紳士の雑学

経営のコツは「威張らないこと」
さくらインターネット株式会社 田中邦裕代表インタビュー[前編]

2018.09.25

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始まりは田中邦裕氏による学内ベンチャー。ITインフラの大手としてさくらインターネットは日本のインターネット市場を20年以上支えてきた。経営のコツは「威張らないこと」と笑う田中に経営や働き方改革、創業時からいまに至るまでの話を語ってもらった。

「人生は連続性のあるもの。自分が何をやりたいのか、その選択がつながっていくと思うんですよ」

こう語る田中は約22年前にさくらインターネットを創業した。インターネットの黎明期に格安レンタルサーバーを打ち出し、以降、データセンターやクラウドなどネットインフラを提供してきた。18年4月時点でユーザー数は43万超。WEBアプリなどを提供するIT企業は多いがインフラに絞った会社は実は少数だ。

「旧世代のインフラでは日本が世界のトップにいました。けれど、IT革命以降はその凋落(ちょうらく)が激しい。世界で戦える企業になるのが目標です」

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上の写真に目を留めた読者も多いだろう。人の好さそうな童顔を覆い隠すのはVRヘッドセットの最新型。単体でVRコンテンツを楽しめるデバイスを社員にすすめられるがままに試し「いいなぁ、これ」、夢中になって繰り返した。おそらく撮影中だということも忘れている。田中邦裕、今年で40歳。知的で謙虚、けれど熱い弁舌と、取材後に見せたひとコマに創業期の彼を見た思いがした。

インターネットに衝撃を受け18歳で創業

「はじめはロボット設計に興味があったんです」、田中が同社の前身となるサーバーを立ち上げたのは94年、京都府の高等専門学校時代のことだ。ロボットを作るため入学した学校で出合ったのはインターネットだった。自分のサーバーに世界の誰かがアクセスする、その双方向性に衝撃を受けた。「ちょうどウェブブラウザやWWWが登場したころですね。学内でホームページを作ったところ、そのサーバーをたくさんの人が使ってくれるようになったんです。ただ、学校だけに限界もある。『有料でもいいから続けてほしい』という声を受け、スタートしたのが事業の始まりです」

レンタルサーバーといえば法人用が主で月額2、3万する時代。個人が手軽に借りられるよう、月1000円のサービスを打ち出した。広告は出さず、ほぼ口コミだけ。けれど、98年に有限会社化した際は1000ユーザーを超えていた。99年には大阪と東京にデータセンターを設立。田中の社長退任のきっかけとなる上場の話が持ち上がるのもこのころのこと。

「実は最初に上場の話をしたのは私だったんです(笑)。知人から『ベンチャーキャピタルから資金調達したら上場できる』と聞き、そうか、上場って普通にできるものなのかって(笑)。マザーズ市場が開設し、ネットバブルが始まりかけのころでもありました」

出資も決まり上場は堅いと思われたものの、市況の変化でうまくいかない。紆余曲折(うよきょくせつ)を経て東証マザーズに上場できたのは05年のこと。既に田中は社長を退任していた。

「サーバーが好きで始めた会社だったのにいつしか上場が目的のようになり、当時は違和感を覚えたんですね。社員は10名ほどで全員が20代。むしろみんな若かったんです。いま思うとコミュニケーションがうまく取れていなかった部分もあったなと」

会社を辞めて新たな事業を始めることも考えたが慰留された。再びの社長就任まで副社長として、エンジニアとして経営に参画した。

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過去最高益でも危機感を覚えた

07年11月、田中は再びさくらインターネットの代表取締役社長となる。このころ、会社は最大の危機を迎えていた。上場後、オンラインゲームや動画など新規事業をスタートしたものの、それらの売上が低迷し債務超過に陥ったのだ。経営の立て直しに向け、同社が発表したのは新事業からの撤退と田中の社長就任だった。

「上場もして社員はこのとき120名まで増えて。責任はすごく感じていましたね」

社員への説明の一方、田中は多くの時間を銀行回りや増資の交渉に費やした。会社の借金を減らすため自腹で子会社の株を買い取ったりもした。やがて、09年3月期に単体の黒字化を達成、11年には翻って過去最高益を更新する。だが「最高益は出たもののという状況でしたね」と言う。

「サーバーというのはストックビジネスですから、インフラ一本に絞り込めば利益が出るのは当然なんです。けれど、コストを抑え、人をカットし、アウトソーシングで利益を出すような経営ではいずれ限界が来る。いまの日本経済みたいなもので、これではイノベーションが生まれないと感じました。事実、世の流れがクラウドやモバイルにシフトするなか、売上は鈍化していたんです」

切り捨てることで利益を出すのではなく、人材に重きを置き、新たなチャレンジで売上を伸ばす。そう考えて実行した。IoTのプラットフォームや『ブロックチェーン』(取引履歴データなどの画期的な監視システム)など新しい取り組みも始めた。15年には東証一部上場に市場変更をしていたが、その翌年、株価は15・6倍をマーク、大いに市場をにぎわせた。

「大胆にチャレンジする会社が評価されるんだと改めて感じました。逆に最高益が出たころは史上最低くらいの株価でしたから」

<<後編に続く(10/2公開予定)

プロフィル
田中邦裕(たなか・くにひろ)
1978年、大阪生まれ。京都府の国立舞鶴工業高等専門学校在学中の96年12月、18歳でさくらインターネットを創業。当時国内ではまだ珍しかった共有ホスティングサービス(さくらウェブ)をスタートする。98年有限会社インフォレスト設立、さくらウェブの事業を継承し代表取締役へ就任。次いで、99年にはさくらインターネット株式会社を設立した。00年同社社長を退任し、副社長へ。最高執行責任者を歴任し、07年11年、2度目となる代表取締役社長に就任。JDCC副理事長、CSAJ副会長、JAIPA常任理事。趣味はプログラミングと旅行で、旅先ではダイビングやシュノーケリングなども。昨年は1カ月の長期休暇を取り、父島とプライベートでは初の海外であるタヒチに行った。いわく、お酒好きでもあり「連日飲んでますよ」と笑う。社長業のほかに個人で画像生成サイトなども運営し、現在は東京と地元の大阪を行き来する日々。

Photograph: Kentaro Kase
Text: Mariko Terashima

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