腕時計
オメガが発表したのは、1913年製の新品!?
[男の服飾モノ語り]
2018.09.14
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7月に発売された、「スピードマスター東京2020リミテッドエディションズ」がヒットしている。オリンピック公式タイムキーパー。そして、初めて月に行った腕時計。そういったキャッチフレーズと相まって、オメガが最も認知度の高いブランドのひとつであるのは間違いない。
私自身は、オメガが腕時計そのものの進化に熱心に取り組んでいることに注目している。例えば、ムーブメントが摩耗するのを改善した「コーアクシャル脱進機」は、機械式時計の大きな課題と考えられていたオーバーホールの周期を伸ばすことに成功。続いて、磁気帯びしづらいシリコンなどの素材をパーツに使うことで、1万5000ガウスの耐磁性をもたせた「マスターコーアクシャル」を発表。これは、機械式腕時計の故障を減らしていく姿勢の表明に見える。
そしてこのたび、腕時計の新たな価値観を提示するニュースがオメガから届いた。

ストップウオッチ機能をもつクロノグラフは、メカニカルな動きで人気が高い。そのクロノグラフの創成期である1913年製のムーブメントを、オメガミュージアム所蔵のアンティーク時計から取り出し、新しい腕時計に搭載して発売したのだ。世界限定18本。ホワイトエナメルのダイヤルにブルー針、白抜きのアラビア数字というデザインは当時を思わせるクラシックな雰囲気だが、間違いなく新品である。そして開閉式の裏ぶたを開けると、サファイアクリスタルガラス越しに、現代の職人の手で修復された美しいムーブメントが見られる。

ファッション業界では、新世代デザイナーによるアーカイブの再評価に注目が集まる。時計業界でも、デザインの復刻は頻繁に行われている。ただ、105年も前の希少ムーブメントを搭載した腕時計の発売は聞いたことがない。職人がつくりだした本物の価値が、世紀を超える。これは、腕時計ならではの醍醐味だと思うのだ。
プロフィル
山本晃弘(やまもと てるひろ)
AERA STYLE MAGAZINE編集長
「MEN’S CLUB」「GQ JAPAN」などを経て、2008年に朝日新聞出版の設立に参加。同年、編集長として「アエラスタイルマガジン」をスタートさせる。新聞やWEBなどでファッションとライフスタイルに関するコラムを執筆する傍ら、幅広いブランドのカタログや動画コンテンツの制作を行う。トークイベントで、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南するアドバイザーとしても活動中。初の執筆書籍「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。」を、3月16日に刊行した。