お酒
ノルマンディー、ロマンチックが止まらない日記
第4回カルヴァドス蒸留所&小さな街編:りんごのお酒の余韻に浸りながら、“フランスで最も美しい村”に胸キュン!!
2018.08.31
![ノルマンディー、ロマンチックが止まらない日記<br>第4回カルヴァドス蒸留所&小さな街編:りんごのお酒の余韻に浸りながら、“フランスで最も美しい村”に胸キュン!!](http://p.potaufeu.asahi.com/37e5-p/picture/13552762/712b3a53c069e4d114b80a8426a04fa8.jpg)
ノルマンディー地方に滞在して4日目。「そろそろ、絵本のようなかわいい風景に慣れてきたかも……」と思っていたのですが、またしても夢のような世界に入り込み、新たな刺激に出合います。
その場所とは、カルヴァドス県ペイ・ドージュ地方にある「シャトー・デュ・ブルイユ」という蒸留所。そうです、ノルマンディー地方の名産であるりんごのお酒、カルヴァドスの蒸留所を見学に行きました。
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いたるところに何気なく花が咲いていて、楽園感がはんぱない!
カルヴァドスの蒸留所に来たというのに、お庭と土産物屋のあまりのかわいさに大ハッスル。カルヴァドスが入ったフォアグラと、りんごのジャム入りの鴨のテリーヌを購入しました。
そして本題、蒸留所を見学します。「シャトー・デュ・ブルイユ」の熟成庫となっているシャトーは16〜17世紀に造られた建物。現在は歴史的建造物に指定されているとあって、さすが趣のある佇まいです。
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そもそも、なぜノルマンディー地方でりんごが特産かといえば、当然ながらその気候がりんご造りに適していたからです。日差しが強く湿気があり、粘土質の土壌はりんご造りに最適で、逆にぶどう栽培には向いていません。
そんなノルマンディーのなかでもカルヴァドス県は昔から多種の良質なりんごが採れる地域。カルヴァドスの歴史は古く、起源は9世紀と言われ、1553年にはこの地でのりんごの蒸留酒造りに関する記述が残っています。どうやら、「ワインでコニャックが作れるのなら、りんごでもできるんじゃないか?」と生まれたそうです。
その後、1790年にカルヴァドス県が成立すると同時に、りんごの蒸留酒はカルヴァドスと呼ばれるようになり、1942年にはAOC(原産地呼称規制)の対象となりました。
シャンパンやコニャックと同じで、カルヴァドス県で造られた一定の条件を満たすお酒でないと、カルヴァドスと名乗ることはできないのです。
カルヴァドスの作り方をすごく簡略に言うと、下記になります。
①りんごを洗い圧搾機でつぶす
②りんごの絞り汁をタンクに入れて自然発酵させる→りんごの酵母によりアルコールと炭酸ガスが発生しシードルができあがる
③シードルを窯に入れて沸騰させる
④蒸気となったアルコールを冷やし液体とする(この工程をもう一度繰り返しアルコール度数を上げる)
⑤樽で熟成
今さらですが、④の工程のことを“蒸留”というのですね! カルヴァドス、ウイスキー、ジン、テキーラといった蒸留酒が大好きなのに、いまいちレシピを分かっていなかった! それがここにきてすべてがクリアになりました。
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なぜ、カルヴァドスでは飲み込みが早かったのか?
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案内人が奇跡的にイケメンだったからです。こちらのりんごの王子様が、樽の熟成庫へと誘います。
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現在は3代目が営む「シャトー・デュ・ブルイユ」は、昔ながらの製法を守り、芳醇な味わいのカルヴァドスを造り続けています。自社がもつ42ヘクタールの畑で2万本ものりんごを栽培し、毎年300トンのりんごを加工。なんとその工程を、熟成庫内でのプロジェクションマッピングで見せてくれました!
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![1050_H5A3446](http://p.potaufeu.asahi.com/59ef-p/picture/13552720/5c9226d09e8c4ae57908b040634e530e.jpg)
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りんごの王子様からの解説に加え、プロジェクションマッピングで復習ときて、カルヴァドスのレシピを完全に頭にたたきこみました。
ところで、これまでプロジェクションマッピングは何度か見ましたが、正直、いちばん好きな作品でしたね。音楽や構成含めて完成度が高すぎ! 樽に映る映像が幻想的で感動しました。
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その後、熟成庫2階にあるテイスティングルームへ。理解度が高まったことで、もとから高品質なカルヴァドスがさらにおいしく感じられました。40度あるお酒だというのに、体にすっと自然に入る、大地の恵みといった味わい。高級な果実を感じると同時に、土の香りともいえる力強さもあり、思い出すと飲みたくなってきます。
耳寄りなのが、このシャトーは向かいに惣菜も売る肉屋があり、シャトーでピクニックセットを予約できること。それを敷地内でいただけます。木々の緑やお花に囲まれた芝生の上で、シードルやカルヴァドスを飲みながらお弁当を食べられるなんて、なんという至福!(未遂)
ちなみに「シャトー・デュ・ブルイユ」のカルヴァドスは日本へも輸出されており、ジャパンインポートシステムさんのHPから購入可能です。
https://www.jisys.co.jp/index.html
「シャトー・デュ・ブルイユ」
https://www.chateau-breuil.com/en/home-page/
超絶チャーミングな村、ブーヴロン・アン・オージュでのひととき
カルヴァドスのシャトーをあとに向かったのは、“フランスで最も美しい村”に登録されているという、ブーヴロン・アン・オージュという村。到着すると、ノルマンディーお得意の木組みの家が並ぶメルヘンな世界が広がっていました。
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街の中心は一周10分で歩けてしまうほどコンパクト。ランチをとりながら2〜3時間ほどの滞在でも大方は見ることができるでしょう。かわいい雑貨屋さんが点在していますが、一番人気はこちらの「Epicerie de Beuveron en Auge」。
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ステキな器も揃いシードルもお安くて、スーツケースいっぱいにお買い物したいくらい!
ランチは雑貨屋さんの隣のビストロ「Café Forges」でいただきました。
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実はこのビストロは、意外にも村にひとつあるミシュラン一つ星レストランと同じオーナーが営む店。炭焼きのお肉やノルマンディーの郷土料理をいただけます。
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上は牛肉の炭火焼きで、下はノルマンディーの名物料理である内蔵のソーセージ。いずれも20ユーロのランチセットでいただけてお手頃です。
内蔵のソーセージには粗くひいた腸、胃袋、軟骨などが入り、仕上げに生クリームのソースがかけられています。下処理がきちんとされているのか、臭みもなく、滋味深く、旨味がたっぷり! これは日本では食べられない味ですね。似たものはあるけれど、日本で食べるともっと小ぎれいで、それがもの足りなかったりする。
http://www.normandie-tourisme.fr/res/cafe-forges/beuvron-en-auge/fiche-RESNOR014FS000B8-1.html
ブーヴロン・アン・オージュは30分もいればたいていの写真が撮れる小さな村ですが、そんな場所こそ、のんびり泊まってみるのが楽しいだろうなと思います。写真や観光ホッピングから解放される豊かな時間ですね。
そこで、時間に余裕のあるみなさまにおすすめする宿が、中心地から歩いて15分ほどの「Le Pave d’ Hotes」というたった5室の小さなホテル。一泊100ユーロ前後とお財布にも優しい。
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![1050_H5A3660](http://p.potaufeu.asahi.com/d9d8-p/picture/13552767/e32cfec3ec57c50a905591550348e632.jpg)
ノルマンディー地方の豪農にホームステイした気分になれそうなかわいいお宿。気取りがなくて趣味がいいなあと思っていたら、先ほどのビストロのオーナー夫妻の経営と聞いて納得! 18世紀の農家の家を改築してホテルとしたそうです。朝ごはんも絶対美味しいんだろうなあ……。
インテリアもお花も建物も最高ですが、いちばんチャーミングなのはマダムのソフィさんなのでした。
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マルセル・プルーストゆかりの地、カブールへ
さて、今回は予習とばかりに次の街へさくさく移動します。向かったのは、ブーヴロン・アン・オージュからクルマで約1時間の海辺の街、カブール。大草原のなかを馬が散歩し牛が昼寝する牧歌的な景色を隣に、クルマは海に向かいます。
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到着したカブールは、同じ海辺でもドーヴィルやトゥルーヴィル(第3回に掲載)よりひっそりとしていて、ちょっと渋い。パリからの直通の鉄道がないからでしょうか。市民のための避暑地といった印象です。
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![1050_H5A3873](http://p.potaufeu.asahi.com/4356-p/picture/13552785/f78e7bbfad840574d756d80ac01ad170.jpg)
カブールを有名にしたのが、作家のマルセル・プルースト(1871年〜1922年)。ぜんそく持ちだったプルーストは、子どものころから療養のためにノルマンディーの海辺を訪れており、1907年からの7年間は毎年カブールで夏を過ごしました。そんなプルーストの夏の家となっていたのが、街唯一の5つ星ホテル「グラン・ホテル」。
https://www.grand-hotel-cabourg.com
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『失われた時を求めて』に登場する架空の街、バルベックのモデルがカブールであり、そのことはいまでも街の誇り。「グラン・ホテル」の庭にはプルーストの銅像が立ち、浜辺の遊歩道は“マルセル・プルースト”通りと名づけられています。
ところでカブールは、ロマンチック強化に努めている街です。昨年はカブール映画祭30周年を記念し、遊歩道にて“愛の子午線 Le Meridien de L’mour”というプロジェクトを実施。世界各国の愛を表す言葉を五大陸ごとに分け5本の柱に書き、歩道には104個の愛のメダルを埋め込みました。さらには、ベンチにカップルの名前を入れられるサービスも……そんな熱々のベンチに座れば、なにかご利益があるかもしれません!
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恋人たちの聖地、それがカブール。恋人岬のように愛を形にする姿勢は万国共通なのですね。ここに行けば、ラブラブ上等! やんややんや!なのです。
さて、そんなこんなでこの日のホテルに向かいます。しかし、ホテルまでの足と用意されたのは、なぜかボート……!?
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次回は、このボートでたどり着く、ロマンチックが最高潮に達するホテルのご紹介です!
プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。
Photograph:Ryoma Yagi
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