週末の過ごし方
のり、醤油、バターのケミストリー。
驚きの風味が広がる、元祖のりトースト
[喫茶店ランチを愛す]
2018.09.11
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時代の荒波にもまれ、ニッポンのビジネスマンは今日も行く。だからこそ、ひと息つける安らぎの場所は確保しておきたい。そこで、喫茶店メシである。心と体をほぐし、英気まで養える、そんな都会のオアシスを紹介していく。
毎日食べても食べ飽きない。それでいて口にするたび、「おっ」と驚く。世の中にはそんな食べ物が存在するのだ。珈琲専門店エースの「元祖 のりトースト」。摩訶(まか)不思議だが、至極まっとう。そんな表現が合う。
「パン、のり、醤油、バター。材料はこれだけ。ヒントは母親が作ってくれたのり弁です」。そう語るのは、店主の清水英勝さん。かみしめるとなぜかウニのような、明太子のような、不思議な風味が広がるこのレシピの考案者である。
「だれでもすぐできますからね、作り方を教えて差し上げましょう」
この人はまったく惜しみがない。ひょいひょいと慣れた手つきでつくるさまを見せてくれた。
<のりトーストのつくり方>
1、8枚切り食パン4 枚を横一列に並べ、パンに醤油でS字を描く

2、パン2枚にのりを載せ、サンドする

3、トースターでこんがりと焼く

4、それぞれの底面にバターを塗り、バターを塗った面同士を貼り合わせる

5、食パンの耳を切り落とす

6、三角にカットしたらできあがり

「以上です。簡単でしょう? でもね、それでも皆さん通ってくださる。『家で作るのとはどこか違う』と首をかしげてね」。そう笑う笑顔が本当に美しい。
「開店して47年、今がいちばん忙しいですよ。宣伝はお客さまが口コミやらSNSとやらでしてくださる。それで日本中、いや世界中から神田を目指して人がやって来るんですから、すごい時代ですよね。オリジナリティーがあれば必ず勝つ。ほら、うちはそれをさらに安く提供しているわけだから。ね!」
元祖 のりトースト、170円。思わずうなる、最強で最安のメニューである。

Photograph : Ryo Yonekura
プロフィル
本庄真穂(ほんじょう・まほ)
神奈川県生まれ。編集プロダクションに勤務のち独立、フリーランスエディター・ライターとなる。女性誌、男性誌、機内誌ほかにて、ファッション、フード、アート、人物インタビュー、お悩み相談ほか、ジャンル問わず記事を執筆。記憶に残る喫茶店は、山口県・萩にあるとん平焼きを出す店名のない喫茶店。福岡県・六本松の『珈琲美美』、神奈川県・北鎌倉の『喫茶 吉野』に通う。