紳士の雑学

「金儲けより、人儲け」
株式会社TonTon 今川博貴代表インタビュー[後編]

2018.08.29

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2度の事業の失敗を経て、同じ仲間とともに2013年に株式会社TonTonを立ち上げた今川博貴氏。「金儲(もう)けより、人儲け」の理念で急成長を遂げている同社は不動産、飲食、ドローン事業、コールセンター、人材派遣と手がける分野は多岐にわたる。「目標は100事業」、笑顔で語る今川氏に話を聞いた。
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「ドローンパイロットならTonTon」のポジションで

今川は28歳のときにTonTonを設立。2度の起業と失敗を共にしたかつての仲間も集まった。当初はクレジットカード会社やお酒のメーカー、システム会社などのグループ企業として稼働していたが、「そのうちに違和感を覚えるようになったんです。考えたら、社員に自分の背中を見せていない。本腰を入れて自分たちで事業をやろうと不動産の売買と飲食業を始めました」

飲食はもともと知人の焼き肉屋に出資するなどの縁があり、その流れから『鉄板焼 やっぱ。』『創作お茶漬け専門店 だよね。』など数店舗を出店。不動産事業にも意外な効果をもたらした。「飲食ってメディアで紹介されやすい。不動産の営業で『ああ、あのお茶漬け屋さんの』と言われることも多いんですよ」

店での出会いから事業が生まれたこともある。『鉄板焼 やっぱ。』での食事中、今川に乾杯を求めた客がいた。話すうちに意気投合、聞けばドローンの会社を運営しているという。ドローン=ラジコン程度の知識しかなかった今川に先方は「一度会社にいらっしゃい」と言った。酒席の話で終わらせないのがすごいところで、今川は後日その会社を訪ねた。「完全にハマりましたね。ドローンに可能性を感じてしまったんですよ」

2016年、子会社を設立し、お台場にドローンのライセンススクールをスタートした。2年目にしてドローンパイロットの輩出数は日本一だ。「スクールだけの展開だと敷地面積×インストラクターの人数で売り上げのてっぺんが見えてしまう。それでは面白くない気がして、そこから生まれる人材に着目しました。テンプスタッフさんと提携し、ドローンパイロットの派遣にも取り組んでいます」

会社の不動産管理部門においてもドローンの果たす役割は大きい。「外壁調査って通常、足場を組んでやりますから費用も高いし時間も掛かる。ドローンでやれば、安いうえに早く済むんです。赤外線カメラでコンクリートの浮きやクラック、水漏れなどの劣化具合までわかります。依頼も多く期待のできる業界です。ドローンパイロットならTonTonというポジショニングを確立していきたいですね」

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目指すは100事業、社内ベンチャー制度がスタート

「ゼロから1を作ること」それが今川の、会社運営における根本的な思いである。洋服のブランドやメディアサイト、ホテルのオーナー、さまざまな経験を積んできた今川だけにTonTonで手がける分野も多岐にわたる。「事業化の決め手はワクワクするかどうか。ワクワクしたうえで世の中のためになるか。この2つをクリアーしたらGOです。いまはグループ総勢で事業数は12、13ほどですが100事業を目指しています。この8月には社内ベンチャー制度もスタートしました。事業のアイデアを募り、プレゼンしてもらって、いけそうなプランはその当人が事業責任者に就任。ただし、条件があって3カ月で黒字転換できなければ、事業からは撤退です」

第1回は8月9日の設立記念日に開催。インタビューはその直前に行われたため、今川自身、どんなプランが出るのかはわからないと言う。けれど、その顔はやはりワクワクしていた。
「いずれは国内での上場も考えています。もちろん、いまのままではなく、ビジネスモデルを改善しつつ唯一無二の企業に成長させたいですね」

さて、同社にはユニークな制度も多い。先の設立記念日は社員全員が両親に手紙を書く日でもある。「両親への手紙って女性はともあれ、男性って普通はまず書かないじゃないですか。だけど、『親父から電話があった』とかあとで聞いたりしますと、ああ、やってよかった、いいことしたじゃないか、みたいな気持ちになりますよ(笑)」

もうひとつ、珍しいのが社内恋愛制度だ。カップルが誕生すると、双方の基本給が1万円もアップするという。「デート代です。スタート後に2組誕生しましたね。1組はそろそろ結婚しそうかなぁ、してほしいなぁと思ってるんです(笑)。もちろん、結婚しても夫婦で働いてほしい。うちの会社はそれができる環境だと思うんですね」

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「他責」から「自責」に変わると見える景色は進化する

TonTonの企業理念は『“人”儲けしよう。』。経営者としての哲学を尋ねたときにはこんな答えが返ってきた。
「金儲けじゃない、人儲けだって言っているんですけど、気がついたら勝手に周りに人が集まってくるのが究極の人儲け。いかに自分自身の内側を育てていくかですね。特に経営者には『自責』の考え方が不可欠だと思います。例えば、僕が会社で財布を置きっぱなしにしていて盗られたとする。100人いたら99人が盗った人間が悪いと言うかもしれません。けれど、僕は『置いた自分が悪かった』と言える100人目の人間になりたい。それに付随して人を許せる人間でありたいんですよ」

経験から出た言葉でもあろう。1度目の起業のとき、最大の協力者だった人を裏切ってしまった。けれど、相手はそれを許し、数年後、ホテルビジネスに誘った。その成功がTonTonの起業へと導き、現在の今川がある。まだ33歳。終始、話す言葉に抑揚をつけ、時に声音をつけ、目を輝かせながら語る。文章で再現できない力足らずが申し訳ないが、会社が好きで、社員が好きで、仕事がとても楽しい、そんな思いが全身から伝わってくる。

「僕は仕事が趣味みたいなもの。だけど、もし、いま、仕事を楽しめない人がいるのなら『他責』にしているからだと思うんです。周りのせいにしてしまうと先に進めない。結局、同じ景色しか見えないんです。例えば、飲食店で『お客さんが来ないのは雨のせい』、そう考えたらそこで終わりますよね。雨の日クーポンでも配ってみる?できる仕掛けはないかな? と考えられる人はもっと先へと行ける。その積み重ねで見える景色は圧倒的に違ってきます。それがやがて、楽しいに変わるんじゃないかと思うんですよね」

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プロフィル
今川博貴(いまがわ・ひろき)
1985年岡山県生まれ。19歳で5人の仲間とアパレルブランドを立ち上げ、21歳で同じ仲間とメディアサイトを立ち上げる。その後、広告代理店のトップセールスマンになりその貯金を元手に沖縄のホテルを買収。再建させたのち、バイアウト、2013年に株式会社TonTonを設立。著書に『世界一わかりやすい「公務員」の不動産投資術』(幻冬舎)がある。

Photograph : Kentaro Kase
Text : Mariko Terashima

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