャツ。
ファッションの国際見本市のピッティでも、ここ5年くらい前からよく見かけるようになりましたが、それまではあまり見かけませんでした。アメリカの文化やファッションについては、イタリアより日本のほうが素早く採り入れてきたのです。
特に最近はスニーカーブームやスーツやジャケットのカジュアル化に伴い、ピッティでもTシャツを着たさまざまなスタイルが見られるようになりました。そこで今回は、ピッティに見るTシャツの着こなし方にフォーカス。
まずは、スーツにTシャツを合わせたこの御仁から。こうした着こなしは、80年代のジョルジオ アルマーニなどのイタリアブランドの世界的なブームのときに大流行。しかし当時は白ではなく黒やグレーが中心でした。
そうしたモードなコーディネートはイタリアでも一部のファッション業界人が着ているくらいで、ピッティに参加するようなクラシック系の人たちからは「スーツの下にTシャツはエレガントじゃない!?」「海とかリゾートならいいけどね……」と言って敬遠されていました。それが、ここ2〜3年くらい前の6月のピッティから、一気に白Tシャツスタイルが浸透してしまいました。
<問題1>この御仁のスタイリングには、そうした最近の白Tシャツのブームを後押ししたアイテムがあります。さて、何でしょう?
<答え1>白いスニーカー。
スニーカーは、ブームやトレンドといった捉え方ではなく、モードからクラシックなスタイルにまで定番アイテムのポジションを確立したのです。
このコーディネートでもうひとつ見落とせないのが、胸ポケットに入れた白いポケットチーフ。これがあることで、Tシャツ&スニーカーでも品格のあるクールビズスタイルになっていますね。
ネクタイをはずしたら代わりにポケットチーフをするのは、ノータイでも相手の方に対して礼節をわきまえた着こなしとして見えるので、日本でも広まってほしい習慣だと思っているのですが、いかがでしょうか?
しかしこの御仁、ヘアスタイルもなかなか斬新。サイドは刈り上げでトップは変形オールバック?で、サンブラスと相まってモダンなGIカット(言い方が古い)、映画トップガンのトム・クルーズが老けたらこんな感じになるのかな?という感じでかなりクール(カッコイイ)。
お次はカジュアルな着こなしの若手をピックアップ。清潔感があって涼しげに見えるのは、このストライプのパンツのおかげ。ここが、デニムや無地のチノパンとかだとこの感じは出せません。
ただし、イタリアでは違和感がありませんが、いざ日本で同じようなパンツをはくとなるとかなり勇気が要りますね。ここまで太いストライプを選ばなければなんとかなるはず。細目のストライプで夏素材としてよく使われるコードレーンやシアサッカーと呼ばれる生地のものを選べば、着こなしのハードルはぐっと低くなり、はいていても涼しいのでおすすめです。
<問題2>この御仁とスーツの年配の御仁とは、Tシャツの着こなし方でポイントになる部分が違っているのです!! どこかわかりますか?
<答え2>スーツの御仁はTシャツのすそを出していますが、このストライプパンツの御仁はパンツの中に入れています。
そしてよくよく見るとストライプの御仁のパンツは、ベルト通しがない「ベルトレス パンツ」と言われるもの。今年の夏のピッティのトレンドのひとつで、ベルトが無い分おなかまわりがスッキリしエレガントに見える効果があります。このパンツのときは、ベルトレスを見せなくてはいけないので、Tシャツのすそは中に入れるのが正解。
さてこのTシャツのすそ問題ですが、どちらが正解というのはありません。ただ言えるのは、出したほうがよりスポーティーできちっと感がなくなるということ。
イタリアでは年齢が上がるほどTシャツのすそを入れる人が多いようです。これは、母親から「シャツもすそはズボンに入れなさい!!」と言われて育ってきたからでは?と勝手に想像しておりますが、信憑性はありません(笑)。フィレンツェの街中でも白Tシャツはよく見かけましたが、総じて年配の方はお腹が出ていても気にせずインする方が多かったですね。
そういえば、デザイナーのジョルジオ アルマーニさんがTシャツのすそをパンツにインしているのを雑誌でよく見かけたことをお思い出しました。
最後は、ピッティ会場で見かけたミス 白Tで示ます!!
次回もピッティ速報を。
そろそろ速報とは言えないか……。
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi