旅と暮らし

ノルマンディー、ロマンチックが止まらない日記
第5回ホテル編:ここは新婚旅行で泊まりたい! セーヌ川の上に立つお屋敷ホテルでロマンチックが頂点に達する!

2018.09.06

大石智子 大石智子

ノルマンディー、ロマンチックが止まらない日記<br>第5回ホテル編:ここは新婚旅行で泊まりたい! セーヌ川の上に立つお屋敷ホテルでロマンチックが頂点に達する!

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セーヌ川のクルージングは、心癒やされる“緑浴”だった

カブールをあとにクルマを走らせ、ドライバーさんが止まった先はホテル……ではなく船着き場でした。船が泊まるのは幅が広く豊かな緑に囲まれた川。こちら実は、セーヌ川です。

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ここから船でセーヌ川の上流に向かい、本日のお宿を目指すのです。水路でモネの街であるジヴェルニーやパリに近づいていくんですね。

有名すぎて逆によく知らなかったセーヌ川。上流はマスタードで有名なディジョンで、パリを通り、ノルマンディー地方を雄大に流れ、第2回で紹介したル・アーブルあたりを河口とします。全長約780kmもあり、フランスではロワール川に続いて第2の長さとなっています。

たぶん、私のセーヌ川の初めての記憶は、映画『ポンヌフの恋人』。セーヌ川沿いでの花火のシーンが印象的で、いま思えばラストでふたりが助けられた船はパリからル・アーブルに向かっていたのでした。

都会の美しい建物に挟まれたセーヌ川しか知りませんでしたが、今回はまったく別の景色。右も左も緑しか見えなくて、ジャングルみたいな様相です。

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川を上るにつれて、ちらほらと川沿いに民家が見えてきます。

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川沿いに立つ家々は、藁葺き屋根の素朴な造り。

途中で大きな橋の下をくぐったかと思えば、釣り人や水車小屋、川のほとりでお茶をする人々などが目に入り、川と共存するように生活するこの地の人々の暮らしぶりを垣間見られます。

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ひたすら濃く茂る緑が続き、あふれ出るマイナスイオンに癒やされる……。

今回参加したセーヌ川クルーズは「Liberté Seine」という会社が運行するもので、こちらは船長のドミニクさん。

www.liberte-seine.fr

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フランスの民謡のような曲をBGMにのんびりとした川の景色を眺めていると、ドミニクさんが「シードルタイムだよ」と抜栓! クルーズの風を感じながら飲むシードルは格別です。持ち込み可能なので、シードルやワイン、チーズなどを用意し、ディナー前の船上アペなんてしたら最高ですよ。

人生初! 川の上に立つホテルに泊まる

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「ホテルに着きましたよ」との声とともにドミニクさんが指す方向を見ると、そこはなんと川の上に立つお屋敷! 川と森に挟まれた最高のロケーションです。

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どんどん近づき、船でチェックイン!
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最初に出迎えてくれたのは白鳥!!

ホテルがもつ船着き場に着き、いざ、中に入ります。するとそこは、レストランも階段もお部屋もリバービュー。川の上に立つホテルだから当然ですよね。まるで客船のようにも思えてきます。

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このホテル「Moulin de Connelles(ル・ムーラン・ドゥ・コネル)」は、もとは17世紀に建てられた邸宅。19世紀に改築され、20年前にホテルとしてオープンしました。

部屋数はたった12室。長い歴史を有する邸宅にほれ込んだオーナーが、“自宅に友人を招くように”という意図のもとホテルに改装しました。そのため実際に過ごしてみると、本当にタイムスリップして貴族の別荘に泊まっているかのような気持ちになってきます。

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12室の部屋はデザインがそれぞれ異なり、川に面したテラス付きの部屋もあれば、お風呂が部屋の中にある部屋、ジャグジー付きの部屋とさまざまです。

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私が泊まった部屋の寝室には、年代ものの化粧台が置かれていました。
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外から見ると小さな塔のようになっている部分が、実はお風呂でした。
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そのためお風呂の天井が異様に高い!
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こちらはベッドに寝たまま川を眺められるカップル向けのお部屋。ベッドのすぐ隣にお風呂があります。

