紳士の雑学

「金儲けより、人儲け」
株式会社TonTon 今川博貴代表インタビュー[前編]

2018.08.22

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2度の事業の失敗を経て、同じ仲間とともに2013年に株式会社TonTonを立ち上げた今川博貴氏。「金儲(もう)けより、人儲け」の理念で急成長を遂げている同社は不動産、飲食、ドローン事業、コールセンター、人材派遣と手がける分野は多岐にわたる。「目標は100事業」、笑顔で語る今川氏に話を聞いた。

ワクワクスイッチが入ったら動いてしまうんです

「社内でいちばん元気なのが社長なんですよ」、広報の女性の言葉どおり。今川博貴、33歳。紆余曲折(うようきょくせつ)の人生を臨場感たっぷり、表情豊かに語るものだから何度も身を乗り出した。その口上の勢い同様、株式会社TonTonは『ベストベンチャー100』に選ばれるなど注目を集める。2016年にはドローンスクールをスタートし、パイロット輩出数で日本一に。展開するお茶漬け専門店『だよね。』は中国にも進出し上海のQボードに上場。アジア市場での躍進にも期待が懸かる。

手がける事業数の多さは今川自身の反応の速さ、行動力の賜物でもある。「やっちゃうんですよ、すぐに」笑いつつ、こんなたとえ話をする。「くじ引きで『アフリカ旅行1カ月』が当たったとします。『1カ月も仕事どうしよう』とかリスクから考える人が多いでしょう。だけど、僕の場合はその瞬間にワクワクスイッチが入ってしまう。アフリカの大地に行ったあとに困るタイプですね(笑)。経営者にも『リスク重視』と『どんどん行こう』の2つのタイプがあると思うんですが、どちらが正解ではなく、自分のタイプを理解した上で事業をやるのが大切なのかなと。幸い、僕は周りが優秀なので助けられています」

現在、社員数は140人強。東京は目黒にあるビンテージ風のオフィス、社内は活気のある声に溢れていた。

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2度の起業と2度の失敗

今川が最初に事業を起こしたのは2004年、19歳のときだ。勤めていた会社を辞め、仲間5人と洋服ブランドを立ち上げた。とはいえど、特に服飾の勉強をしていたわけではない。「『Illustrator』の使い方を教えてもらって見よう見まねでデザインしてたんです。そんなママゴトみたいなやり方でしたが、先輩が経営するセレクトショップで自社ブランドとして売り出してくれた。これが予想以上の反響で僕らはすっかり勘違い。『ビジネスなんてチョロいじゃん』って(笑)」

1年が過ぎるころ、セレクトショップを辞めるスタッフに引き抜かれた。条件は驚くほど良く、今川ら6人のメンバーは完全に浮き足立った。当然、裏切りは先輩の知るところとなり、関係は決裂。「自分の間違いに気づきましたね」必死の思いで謝罪した。引き抜き先にも頭を下げ、ブランドを置いて今川らはそこを辞めた。お金も信頼も一気に失った出来事だった。

とはいえど。5人の仲間は残っていた。「また、一緒にやろう」「絶対に何かできるよ」「何をやる?」。まだ若く根拠のない自信も残っていた。やがてひらめく。「読者モデルのブログサイトを作ろう!」。当時の今川はDJをやっていた。ティーンズファッション誌のモデルにも多くの知り合いがいた。「40人くらいのモデルが集まったんです。動きだすと、大手の芸能プロダクションやレコード会社から取材もたくさん来て」
 
幸先のいいスタートに思えた。だが、実態はほぼボランティア。収益は上がらない、しかし、モデルの原稿料は発生する。困窮という表現は大げさではなく、20代のいい若者が一日1食生活を強いられた。「本当にお金がなかったんですね。モデルの子と打ち合わせでカフェに入り、まさか『割り勘で』とは言えないでしょう(笑)。でも、このころは帰りの電車代かコーヒー代かって選択に迫られるような状況だったんです」

本業(?)のブログサイトを支えるために、交代でゴミ収集のアルバイトをした。あるとき、今川が5畳ひと間の事務所に戻ると仲間のひとりがベランダにあるプランターの土を食べていた。おなかがすきすぎたのか、精神が参ってしまったのか。数年後、その当人は「球根の匂いをかいでいただけ」だと弁明したそうが、だとしても、その光景は目に焼き付いた。撤退しよう、決断した瞬間でもあった。夜になり、仲間の前で言った。それぞれ社会に出て勉強しよう、力をつけてまた集まろうよ、と。

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ホテルをM&A、1年で収益を10倍に

その後、今川は広告代理店に入社した。「仲間と再び事業をやる、本気でそう思っていましたから給与はフルコミッション制にして、必死になって働きましたね」。実際に次々契約を取って来た。紳士服のプロモーション、アイドルの切手販売。週のうち半分は会社に泊まり込み、お金を使う暇すらなかった。

ある日、仲たがいしたはずの先輩から連絡があった。「『沖縄のホテルをM&Aしないか』って。当時の僕はM&Aの知識もない。ホテルなんて無理無理、そんなお金はありませんって感じです。半面、その先輩に声を掛けてもらえたことがすごくうれしくて」

銀行口座を確認するとそれなりの額が貯まっていた。ホテルといっても破格の値段、貯金すべてを投資すればなんとかなるかもしれない。そう決めたあとは行動だった。お客さんの来ない、老朽化したホテル。経験はなかったが再生できる自信はあった。「リノベーションして全国の学校にアプローチしました。修学旅行生の誘致に成功し、1年後には収益が10倍に。バイアウトしてその資金を元手に株式会社TonTonを設立しました。そうして、5人の仲間に再結集を掛けたんです」。最初の起業から9年が経っていた。

後編へつづく>>

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プロフィル
今川博貴(いまがわ・ひろき)
1985年岡山県生まれ。19歳で5人の仲間とアパレルブランドを立ち上げ、21歳で同じ仲間とメディアサイトを立ち上げる。その後、広告代理店のトップセールスマンになりその貯金を元手に沖縄のホテルを買収。再建させたのち、バイアウト、2013年に株式会社TonTonを設立。著書に『世界一わかりやすい「公務員」の不動産投資術』(幻冬舎)がある。

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