お酒
軽やかな酸と芳醇さをあわせ持つ、魅力的な赤
ヒメネス・ランディ バホンディージョ 2016
[今週の家飲みワイン]
2018.07.27
スペインの赤ワインと言えば、リオハ産が圧倒的な知名度を誇っているが、いま、若い世代の造り手が、これまで見向きもされなかった地域に注目し、新たなワインを造りはじめている。そのひとつがマドリッドのすぐ近くのグレドス山脈のふもと、標高600mのメントリダと言われるエリアだ。そこで、ダニエル・ゴメス・ヒメネス・ランディ氏と共に従兄弟のホセ・ヒメネス氏が、祖父のボデガ(ワイナリー)を再スタートさせ、瞬く間に、スペインワイン界のスターになったのだという(現在はホセのみが運営)。古くからワインが造られてきた土地だが、バルクで売るような安ワインを造るばかりで、それらの畑もほとんどはは打ち捨てられていた。その反面、樹齢40年以上の古いぶどうの木が多く残っていたことも、新生ボデガのワイン造りに大きく幸いした。
「ぶどう品種はガルナッチャが主体でシラーをブレンドしています。ガルナッチャとはスペイン語ではグルナッシュ。標高が高いところでできるガルナッチャらしく、しっかり酸を残しているのが魅力です。かつてのようにパワフルで濃厚なワインを礼賛する傾向は世界的に影を潜め、軽やかで淡く上品なワインが珍重されるようになってきています。食の嗜好そのものがライトでヘルシーへと変わっているので、ワインの嗜好の変化も当然と言えば、当然です。このボデガも、まさにそうしたワイン造りを目指しています。たとえば、ぶどうを弱く抽出することで、淡く軽やかな品のいいワインになるのです。ぶどうそのものが古木で力があるので、搾り切らずともレイヤーがしっかりと残り、体に染みる繊細な味わいが表現できるのですね」と、梁さんは説明する。
エチケットの、どこか飄々(ひょうひょう)とした描き文字も、このワインの特徴を表しているようだ。いまの時期なら軽く冷やして飲めば、爽やかな味わいがいっそう引き立つ。こうした軽やかな赤であれば、肉のみならず、魚でも十分にいける。和食にも合わせやすいだろう。マグロやカツオの刺身などにもぴたりと寄り添ってくれそうだ。もちろん、スペインの生ハム、ハモン・デ・ベジョータ・イベリコに合わせれば、たちまち幸せになれる。
Photograph:Reiko Masutani