夜8時、まだ明るいうちにディナーへ。夕方前のような光が窓から差し、ちょっとした泡酒もカトラリーも美しく映ります。

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今回、ノルマンディーの旅で魅了されたことのひとつが、夕方から夜にかけての光と空の美しさ。夜8時に食事を始めて、食事の間に空の色が刻々と変わり、食べ終わるころに暗くなる。つまりはマジックタイム=ディナータイム。

だからこそ、大きな窓から空を眺められて、さらにセーヌ川も見渡すこのレストランの席は最高にロマンチック。実際にふたりで食事をするカップルもいたのですが、食中も手を取り合っていたのでした。

そんなお席で味わったコース料理は、基本の仕事への丁寧さを感じるクラシックなフレンチ。アミューズのガレットやクロックムッシュからして、食べる側が「いい店だろうな」と安心できるおいしさがあり、その期待は裏切られません。

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フォアグラのクレーム・ブリュレ。フォアグラ特有の旨みがありながらとても軽く仕立てられていて、ワインよりもシードルが合うくらい。
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ほろほろ鳥のローストにはカマンベールと生クリーム、シードルのソースが合わせられ、カラメリゼしたりんごも添えられている。これぞ、ノルマンディー!といったメインディッシュ。

シェフのエリック・ルジャンドルさんはMFO(国家最優秀職人賞)を有するすご腕の方。なるほど、いぶし銀を感じさせるおいしさが料理にあったわけです。ひなびた村と言ってもいい場所で洗練されたフレンチを楽しめるギャップもぜいたくですね。

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MFOのメダルをかけて登場したシェフのエリック・ルジャンドルさん。

ホテル周辺の散策からの朝ごはんが幸せです

翌朝起きると、窓の格子越しのセーヌ川も美しかった。

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朝ごはんをおいしく味わうためにホテル周辺を散歩すると、川沿いには先客がいました。

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実はこのホテル、犬の宿泊もOKなのです。私も柴犬と一緒に泊まってみたい……。

ホテルの裏手には、こんなに美しい緑のアーチがありました。

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通るだけで心身ともに清められていく思い。そしてこのアーチを通り抜けた先には橋があり、橋の上に立ってホテルの方向を眺めると、そこには見ほれてしまう光景が……。

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逆さ富士ならぬ、逆さホテル! 川面にホテルがくっきりと映っていたのです。本当におとぎの国の光景のよう。不意に現れたことで感動もひとしお。ちなみに右側の塔の上が、私が泊まった部屋のお風呂ですね。

高揚感に包まれながらホテルに戻ると、ノルマンディーらしいフレッシュな朝食が用意されていました。

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りんごジュースとりんごのコンフィチュール、カマンベールチーズ、バター、ヨーグルトetc.、ノルマンディーには人が朝に食べたいものがそろっています。特に、かけつけ一杯で飲むりんごジュースの甘さが、朝の渇いた体に染み渡る。普通のりんごジュースより、もう少し野菜に近い味がするのが好きでした。

バターを塗ったバケットにカマンベールとハムを挟んだシンプルなサンドイッチも、ここではひときわおいしく感じられます。サンドイッチとシードルを持ってホテルの近くでピクニックするのもいいだろうな……と妄想しますが時間はなく、あっという間にチェックアウトの時間に。

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    出発の直前、ホテルの庭に咲く美しい花々を愛(め)でます。
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ここには、通常ホテルに期待するものはないかもしれない。スーツケースは自分で持って階段を上がるし、アメニティも必要最小限、Wi-Fiもちょっと遅い。

それでも、この四つ星ホテル「Moulin de Connelles」は今年泊まったホテルのなかでトップ3に入るお気に入りとなりました。セーヌ川の上の特別なロケーションや建物の趣は唯一無二であり、すべての体験にノルマンディーらしさがにじみ出ています。さらに、1泊100ユーロ前後とお値段もかわいくてリピートしやすい。今回は緑がきれいな時期だったけれど、きっと紅葉シーズンも美しいでしょう。

白鳥の羽の純白さ、ギシギシときしむ階段の途中で見たセーヌ川、お部屋の窓からの光景など、ちょっとした瞬間の思い出がたくさんできるホテルです。泊まってから3カ月近くが経ちますが、いまもすべてが鮮明。こういう場所に新婚旅行で来てみたいなと、しみじみと思ったのでした(祈)。

http://www.moulin-de-connelles.fr/?lang=en

取材協力/エールフランス航空
     ノルマンディー地方観光局
     フランス観光開発機構

プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

Photograph:Ryoma Yagi

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