旅と暮らし

変わりたいアナタのためのこの夏のミッション
[美しき映画ソムリエ]

2018.08.01

東紗友美

写真・図版
© 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

仕事柄、年に何百本も映画を観ているのだから、映画に感動するということは当然よくある。しかし、ここまで俳優の、いやひとりの人間の生きざまに、映画を通して震えてしまったのは、心底久しぶりの体験だったかもしれない。

トム・クルーズ主演の大人気スパイ映画『ミッション:インポッシブル』シリーズ全世界待望の最新作の『フォールアウト』。トムはこれまでもノースタントで、あるときには地上828mものブルジュ・ハリファ(ドバイの世界最高のビル)の壁面を登り、またあるときには、1歩間違えたらあの世行きの爆弾アクションや足場のない高さ30mの崖っぷちでのぶら下がりに水平宙吊り。そして、記憶に新しいところだと最近では高度1500mまで浮上する飛行機のドアにしがみつくという超人ぶりで私たちを驚嘆させている。超人的神業アクションをすべて、世界的ハリウッドスターである彼本人がこなしてきた話題性のあるシリーズであることは有名だ。

今回、ネタバレ禁止なので作品のストーリーについて言及することが難しい。だがむしろ、私にとって今回はそれが好都合だ。なぜなら、この映画の魅力はもはや映画のストーリーを超えたところにある。それは、ひとりの俳優がここまでのことを完璧にこなしてしまったことのスゴさだからだ。

今回の見せ場を簡単に紹介しよう。まず、ミッションの定番とも言える危険なバイクアクションをパリ市内でやってのける。続いて、兵士たちが特殊任務の際に行うヘイロージャンプで高度7620mの飛行機からの落下(この時点で既に前作『ローグ・ネイション』のジェット機しがみつきの5倍の高さ)および実際にケガをしたことでもニュースとなったビルからビルへの走りながらの飛び移り。そして、なんといっても自ら2000時間かけてヘリの免許を取得してのヘリコプターアクションはすごい。いままさに飛び去ろうとするヘリの荷物にしがみつき、飛行したままの状態でロープによじのぼり、ヘリに乗り、スリリングでアクロバティックな飛行技を見せるのだが、このシーンはカメラマンも操縦士もいないため操縦含めトムがひとりでやってのけている……!『フォールアウト』というタイトルにふさわしく、堕ちることでひたすら魅了する。

写真・図版
© 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

トム・クルーズと言えば、30年以上ハリウッドのトップスターに君臨しつづけている一流の俳優だ。演技への評価も高い。しかし、演技がうまくてイケメンの役者はほかにもいる。それでは彼の何が、他の人と異なるかというのか。そればズバリ上記にも述べたことを自分でこなしてしまうファンを楽しませようとするエンターテインメント精神なのではなかろうか。トム・クルーズは、映画を通し、教えてくれる。「唯一無二の存在になる方法」とは何かを。

どんな仕事においても、プロフェッショナルになるつもりで挑むのは当然の姿勢だ。そして、そのなかでもさらに自分だけしかチャレンジしていないことをかけ合わせ第一人者になること。トムの場合は、これが究極で命懸けのスタントだ。その道のプロでありながらも、オリジナリティーを持ち合わせる。このダブル構造こそ、ほかに変わりのない存在になる近道でもある。辞書によると「唯一」の存在であり、「無二」で代わりになるものはいないというスペシャルな言葉だ。

さて、仕事をしていると時々こんなことを言われた経験のある人はいないだろうか。
――君の代わりはいくらだっているんだからな。
こう言われているうちは、あなたはまだ会社の取り替えのきくコマでしかない。しかし、サッカーの本田圭佑の言葉を借りれば「伸びしろですね〜」ということでもある。仕事に得意分野をまだミックスさせていない人はいまこそチャンスかもしれない。柔道の合わせ技一本の論理で、次のステージを目指そう。

無限の可能性を抱きつづける56歳の背中はどんな男の背中よりもかっこいい。映画の域を超え、スポーツ選手の汗と涙を見たときの感覚に触れた。プロフェッショナルな人間は、敬服とともに、我らの気持ちを鼓舞してくれる。この興奮をぜひとも、味わってほしい!!!

観なければこの夏のミッションを、あなたはコンプリートしたことにはならない。

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』

公開日/8月3日(金)より全国ロードショー
配給/東和ピクチャーズ
公式サイト/http://missionimpossible.jp/

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