接待と手土産
長く愛されるのには理由がある
[秘書課の御推奨手みやげ]
2018.10.02
手みやげがいかに〝雄弁〟であるかは、この連載を通して何度も伝えてきたが、だからこそ、そのメッセージの力を有効に使うのが手みやげマスターのアプローチだ。
アデコ(株)の秘書、野村はるかさんは言う。
「自分の趣味やトレンドにとらわれずに、広く長く愛されているものを選ぶようにしています」
オーセンティックをつまらないとする向きもあるが、長年にわたって支持されつづけるモノには確かな理由がある。だからこそ、そうした老舗の手みやげをもらうと、相手からの「信頼」や「尊敬」を受けてうれしかったりもする。
「お渡しするお相手によって変化をつけてはいますが、若い方は逆に〝新しい〟と感じてくださる場合もありますし、年を重ねた方は〝懐かしい〟と感じてくださるようです。いずれにしても失礼のない手みやげになります」
今回ご紹介いただいた3品も、いずれ劣らぬ多くの人々に愛されつづける名品ぞろい。ザ・キャピトルホテル東急の手みやげの代名詞ともいえる『バナナブレッド』は「社長が週末にゴルフをご一緒した方に差し上げることが多いです。ご家族と過ごせる大切な休日をいただいたという感謝の思いを込めて、お客さまの先にあるご家族の方々をイメージした手みやげです」とのこと。パッケージがユニークなパレスホテル東京の『千代ちょこ』は、外国のお客さまへ。
「お客さまに手みやげとしていただいたとき、そのセンスに感服。以来、外国のお客さまにお渡ししています。パレスホテル東京のショコラティエの方々が作るチョコレートのおいしさはもちろん、歌舞伎柄の千代紙のデザインが日本の文化を表現してすてきです」
8種類のおかきを二十四の節気を表したパッケージにひとつずつ包んだ銀座あけぼのの『二十四節花』も、見た目が美しく楽しい。
「弊社は日々の〝働く〟をサポートする会社ですので、一年中の日々の感謝を込めてお世話になっているお客さまにお渡しします。おいしいのはもちろん、包みの裏に書かれた俳句は大人の季節の楽しみを教えてくれます」
いずれも手みやげの奥にあるメッセージが真っすぐ伝わる逸品だ。渡す際にそうしたメッセージを付け加えられる点もあり難い。
「手みやげは文字どおり、手でお渡しするもの。渡す側の温もりが伝わるといいな、と思っています」
思いのこもった手みやげは、印象深く心に届くに違いない。
1. 創業以来55年愛されつづけるバナナブレッド。完熟バナナを使用したしっとりした口どけ。バター未使用。バナナブレッド Sサイズ ¥1,100(税込)/ペストリーブティック「ORIGAMI」 03-3503-0208
2. 薄さ2㎜。江戸千代紙や着物、浴衣の伝統的な模様をモチーフにした絵柄は、外国からのゲストへのサプライズにもぴったり。千代ちょこ 6枚¥2,600/パレスホテル東京 スイーツ&デリ 03-3211-5315
3. 8つの味わいのおかきを、二十四の花と節気を描いた小袋で包んだ和を感じさせる手みやげ。二十四節花 36個箱入 ¥1,200/銀座あけぼの 銀座本店 03-3571-3640
Photograph:Mitsuru Kugue[still]、Akina Okada[model]
Text:Sachiko Ikeno