トレンドの潮目。
ピッティで知る、イタリア靴のこれから

2018.07.24

柴田 充 柴田 充

トレンドの潮目。<br>ピッティで知る、イタリア靴のこれから

初夏を迎えたイタリアのフィレンツェで、第93回ピッティ・ウォモが開催されました。各ブランドが来シーズンの春夏コレクションをいち早く発表するなか、変わりつつあるトレンドと注目すべき出展ブランドにフォーカスします。

ビジネスを中心としたオーセンティックなメンズファッションは、素材や製法の技術革新により、さらに多機能化しています。見た目こそ控えめでも、伸縮性や軽量性、防水といった機能性は格段に進化し、優れた着心地や柔らかな風合いまでも併せ持ちます。

こうした傾向は、足元の靴も例外ではありません。イタリアンシューズの一大生産地であるマルケで最大級を誇るブランド、ファビはその象徴と言えます。新作は手作業によるエイジングの色合いも美しい、ドレッシーなスタイルですが、手にすればその軽さは歴然。さらに驚かされたのが、レザーだと思っていたソールが実はラバーだったのです。

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創業家2代目にして、マーケティングとスタイルディレクションを務めるエマニュエル・ファビ氏は、こう語ります。

「日本は湿気が高く、雨もよく降るので、耐久性や実用性ではラバーが最適だと思います。それでもエレガンスを損なわないように開発しました。ほかにも日本人のかかとと甲回りを研究し、独自の木型で、履き心地や快適性を向上しています。伝統的な靴作りの技術や素材に対するこだわりは変えることなく、内容はつねに進化しています」

1965年の創業から現在ではマルケでも最大の生産拠点を有するファビですが、その成長を支えるのはまさに技術革新にあります。

「エレガントでありつつ、快適というのは時代の趨勢(すうせい)です。ただ大切なのは、トラディショナルとエボリューションを併せ持つことですね。私たちは昔ながらの靴職人の手縫いから、反りがよく、履き心地もソフトなフレックス・グッドイヤー製法の特許プロセスやレーザープリント技法など、新たな技術にも取り組んでいます。こうした広範な技術を用いることで、靴の可能性はさらに広がるのです」

イタリア靴の特徴は、流麗なスタイルに優れた履き心地を備え、さらに時代の感性をいち早く採り入れることにあります。その魅力をよりモダンにアップデートした一足です。

問/オークニジャパン 0800-111-0677

プロフィル
柴田 充(しばた・みつる)
フリーライター。コピーライターを経て、出版社で編集経験を積む。現在は広告のほか、男性誌で時計、クルマ、ファッション、デザインなど趣味モノを中心に執筆中。その鋭くユーモラスな視点には、業界でもファンが多い。

Photograph:Mitsuya T-Max Sada
Text:Mitsuru Shibata

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